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拳マン  作者: まん、がか
シーズン2

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拳マン第2部 13話


タッタッタッタッ


 岩の魔物がエンジェを連れている場面。一定ではない足音。彼の焦りが、そのまま速度に出ている。

 腕に抱えている体は軽い。だが、命は重い。

 エンジェは寝息を立てているのに対し、岩の魔物は必死になって神田王国の入り口を探している。その対比はヒートショックを起こしてしまう程だ。

岩魔「入り口ってどこだよ!..あ、あそこだ!」

 焦燥の中、ようやく視界にデカイ門を捉える。

岩魔「侵入扱いにはしないでおくれよ..!」


タッタッタッタッタッ


岩魔「お〜い!誰かこの小娘を匿..え」

 声が途中で途切れてしまう。辺りを見渡し、人が居そうな所を探す。

 だが、周囲は地獄絵図だった。

岩魔「どうして..何があった..」

 周りは血の海で満たされていた。思わず、抱えている腕が緩んでしまう。

岩魔「おっとと...危ない..」

 緩む腕を再度固めた。小さき者にこの光景は悪い意味で刺激が強すぎる。

岩魔「この子が寝ててよかった..」

 必死に辺りを見渡すと、人影を見つけた。

岩魔「いた!おーい!」


タッタッタッ


 社達だった。

社「君は..」

エシ「エンジェ!あなた..魔物...」

 エシス達は長い間、爆弾の魔物と接して生きてきて、魔物に対する印象はそこまで悪いものではない。

 けれども、今の状況で魔物はいくらなんでも落ち着ける状況じゃない。

エンシャ「テメェ、エンジェに何を..」

 この中で、まともに動けそうなのはエンシャントだけ。勇気の1歩を踏み出す。

岩魔「はっ?..(どういう状況..?)」

社「落ち着いて2人とも。君がエンジェ君をここまで連れて来てくれたのだろう?」

 この状況をいち早く理解して対話をしようとしたのは社だった。

岩魔「あぁ、そうだが?」

社「今は何者かで論争する必要はない、まずは感謝だ。エンジェ君を助けてくれて

  ..ありがとう」


 辺りが地獄の中での規則正しい感謝の言葉。

岩魔「..ど、どういたしまして」

 意外と話せば分かり合える、なんて思った岩の魔物なのであった。

社「..ほら、2人も」

 視線だけで、2人に感謝の言葉を促す。

エシ「...ぁりがとう」

エンシャ「...チッ、あんがとよ..さっさとエンジェを返せ」

 片方はまだ警戒が解けてないのか、心做しかぎこちなく、もう片方は感謝された気がしない。2人の性格がよく出ていた。

岩魔「お、おう(生意気なガキだ。後で殴ろ)」

 エンジェをエンシャントに手渡す。手渡した瞬間、命の重りの脱却と拳マンとの約束を果たせた事が、実感として現れる。

フィー「..なんで魔物がこんなところに...」

 当然の疑問。エシス達は例外として、魔物とまともに対峙することは神田の大会以来だ。

 キュウミも倒れ込む生憧に強く抱き掛かり、怯えている。前の一連の流れから、彼女の恐怖度も増している。

岩魔「なんでも良いだろ。それよりも、早くこの場からは立ち去った方が良い。お前

   らの身のために言っているんだ」


 守りたいという言葉に偽りはない。余計な説明もしない。離れないといけない事だけを最優先に伝える。

エンシャ「なんでここから離れねぇと..」

岩魔「あぁもう..だから」

 ムキになって、話そうとした瞬間、


ドォォォン!


 彼らの真横で何かが建物の壁に激突する。


岩魔「ッッッ!?」

拳「ガハッ..」

社「拳君!?」

拳「す、すまん..抑えれなかった..やっぱ俺まだ力を..」

 血の刃が社達の方へ飛んでいく。飛んでくるスピードが早すぎて社達はまだ反応できていなかった。

拳「ッッッ!やっば!」


ドタッ! カンカンカン グサグサグサグサグサ! ドォンッ!


必死に地面を蹴り上げ、社達の元へ立ち塞がり、来る攻撃は全て弾けたが、俺へ刺さる刃は弾けなかった。これも弾いてたら、多分誰か食らってた。

拳「いってぇぇ..」

エシ「ッッッ!い、今助ける..!」

俺の悲痛な叫びに、考えるよりも先に体が動いたエシス。エシスは何十本も俺の体に刺さっている血の刃を抜こうとした。

拳「ッッッ!?触るな!」

反射的な拒絶なのだが、自分自身が疑うほどの怒号だった。

エシ「え...その..」

エシスは身を固くしてしまった。

拳「..ち、違う!怖がらせるつもりはないんだ..でもこんなの触ったら..」

あいつの血は俺以外には即効性が高すぎる。下手な真似は絶対させない。守る為の拒絶だ。

こんな矛盾、誰からも理解はされねぇだろな..


