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拳マン  作者: まん、がか
シーズン2

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70/70

拳マン第2部 14話

体勢としては、壁に打ち付けられて、グッタリとしているような状態。頭からは久しぶりに血が流れている。口にも入って、口いっぱい血の味がする。

痛みはあまり感じなくなってきた。

拳「...あれ」

体に力が入らない、視界がボヤける。ピントが合わないカメラを思い出した。死ぬ間際になるとどうでもいいことを思い出してしまうものなのかな?

拳「てか俺、死ぬのか..?」


アー『何を言ってるの』


 そう言って、片足の膝を地面に着けながら、上目遣いで拳マンの顔色を伺う。とても豊満な胸を潰して、無理をしている体勢だ。声も霞んで聞こえた。

拳「..誰..だ?..いや...」

この声、このボディ、聞いた事、見た事がある。すぐに思い出すことは出来なかったが、徐々に徐々に..全貌を思い出す。

拳「..あ、アージャン..?..アージャン?」

 やっと、名前も思い出せれた様子。そして、また新しい疑問も生じてくる。

俺は何で見ているんだ?右目..?左目?..いや、左目は失明した。見えているのはまだ正常に動いている右目だけだ。そのはずなのに、今起きているこの超常現象は一体なんなのだろうか..現実か?

俺は亡霊を見ているのか?..いや、きっとその逆だ。

拳「俺も..死んだのか」

無理やり納得する方向性へ繋げる。

拳「やっと死ねたんだ..そっかそっか...アージャン、やっと俺もそっち側に

  ..」


このまま楽になろうとした瞬間、アージャンは俺を更に見つめる。

拳「..な、なんだよ、そんな見つめてきたは照れるやn」

アー『わッ!』

いきなり声を上げたことに俺はビビって動いてしまった。

拳「ッッッ!痛ってぇぇぇぇ!」

なんで痛覚が..なんで?

アー『生きているからに決まってるでしょう』

その言葉の意味が分からなかった。死者と会話しているはずなのに。

拳「..はぁ?何言うてんの..?じゃあ、なんでお前が..」

アー『サイトウと同じ原理よ..私にしか分からないか..』

曖昧な説明なのに、段々と理解が俺へ流れていく。

拳「..ぁあ、つまりそういう..あれだろ?あの世から一旦、ここに戻ってくる

  ..みたいな?」


飲み込みが早いのも、罪なことだ。

アー『そうね、私の体をよく見てみたらより分かりやすい』

右の視界にしか映らないが、確かに、彼女の体が透けて見えた。

アー『..服も体も透けてるから、見たくても見えないわよ?』

拳「..そんなん見ても松本ぐらいしか喜ばねぇよ..松...本」

その名前を口にした瞬間、色々とまだやるべき事があることを。

アー『思い出し方に思うところはあるけど..そう、あんたにはまだやるべき事も

   あるでしょう』


責めるような言い方ではない。むしろ、確認するような口調だった。

拳「うん..あるよ..でも...もう死なせてくれてもいいんじゃねぇの?」

何回弱音を吐くことになるのだろうか..弱音は逃げたい時にする事だ。そう、逃げたい時にね。

俺はここまで傷付いて、報われる事は今の所、決してなかった。

このまま死ねるなら..もう死なせてくれ...

アー『..質問だけど、あの化け物との戦いの勝敗に対する執着心は?』

拳「..んなもんねぇよ。俺は負けた、それだけの話だろ。それは」

何も無いんだよ。全て認める。それで全部解放されるならいくらでも認める。

アー『..まだ息は吹かしている』

拳「黙れ..俺は死んだ。死んだんだ..」

だが、まだ体が勝手に動いてしまう。

拳「ッッ、ぐッ...そこまで..?」

痛みはさっきより大分マシだった。というか癒えている。

アー『まだ戦える。いや、まだ勝てる』

拳「やめろ..やめろやめろやめろ!俺ばっかに負担掛けさせんじゃねぇよカス!

  ...なんで俺だけ..こんな思いして..誰も助けれずに..」


この感情は決して怒りではない。

壊れる寸前なのに、2年前以上に動く事が多すぎんだよ..

