夜に咲く光
~side:遥人~
ヒカリちゃんと梨香は
目の前で美味しそうにプリンを食べている
急に俺が涙を流してしまった後
そのことにはあえて触れずに
佐野さんが出してくれたプリンを
2人は美味しそうに口に運んでいく
「とっても美味しいね、このプリン」
「うん!ヒカリだいすき、このプリン」
「ヒカリちゃんのママは、お料理が上手だねー」
「そうなの!ママがつくるごはん、ぜーんぶおいしいよ」
いつの間にかヒカリちゃんと梨香は仲良くなっていた
「白川さん」
声がした方に目を向けると佐野さんが立っていた
佐野さんはティーカップを俺の前に差し出した
「野いちごとブルーベリーのフレーバーティーです」
「え、注文してないですよ、俺」
「ヒカリがこの前から迷惑かけちゃってるので、お詫びです」
「そんな、俺の方こそ。今日だって、、、」
そう言いかけた言葉を遮り
「えっと、梨香さん?って呼んで大丈夫ですか?」
「はい♪」
佐野さんは梨香に向かい、梨香が笑顔で返す
「梨香さんも、これよかったら」
そう言って、ティーカップをテーブルに置いた
「白川さんと同じものになります」
「良いんですか、私まで?」
「はい。ヒカリが、うちの子がご迷惑おかけしてすいません」
「いえ、こちらこそ。うちの大きな子がヒカリちゃんに迷惑かけてすいません」
2人は顔を見合わせ、プッと笑いあった
『ごふっっ』
飲み始めていたフレーバーティーでむせてしまった
ヒカリちゃんが、そんな俺を見て笑っていた
—————
園田夫妻がレジで会計を済ませ、お店を出ていく
「梨香、ちょっとごめん。知ってる人なんだ、少しだけ話してくる」
そう言って席を立った
俺はみのりさんと話した時に感じた違和感を確かめたかった
店の外へ出ると
園田夫妻はコート羽織り直し、これから歩き出そうとしているところだった
「みのりさん、健次郎さん。お久しぶりです」
声を掛けると、2人が振り返る
「あら、先程の方。もう大丈夫なの〜?」
「遥人君、、、」
みのりさんは心配そうに声をかけてくれた
健次郎さんは、複雑そうな表情をしている
「ご無沙汰してます。おふたりとも、お店には今もよく来られてるんですね」
「お店が開いている日は毎日来てるのよー」
「、、、、、」
明るく笑うみのりさんとは対象的に
健次郎さんは黙ったままだった
「今日は変なとこ見せてすいません」
「泣きたい時は誰だってあるわよー。ねぇ、健次郎さん?」
「、、、そうだな、、、」
あぁ、やっぱりそうだ
そうか、感じた違和感はこれだったのか
これ以上の詮索は無粋だ
「挨拶だけしたかったんです。じゃあ失礼します。おかえり気をつけてくださいね」
「ありがとーねぇ」
「、、、おやすみ、遥人君」
簡単に挨拶を済ませ
手をつなぎながら帰っていく2人の背中を見送ってから
俺は店内に戻った
—————
店内に戻り
壁にかかった時計を見ると、針は8時を既に回っていた
梨香から閉店は8時だと聞いていたので
しまった、と思い
急いでテーブルに戻る
「梨香、ごめん。もう店出なきゃいけない時間だね」
「おかえり遥人。そうだね、そろそろ帰ろうか」
「ゆっくり出来なくてごめんな」
「ううん。また、ゆっくり来ようよ。とっても美味しかったし」
「そうだな。前と少し変わったけど、やっぱり良いところだよ。ここは」
冷たくなってしまったフレーバーティーを飲み干した
梨香は既に準備を済ませていたようで
2人一緒にレジへ向かう
佐野さんがレジを入力し
ヒカリちゃんは入口の椅子に座り足をぶらぶらしながら俺を見ている
俺は佐野さんに涙を見られた気恥ずかしさと
慰めてくれたヒカリちゃんに
なんだか複雑な感情になってしまった
その時、ふと思い出した
見せに来る前に立ち寄った雑貨屋で
並んでいた新商品
ペンギンのキーホルダーを購入したことを
「ヒカリちゃん。ペンギンさん、また貰ってくれる?」
ポケットから取り出し
中腰になってヒカリちゃん顔の前で揺らした
3頭身のバズーカを持ったペンギン
設定がよくわからないが
愛嬌があって可愛い
「うわーーっ、可愛い♪」
「この前のペンギンさん、1人じゃ可哀想でしょ?」
「そう、、かなぁ?もらっていいの?」
以前の時と同じように俺と佐野さんの顔を交互にちらちら見ながら
伺いを立てている
「遥人、、、それ買ってて店来るの遅かったんでしょ?」
梨香がぐいっと、脇腹を肘でこづいてきた
申し訳ない、そのとおりです
「良いんですか、また頂いちゃって?大事なものなんじゃないですか?」
佐野さんが心配そうに確認してくれるが
俺が持っていても仕方ないものだ
「可愛いなって思って買ったんですけど」
小さな嘘に、少しだけ胸が痛む
「ヒカリちゃんにもらって欲しくなっちゃって。良いですか?あげても」
「それは、もちろん。ありがとうございます。ヒカリ、ありがとうは?」
「パパありがとう!」
そう言いながらヒカリちゃんは
またお腹に顔をうずめるように抱きついてきた
今度は俺がヒカリちゃんの頭を撫でる番だった
ヒカリちゃんが俺にしてくれたように
ゆっくりと、ありがとうの気持ちを込めて頭を撫でた
佐野さんと梨香は、優しく笑いながら俺達を見ていた