スタスタスタスタ


 遠くから、血に染った赤い体の粒が見えてくる。

ブラ「今のでも1人も仕留めれないとは..君だけだったら数発しか刺せなかった

   かもしれないな」


社「あ、あれは..」

ブラ「..もう、終わらせようか。しぶとすぎて飽きてきた」

拳「..あぁ?」

ブチッっと、血管が裂けたような..

拳「んなもん俺が言いてぇセリフだわカス」

エシ「暑ッ..え、暑ッ!?」

どうやら、俺の体が物理的に熱くなって刺さっていた血の刃が溶けているようだ。しかも、その熱気は周囲にも影響を及ぼす。エシスは暑苦しかったのか、俺に距離を取る。

俺自身も初めてのことだから、よく分かっていない。けれど、分かっていることは、自分の変化にすらも目をくれずに、目の前の相手に集中する事だ。

拳を打ち付け、覚悟の一撃を入れようと準備をする。

拳「..俺が、今日、お前を殺す。もう終わりにしよう」

ブラッドに向かって歩む。1歩、そしてまた1歩、社達に振り向くことはなく。

戻ってはいけないんだ、絶対に。

ブラ「万全じゃない状態の君には大分申し訳ないことするけど..もう時期君死ぬ

   し、いいよね」


手をピストルの形にし、俺に向ける。遠距離攻撃か?んなもん、ずっと見てきたわボケ。

拳「何が来ても俺は死なねぇよ」


ブラ「..『血迅(けつじん)』」


俺の視界には血の光景が写った。そう、写ったんだ。体も動こうとした、最速で。

それでやっと、防御体制に回ろうした時には、俺の左目は奴の血の色に染められた。

拳「え..」


バキッッッ!


 鈍い音がした。

 瞬きをした時の眺めは薄暗く、建物内で倒れていた。大破した机や椅子を見かけた。俺が突っ込んだのからなのか..?

拳「...ッッッッッ!?ァァァアァァァァ!?」

遅れてくる痛覚。神経が、やっと現実に追いつく。


ビュンッ!!!!!!!!!


血を噴射した音が3秒ほど遅れていた。

そう、この一連の流れは音が流れていなかった。全部、何が起こったか、3.1秒後にようやく理解した。

俺は左目を失明した。

岩魔「な、何が..え?」

 岩の魔物含め、全員何が起こったか、未だに思考が追い付いていなかった。周囲の目線では、拳マンが一瞬で消え去ったようにしか見えなかった。

 速い、という次元ではなく、存在そのものがその場にいなかったようなもの。

ブラ「通常の噴射する血の量を10分の1に抑えて、ここまでのパフォーマンスを実現

   出来るとは..いや、少量に抑えたからこそ、より鋭い一撃になったのか..

   これが限界点..かな」


 速度と貫通力がより増し、量も減り、貧血のリスクも減少する。正に良い事尽くし。デメリットの文字すらもない。

 次に岩の魔物に向き先を向ける。

ブラ「拳マンはもう死んだ。そして任務は遂行した..任務?」

 自分が言った事に自分で疑問を持つ。まるで、自分の意志と反する発言をしたような反応。

社「(..なんだ?)」

ブラ「..考えても仕方ないな」

 考えるよりも行動で結論を出そうとする。

ブラ「君らに用は無いが..私の存在そのものを知られ

ていると、私個人としての

   面倒がまとわりつく」


パンパンッ


 合図を出すかのように手を叩く。何かを呼ぶ仕草。

ブラ「お、来た来た」

 ブラッドが背後を向くと、ブラッドが今まで血を入れ、操られた者達..言わば亡者が、大量に押し寄せる。

エシ「嘘..」

エンシャ「ぁあ..うご、け..」

 命の危険信号は既に何度も出ていた。それを無視し続けたからか、足が竦む。

岩魔「(おいどんだけじゃ..)」

ブラ「直接、手を下す必要がないな。殺れ」

 一斉に襲い掛かる。逃げ場はなく、終わりだけが感じる。ただそれだけ。



?「行け」



 何者かの声が響き渡る。


ズガッ!ズガッ!


