人類みなラブリー♡
〜side:楓〜
【ラムミン・ヴァロ】
9時開店 20時閉店(15時〜17時休憩)
休店日:月曜、祝日
仕込みや開店前の準備があるので
ヒカリを学校に送り出した後すぐに
動き出さないといけない
平日はバタバタとするのだが
今日は土曜日なので、幾分か余裕があった
一通り準備が落ち着き
忙しくなるかもしれないお昼時に向けて
ヒカリと自分用のサンドイッチを作ることにした
スマホで音楽アプリを操作して
大好きなプレイリストを無線でスピーカーに繋いだ
店内には明るい曲が流れてテンションが上がる
長い髪を纏め、シュシュで束ねた
耳を落としたパンにバターを塗り
大量に作ったポテトサラダ、卵サラダを別々のパンに乗せる
小さくちぎったレタスを散らし
その上にハムと、ハチミツを少し垂らす
そのあと蓋をするようにパンを乗せ
一口サイズにカットする
可愛いアニマル型のピックを刺したら完成
出来上がった《サンドイッチ・ピンチョス》を見ながら悦に浸る
「よしっ、可愛くできた」
SNSに載せるための写真を撮り終えると
ちょっとだけテンションが高い自分に笑えてくる
時計を見ると8時58分
店内に置いていた〜OPEN〜の看板を店外に運び
眩しい太陽に向かって背伸びをした
「さ〜て、今日も笑顔で頑張りましょー♪」
背伸びを解いて
店内に戻ろうとした時
「おはようございます」
声の先には、笑いを堪えながら白川さんが立っていた
「お、おはようございますっ」
「もう、開店しますか?」
「はいっ。ど、どぞーどぞー」
焦って声が裏返ってしまった
変なところを見られた気恥ずかしさを誤魔化すように
慌てて店内に案内した
―――――
開店直後はモーニングを求めてくる常連さんが多い
だが、今朝は月一で行われている町内清掃会のせいか
今のところお客さんは白川さんだけだった
白川さんはメニュー表を見ながら注文の品を選んでいる
時々スピーカーの方を気にしているようだった
「すいません。注文良いですか」
白川さんが私を呼んだ
「はい、どうぞ」
「モーニングのBセットをお願いします。飲み物はホットコーヒーで」
「かしこまりました。少々お待ちください」
そう言ってキッチンに戻ろうすると
再び声をかけられる
「佐野さん、違ってたらごめんなさい」
「???」
なんのことか分からず首をかしげる
白川さんがスピーカーを指差す
「BGM、切り替え忘れてません?」
「!!!!」
しまったぁーー!!
スピーカーからは
大好きな女の子アイドルグループ《人類みなラブリー♡》
略して〝みなラブ〟の曲が流れ続けていた
白川さんの来店対応で気が動転していたのか
通常BGMに切り替え忘れてしまっていたみたいだ
「す、すいません。すぐ変えますからっ」
「あ、大丈夫ですよ。気になっただけで、俺このグループ好きなんで」
「えっ?」
予想外の言葉に驚いてしまう
白川さんが〝みなラブ〟を好きだなんて
「この曲。来週発売の新曲ですね」
「はいっ! やっと、まこちゃんがセンターになれたんですっ!」
「最近は選抜入りも定着して、頑張ってましたもんね」
「そうなんですっ!同期の中でもちょっと埋もれがちだったんですけど」
「最近はバラエティーも頑張ってて、ちょっと殻破った感じじゃないですか?」
「ええ♪この前の、『みな萌え』最新回見ました?」
す
この後、町内会清掃会を終えた常連さんが来店するまでの30分
時間を忘れて〝みなラブ〟トークを白川さんと楽しんでしまった
モーニングBセットをお届けするまでに
注文を受けてから35分ほど経過しちゃってました
ごめんなさい白川さん
でも、楽しかったです♪
大好きな〝みなラブ〟を好きだということが嬉しかった
気さくに話しかけてくれたことが嬉しかった
時間を忘れちゃうくらい楽しかった
白川さんは奏多に似ている
でも、白川さんは奏多じゃない
その事実が、なんだかスッと胸を軽くした