アー『前に、自分の行いはぐらいは誇れと私に言い聞かせてくれた』

聞き覚えのある言葉。俺がアージャンに対して言い放った最後の言葉を思い出す。

拳「..あ〜、確かに..言ってたような..言ってたかもな..もうお前は死んで

  るから、この際だから言っちゃうけど、あれは..あれは...」


このままアージャンを傷付けて嫌われてもいいような妄言を言っても良かった。実際、その覚悟はあった。

でも..それを否定できない自分がいた。あの言葉に嘘をつく事が出来なかった。

アー『拳マンの言ってくれた事、そっくりそのまま返ってきてる』

拳「ッッッ..」

皮肉みたいだった。自分が誰かへ向けた言葉に、今度は救われかけている。相手が相手なら、反吐が出るだろうに。

アー『..さぁ』

そして、俺を奮い立たせるかのように、手を差し伸べるアージャン。その手は透けているし触れられないはずなのに、今の俺にとっちゃ温かく慈愛に満ちている手にしか見えなかった。

拳「ぁあ..あぁ...」

触れられるはずがない手。なのに俺は醜く掴もうとしていた。なんとも情けない。

 体はその勢いのまま立ち上がっていた。痛みは凄まじいものだったが、それは数秒間の話。

拳「..また、立ってしまった」

額に手をパチンッと叩き、一瞬だけ上を見た。

何度生きる道を踏み外そうとしても、運命は何度もその道を正そうしてくる。

アー『..良かった』

拳「誰のおかげだよ...」

アー『私のおかげよ』

即答で俺へと返ってくる。アージャンって自我強いよな..

拳「..へいへい..そうだな...」

アー『そ、それで最後に..』

 突然モジモジとし始める。彼女の頬は赤くなり始める。

拳「?」

アー『私、約束を破ったでしょ?』

拳「約束?..ぁあ、指切りのやつ?」

多分その約束破る=死だけどな..よくよく考えてもおかしな状況だな。死んでるやつに慰められてるんだし。

アー『約束破ったら..1番恥ずかしい事をする..って言ったよね..?』

拳「言ってたね。それがどうしt」

アージャンは俺に抱き寄せる。いや、抱き付いてる。胸も潰れているように見えるが、俺の触覚は刺激されない。ただ、アージャンの顔が俺の顔へと、寄せてくる。

拳「ぇっ、ちょ」

アージャンは俺の体を透けて通り抜けた。温度は感じなかったのに、口と口を合わせたような感覚..いや、錯覚だけが、俺の触覚を刺激したような気がした。

アー『やっぱりそうなっちゃうのね..」

残念そうに、そっぽを向く。

アー『勇気出したんだから、サイトウ、ちゃんと褒めてよ..』

行動と言動が理解できなかった。

ただ、俺は唇に手を当てていた。

拳「なにが..なんだか...」



ドゴォォォォォン!



拳「なんだこの音..?まだ戦ってんのか?..」

状況を理解する前より、アージャンの方に変化が訪れる。

アー『..もう、限界みたいね...』

 それは終わりの訪れだった。アージャンの体はどんどん薄くなり、消えていく。

拳「はっ?え、アージャン..?」

アー『最後に拳マンの力の後押しになれたなら、私は満足」

拳「おい..やめろってそれ..消えんなや..」

 そんな祈りとは対極な運命がどんどんと理解させられていく。

拳「お前が消えたら俺..俺..!」

アー『さようなら、私のヒーロー』

拳「だからやめろって!アージャン!』

アー『...』

声を荒らげ、アージャンに寄り掛かる。触れられないのはとうに分かりきっているのに、それでも俺は彼女を掴もうとしていた。


アー『愛してる』


 抱き掛かろうした瞬間、スっと塵を払ったかのように、姿形は消え去った。


拳「アージャン..アージャン...!」


片方は透明の涙、もう片方は血の涙を流す。左目の痛みは増していくが、それ以上に俺自身にも変化が訪れた。

長年、心の奥底で留めていた気がかり(本音)をやっと思い出せた。松本の再会も、その1つに入っているのだろうが、何より..

拳「アージャン..やっと思い出せた。全てを」

2年間で、アージャンを思い出したのは今日が初めてだったから。無理やり忘れようとしていたようだ。


拳「愛してる...か」


アージャンの気持ちもようやく理解できた。あん時の約束も照れてたんだな..鈍感だな、俺は。

拳「..あっち側にはもう行っちゃいけんな...ふんっ」

もう1度、力を入れ直してみる。いつも通りの力を感じた。

拳「やっと...やな...」

今ならできる気がする。

拳「来い..武器」

 バチッと集中させる。こぶしボールを召喚する感覚。

拳「多分、ボールがブラッド目掛けて飛んでくるよな..ふぅ...」

 腹の底から溜め込む。


拳「来い!武器!」


 その声は迷いも邪念もその全ての気がかりを取り払った、いつも通りの拳マンだった。


ドタッ!