地面が割れ、ブラッドの亡者達の正面に、相対する量のナニかが這い出でる。社達を守る為の壁。

ブラ「..へぇ」

ゾン魔「奴は何者だ..?」

エンシャ「ッッッ!?」

エシ「あ..あなたは...」

 2人が忘れることは一生無いであろう、1度、命に指が触れかけた『ゾンビの魔物』。対峙は2度目だが、今回は明らかに守る側として立っている。

ゾン魔「..前に会ったことあったか..?」

 だが生憎、ゾンビの魔物はエンシャントやエシスは覚えていない。

岩魔「おいどんと同族..ゾンビの魔物か」

ゾン魔「そう言うお前は..岩の..魔物か」

魔物同士なら、対面し、面識すれば本能で何者かがある程度分かる。

岩魔「..いや、待てよ..」

 岩の魔物は思った、せめて社達は逃がせれる事が出来るかもしれないと。

岩魔「おいどんは..やるぞ。ゾンビの魔物」

ゾン魔「やる..とは?」

岩魔「松本社達が逃げる時間を稼ぐぞ」

ゾン魔「はっ?何故私g」

岩魔「黙れ!」

 拒否権というのを掻き消す勢い。

ゾン魔「(こいつめんど)..はぃ」

 不満気な了承の声。納得はしてはないが、今更どうにか言う程、状況の変化は遅くは無い。

岩魔「よし、それでいい..ふぅ..ハァ!」


ドシンッ!ドシンッ!ドシンッ!


 1つ1つが外壁に匹敵するほどの巨大な岩石を出現させる。周りにいるブラッドの亡者とゾンビの魔物のゾンビ達を無差別にすり潰す。

ブラ「ほぉ..作戦会議かな?」

ゾン魔「ちょ、お前..」

岩魔「お前ら!立てるなら逃げろ!」

社達の前に立ち塞がり、鼓舞を送る。

社「す、すまない..傷が深くて身動きが..」

エンシャ「...」

 状況を見極める。歯を食いしばり、自分の不甲斐なさを呪った。

エンシャ「エシス、エンジェを担げ」

エシ「え、ぁあうん..」

エシスにエンジェを託す。エンシャントは社を背負う。

社「エンシャント君..」

エンシャ「俺達の出る幕は既に終わったんだ。それに、旦那が救ってくれた命だ。

     尽くさせてくれ」


 今度は、自分が社を支える。そんな意思が垣間見える。

社「あぁ..頼む」

エシ「エンシャント..成長したね...」

エンシャ「前とは違ぇんだよ前とは..お前らも来いよ」

フィー「分かってるわ..行くぞ、キュウミ」

 生憧を背負って、社の後に続く。

ウケ「うん..」


タッタッタッ


 焦りと疲労が混ざった、不揃いな走り。着実とこの場から離れる。

 皆の姿が見えなくなってくる。だが、岩の魔物は社達を見届ける余裕なんてない。

ブラ「..状況は分からんが、もう、いいか〜?」

 岩の魔物やゾンビの魔物の鼓膜に届く声量で発する。その声は大きくなければ小さくもない。ただ、着実に圧を与える声だ。

岩魔「..あぁ、いいとも」


ブラ「なら遠慮なく..『分解毒』」


ビュンッ ビュンッビュンッビュンッ コトコトコト..


