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逃亡聖女は引き籠もりたい  作者: 橘可憐
第一章 1

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19/251

魔物化


真っ暗な夜の森はとても不気味だった。


偶に聞こえて来る何かの鳴き声も森中に不気味に響き

暗く良く見えない足元に気を取られていると不意に響いて来る

葉擦れの音や鳥の飛び立つ音には肝が冷やされた。


せめて月明かりでもあったなら少しは違っただろうが

完全な暗闇の中を歩いている様でなかなか歩みが進まない。


ともすると方角さえも見失いそうになった。


それでも一刻も早くこの森を抜け出したいと言う思いが先に立ち

私の背中を押してくれていた。


足元に気を付けながら

木々に抱き着く様にして移動を繰り返したせいで

折角着替えたばかりの服がすでに汚れでドロドロだったが

気にしている場合じゃないと見ないふりをした。


そうしてどの位進んだのか分からないが

漸く空が明るんで来た頃俄かに辺りが騒めきだし

そしてまたまた猿の集団に襲われた。


私はどんな恨みを買ってこんなに襲われるのか

まったくもって分からなかった。


もうすでに獣を惨殺している罪悪感など無くなっていた。


襲われる恐怖の方が断然に強かった事もあるが

正直血を見るのに慣れてしまったのだと思う

そんなものに慣れたくは無かったが

それもこの世界で生きるためには必要なのかもしれないと

そんな風に自分を納得させていた。


そして猿を討伐していると残った最後の1匹が

まるで付いて来いとも言わんばかりに逃げ出した。


森の中も大分明るくなり始めていたのもあって

私は迷わずにその猿の後を追って行った。


猿は木の枝を器用に飛び跳ねながら移動するので

時々逸れそうになったがなぜかいつも追い付いて

まるで道案内でもされたかの様に辿り着いたそこに居たのは

少し大きめな魔物となった猿だった。


きっとこのボス猿は自分の群れの猿たちを守り

一人で瘴気を浴びいち早く魔物と化してしまったのだろう。

その様子からそう思えた。


そしてかろうじて魔物と化していない猿たちが

ボス猿をどうにかして貰おうとでも思い私を呼びに来たのか

それとも魔物と化したボス猿が浄化されるのを怖がって

群れの猿達に私を襲わせていたのか真実は分からないが

目の前に魔物が居るのだ私は迷わずにボス猿を『浄化』した。


きっとこれでもう猿に襲われる心配は無くなっただろうけれど

私はすでにこの森を早く抜けたい気分でいっぱいだった。


薬草摘みをしながらなんて呑気な気分を捨てて

さらに歩みを速めて森の中を進んでいた。


思い返してみるとあの猿達が結界に入れなかったのは

既に瘴気に侵され始めていたからだったのかも知れない。


そう思えば納得もいくと言うか

でもだとすると、

あの猿達は『浄化』でダメージを与える事ができた?


それとも『浄化』で魔物と化すのを止められた?


「キュアポーションでも可能でしたね」

突然のように等価交換様が私の疑問に答えてくれた。


「それって完全に魔物化してなかったらって事だよね?」


「そうです」


そうか、ならやっぱり獣も取り合えずは『浄化』が先だね

そうすれば魔物化を止める事が出来て

あの猿達も襲ってくるのを止めたかも知れないのかと

一人でそう納得していた。


でもと言うかだとしたら

魔物化する人間もいるって言ってたよね確か

それをキュアポーションで止められるなら

やっぱりポーション作りって大事じゃない?


私はまだ魔物化した人間には出会っていないけれど

そうなる前に止められるなら止めたいとそう思ってしまった。


私は聖女の仕事はしないと心に誓ったのに

この国のためになんて絶対に何もしないと思っていたのに

私にはまったく関係ない世界の話だと考えていたのに

何だか不思議な感情が私の中で揺れ動き始めていた。



読んでくださりありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 「せめて月明かりでもあったなら少しは違っただろうが完全な暗闇の中を歩いている様でなかなか歩みが進まない」 山道を夜、明かりなしでは歩けないと思うな。いくら足元を見ても何も見えないよ。
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