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とらいあんぐる 〜俺と君とあの子の話〜  作者: おーろら


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13/35

そこにある幸せ

〜side:楓〜


時計の針は午後7時30分を回り

店内には食後の紅茶を嗜む60代の御夫婦

カウンターでは私が作る夕ご飯をヒカリが待っている



ヒカリからの今日のリクエストは【ナポリタン】


甘めのケチャップソースにピーマン抜き

ウインナーと

ランチ旗を刺したチキンライスをワンプレートにまとめてあげると


「すごーい♪すごーい♪」

と手を叩いて喜んでくれた

ヒカリの前に出来上がったプレートを置くと

キラキラと瞳を輝かせながら食べ始めた


祖直後、御婦人から声をかけられる


「楓ちゃん。ヒカリちゃんばっかりズルいわ。」

御主人と一緒に毎日のように店に来てくれる女性

園田みのりさんは頬をぷくーっと膨らませ

可愛らしく私を責める


「お客様に食べて頂ける出来じゃないので、メニューには載せてないんですよ」

そう返すと

「そんなこと言って。ヒカリちゃん、あーんなに美味しそうに食べるんだもの。私も食べたーい。」

サンドイッチとパンケーキ

締めのチョコパフェまで綺麗に平らげても

みのりさんの食欲は満たされていないらしい


「はしたないから止めなさい。楓ちゃん、気にしないでおくれ」

御主人の健次郎さんが呆れながら嗜める

「だって、あなたー。ごはんに旗まで立ってるのよ、可愛いじゃない。」

「何を言ってるんだ、自分の年齢を考えてから言いなさい」

「知らなーい、だって羨ましいだもーん」

みのりさんと健次郎さんの会話に

私もヒカリもくすくすと笑ってしまう


「おばぁちゃん、すこしヒカリのたべていいよ」

ヒカリが椅子から立ち上がり

園田夫婦が座っているテーブルに自分の皿を持って行く


「えぇー、良いのヒカリちゃん?ありがとう♪」

満面の笑みで喜ぶみのりさんを見ながら

「はぁ、お前ってやつは、、、ごめんねヒカリちゃん、楓ちゃん」

健次郎さんは溜め息をつきながら

私に向かって両手を合わせて軽く頭を下げた


「おばあちゃん、おじいちゃん一いっしょにたべよー」

ヒカリは園田夫婦のテーブルに席を移し

賑やかに夕ご飯を食べ始めた


私は3人のやりとりを

洗い物や閉店作業を進めながら見守っている



特別ではない何気ない日常

あたたかくて優しい時間

私はこんな時間を大切にしていきたいなと

改めてそう思う


失うものもあるけれど

生まれる幸せもある

すり抜けた幸せに想いを馳せるより

今ある大切なものを守れるよう過ごしていこう



そう強く思うのだった



————

8時少し前に

園田夫婦を店の外まで見送り

~OPEN~と書かれた看板を取り込もうとしていると


「もう閉店しちゃいますか?」

と女性から声をかけられた

長い髪のよく似合う20代半ばくらいの女性

モデルさんかな?

と思うような細身のスタイル

綺麗な人だなという第一印象だった


「すいません、営業時間は8時までなんです」

「そうですか、、、」

残念そうに眼を伏せる女性に罪悪感を覚えるが

ヒカリと過ごす時間も大切にしたい

営業時間の延長を提案してあげることも出来ずに頭を下げると


「今度はもっと早い時間に来ますね。休みの日ってあります?」

「月曜日と祝日以外は営業してます。朝は9時から開店です」

「そうなんですね。前から通るたびに気になってて、このお店」

「ありがとございます。お越しして頂く日をお待ちして」

私の言葉が終わる前に

女性のお腹からグーーッッと大きな音がした


よっぽどお腹が空いているのだろう

女性は夜の暗さの中でも分かるくらい

顔を赤く染めながら

「ま、また来ますっっ。さ、さようなら!」

とすごい勢いで振り向き

小走りで帰って行った


突然のことに呆気にとられるが

なんだか可笑しくて笑ってしまう

「今度来てくれたら、とっても美味しいの作ってあげようっと♪」

女性が走り去った方向に向かって手を振り

看板を抱えて店内に戻る



それにしても、とっても綺麗な人だった

仕草もそうだが

とても優しそうで

同性の私が見ても印象に残るくらい綺麗な人だった

年は私よりも少し上くらいだと思う


引っ越してきてからというもの

小学校のママ友こそ居るものの

気軽に話せる同世代の女性がまだいない


「また来てくれたら嬉しいなぁ」

誰もいない店内に独り言は消える

「明日も良い日になりますように、、」

小さく呟き

私はカフェの灯りを落とした


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