 道を塞いだ岩石の数々を泥のように溶かす。文字通り、分解している。

 そして、遮蔽物は消え去り、お互いの姿を正面から確認した。

ブラ「..最期に聞いておこう。拳マンが亡き今、私に勝つ算段はあるのか?」

岩魔「あるわけが無いだろう」

 見栄も虚勢もない、当然の即答。

ゾン魔「そ、そうなの?」

岩魔「..だが、1つ勘違いしているな」

ブラ「あぁ、まだ拳マンは死んでない的な?」

岩魔「...読んでくんなよ」

ブラ「奴なら有り得る話だが..また殺すだけだ」

 ブラッドが手をピストルの形にした。何かが来る。

岩魔「ッッッ!『岩(ロック)..」

 反応は悪くない。むしろ、岩の魔物にしては最大限動ける範囲で動いている。しかし、相手が悪すぎた。


ビュンッ ピチャッ


岩魔「なッ!?」

ブラ「はい、おしまい」

岩魔「ウヮァァァァァァァ!?」

ゾン魔「岩の魔物!?何が..」

岩魔「体が..上手く...動かせない..」

 力が抜け落ち、身体の主導権が奪われていく感覚。

ブラ「当たり前だ、私の血に触れてしまったのだから。既に私の支配下だ..」

 次の標的(ゾンビの魔物)へ、自然に視線が移る。

ブラ「そっちもやらないとね」

ゾン魔「(殺らなければ..殺られる)..ッッ!ハァッ!」

 地面が脈打つ。土が盛り上がり、次々と腕が伸びる。ゾンビの大群が次々と召喚される。

ゾン魔「これが..私の全て..」

 出し惜しみはしてはいけない。

 岩の魔物とゾンビの魔物が覆い隠される程の数がブラッドに押し寄せる。

ブラ「..まるで時間稼ぎじゃないか..」


シュッ パシッ!


 ゾンビの大群を一直線に突き破り、的確にゾンビの魔物の首根っこを掴む。

 徐々にゾンビの魔物を宙に上げる。抵抗もなんのその。

ゾン魔「カハッ!?(なんてパワーだ..)」

ブラ「血を入れるか..」

淡々と支配をする準備を始めるように、もう片方の手をゾンビの魔物に向ける。

ゾン魔「..混ざれ!」


スッ ヌポッ


 隠し持ったナイフをブラッドに突き刺す。

 ブラッドは反射的に体の1部の組織を液体のように柔らかくした。刺される場所を正確に把握した判断力。

ブラ「ッッ..私に物理攻撃は効かないぞ」

 体に異変が生じる。

ブラ「なん..だ?」

掴んでいた手を離す。ナイフの刃先に何かが塗りたくられるのを感じる。

ブラ「これは..(私の血と相反する..)」

ゾン魔「私の屍の集大成d」

ブラ「『分解毒』」

ピシャッ

 体全体に血を浴びせる。体が徐々に溶けてくる。

ゾン魔「か、体g」


シュッ ザクザクザグザグザグザグ!


 頭上から、大量の血の槍を生成させる。容赦がないその連撃は、ゾンビの魔物の肉片を残す事もなく、溶け去った。

ブラ「..ふぅ、こっち(体)の方も分解完了..まったく、不快だ..」

 社達が逃げた先の光景に目を向ける。次のターゲットは決まっている。

ブラ「..行くか」



スタスタ..ドゴォォォォォォン!



 突如として激しい轟音が鳴り響く。

ブラ「なんだこのエネルギー..拳マン(奴)よりも..」

パシッ!

 一時的に無防備なブラッドを、体全体に抱き込む。

岩魔「行かせない..」

ブラ「ッッッ!貴様..あぁ、そうか」

 理由は即座に察した。ゾンビの魔物の細胞が一時的にブラッド自身の支配力を弱めていたと。

ブラ「油断はしない主義だったのに..」

 引き剥がすのは簡単だ。だが、その数秒が岩の魔物にとってはチャンスでしかない瞬間だった。

岩魔「次は、おいどんの番だ」

 支配の力が戻されつつある中、抵抗する力は落とさなかった。

 突如として影が振り落ちてくる。巨大な岩石が空を覆っているからだ。

岩魔「拳マンに繋ぐのだ!おいどんの最大限の最大限!」

この時、ブラッドにとっては不思議でたまらなかった。

ブラ「何故..そこまで奴を信頼をする?」

岩魔「『岩:隕(ロックいん)!』」

その答えは言わず、技名を唱えた。言うまでもないのだろう。

ブラ「..はぁ...」

ため息だけをついた。非効率で非合理な行動に、何もかもが、馬鹿らしく見えるのである。


ドズンッ!


 巨大な岩石は空を切り、周囲を埋め尽くす。そして自分も巻き込まれることなど、ハナから承知の上。ブラッドから離れる事なく、執念の道連れを完了した。

 次があると思っている行動としか見て取れない。


ブラ「..『分解毒』」


ピュッ シュワァァ


 これだけの質量を持った岩石でさ、関係なく、分解し始める。規模が規模な為、ある程度の時間を要することにはなりそうだが、既にブラッドが立ち上がれる程度のスペースは開かれた。

ブラ「まったく..狂気の沙汰だ」

状況を整理し、次なる標的を定める。

ブラ「逃げ出したあの者達を始末しないとな..あの状態だ、遠くには行ってないだ

   ろう..ここは私の手下を配属し..ん?」


 ふと、意識が空へ向く。すると空からキラリと輝くナニか。その物は速く、一直線にブラッドに向かっていく。

ブラ「ッッ、フッ」

迎撃する体制を取り、相殺目的で血を撃ち出す。


ビュンッ シュンッ


 衝突したが、相殺すること無く、ブラッドへ向かわれた。


ドガッ!


ブラ「ッッッッ!?..」

 攻撃がようやくまともに命中した。

ブラ「何が起きて..」

 その物はコロコロと転がるボールだった。そのボールには拳マンの顔が彫られていた。

ブラ「これは..奴の...」



拳「来い!武器!」



 拳マンの大きな声が遠くでもわかるほど、響き渡った。

 その刹那、地上へ閃光が走り、ブラッドの方向へと向かわれていく。

ブラ「死に体が」


シュルルルルルル


別方向で物体が回転しながら向かってくる。その物体は拳マンの手元に渡ってくる。


パシッ!


 それは、あのボールも含めて、拳マンが2年前に創った武器だった。その武器の名前は『こぶしボール』、『セイバーバー』。

 拳マンはまるで予測していたかのように、既にセイバーバーを振りかざす構えを取っていた。

拳「ウラァァッ!」

ブラ「(液体化にしないと..)」

 振りかざす速度は更に加速する。


シャキンッ!


 その結果、一太刀でブラッドの腕を斬り飛ばした。

ブラ「ぬッ..」

ブラッドはすぐに距離を取る。斬られた腕の事より、本能が間合いを取らせた。

ブラ「(力が増した..?いや、これが..)本来の..力?」

拳「..もう気がかりだった事が解決したからな。体が軽〜い軽い」



◇ ◇ ◇ ◇ ◇



松本「はぁ..はぁ...ゴッホゴッホ..」

過呼吸になり掛けている息を整えようする。それすらもが現実逃避だと思ってしまう。

目先には、今も苦しんでいるようにしか見えない、グガと..ナーコが苦しでいる現実に..

けど、その視線は逸らしては行けない。

松本「...ハハッ..久しぶり!元気してた?」

心は整わなかったが、なんとか息は整った。

乾いた笑いを発した後から、意外にも言葉はハキハキと出た。逆に新鮮だった。現実を受け入れているだからだろうか。

2人は会話や返事ではなく、聞く度に心が抉り出される呻き声だけか返される。

松本「いやぁ..まぁ、互いに元気って事もないかもしれんけど...こうしてまた

   逢えて良かったわぁ...」


このまま勢いに任せて、言葉を羅列する。だが、体はカタカタと震えている。

松本「..分かってる」

覚悟は決めないといけない。現実を見ないといけない。そんなの体がそう言っている。

けど..これを乗り切ったら...俺の目的地は..生きている証そのものは..

松本「てか..俺も怒ってるからな!手紙だけ残して、勝手にいなくなって..正直

   に言って面倒いって思った事もあるよ。でも、俺はお前らが..お前らが..

   好きやから..大好きやから..」


様々な感情の色が溶け合い、吐瀉物を連想させ、それが頭の中へ溢れ出る。

松本「分かってる..分かってるはボケ..」

体は既に準備を整えていた。また、息が荒くなる。

っが、今は過呼吸になっている方が丁度良い..のかもしれない...

松本「じゃあ、行くよ..グガ..ナーコ...」

その後の惨劇は俺が作るはず..なのに、言葉や口調は優しかった。


ドタッ!


地面を蹴り上げた瞬間、もう止まることはない。

松本「『れーきーれーき..

手元からいつも通り、エネルギー波を生成する。そして、れっきースーツの力を放つ。

松本「れっきィィィィィィ!』」


ドゴォォォォォォン!


世界が白く轟く。その威力は決して優しいものではなかった。

辺りの森林やグガやナーコは..跡形もない更地と成り果てた。

そして、この瞬間、俺の希望は消え去った。

松本「ぅぅ..あぁぁぁぅぁぁぁぁぁ!..」

全ては終わり、ここにいる空間は俺だけになった。俺は発狂した。無理やり喋った自分がなんて気持ち悪かったのだろう。

2人を救ったのか、殺したのか..その答えは一生求めては行けない。

松本「何をして生きれば..なんで今生きてんだ俺はァァァァ!早く!死ねよ!」

エネルギー波を俺の頬へ持っていく間際、脳裏から走馬灯のように駆け巡る。

松本「..こ、こぶし...」

流れていく記憶の奥から、生きる希望を見つけた。


たった1人の、親友だった。


松本「ぁぁ..行かなきゃ...行かなきゃ..」

覚束無い歩きのまま、深い森の闇へ足を運ぶ。



◇◇◇◇◇

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