俺は宿敵(ブラッド)の方へと、走り込む。


◇◇◇◇◇


ブラ「つまり..やっと、私と対等に渡り合える力を取り戻せたのか?」

拳「あったりめぇだろ。これでやっとハンデなしだ」

とは言いつつも潰れた左目や血が流れている箇所の痛みはまだ残っている。

ブラ「..その見た目でよく言えるよ。片目だけで私を見切れるか?」

拳「体は万全じゃないかもしれんけど、俺の心は万全なんだよ...てかそんな事

  言ったら、お前の腕はどうなんだよ」


俺が斬ったブラッドの片腕は地面に転がり落ちている。

ブラ「前にも言ったが..私の体は血液そのものだ」

斬られた断面から血が滴る。その血が、生き物みたいに蠢く。

そして、くっつく。再生ではなく接続..

拳「きっしょ..貧乏人が!」

ドタッ!

地面を蹴り上げ、ブラッドに刃を向ける。

ブラ「節約上手と言って欲しいものだね!」


キンッ!キンッ!キンッ!カキンッ!


 火花が連続で散る。斬撃と血刃が真正面から噛み合っている。斬撃の数々をブラットは読み切り、難なく対処している。

ブラ「どうした?本来の力はそんなものか?」

拳「今はここ(頭)も回ってんだよ!」

いつも通りの俺なら、思考も研ぎ澄まさている。

セイバーバーを2刀流に分裂させ、『セイバーセイバー』にする。


キンッ!キンッキンッ!


 手数が跳ね上がる。左右からの連撃。徐々に押しているように見えるが、ブラッドはこの状況をも対応しているようにも見える。

ブラ「その程度なら!」

ブラッドの手を鋭い刃物に変形させる。

拳「ッッッ!」


シャキンッ!


俺の片腕を容易く斬り飛ばした。セイバーを握り締めた力は抜け落ち、分散していく。だが、それは敢えてだ。

俺は咄嗟に宙に浮いたセイバーを合致させ、1本の武器、セイバーバーに戻す。

拳「オラァ!」


シャキン!


今度はブラッドの片腕が宙へ舞った。この1連の流れはほんの一瞬。流石のブラッドも攻撃を食らうしか無かった。

ブラ「ぐッ..おもしろ...」

ブラッドの体は血の塊なので、水脹れに穴を空けたように血が溢れる。そして思わず本音が漏れる。

拳「めっちゃ良いとこやっと思ってたのに..まぁ上書きすればええだけやな」

 独り言を吐きながら、もう一度斬りかかる。ブラッドも斬られた腕を再生することなく、拳マンと平等にもう片方の腕をまた鋭く刃物の形状にさせる。彼もようやく戦いに対する高揚感を感じているように。


キンッキンッ!シャキンキンキン!


 お互い、片腕落ちとは思えない速度の斬り合いだった。 火花は線香花火のように連続で散り続ける。

だが、それでも俺はヤツの斬撃を防ぎ切れず複数箇所には切り傷が増え続ける。俺が1度斬り付けれたとしても、アイツは3度ぐらいは俺を斬り続けている。

 ブラッドは優勢なのはもちろんだが、それ以上にブラッド自身は己の身を案じていた。

ブラ「(にしてもおかしい..反射的に攻撃箇所を液状化しているはずなのに...

   何故痛みが..」


 ブラッドは体全体の液状化が可能であり、1部分での細かな液状化も可能である。物理や魔法、ほぼ全てをブラッドは液状化で通り抜ける。ブラッドは基本的に防御をする必要性がない。事実上の無敵である。

 本来痛覚の概念すらも存在しないはずの体でダメージが蓄積されている。そう、その前提を崩す棒人間が1人、目の前で殺し合いをしている。

 何度も致命傷を与えたはずなのに、意味も意図も理解できず、立ち上がる男。

ブラ「..楽しいなぁ!」

 戦闘自体にはあまり関心はなかったブラッド。自身の命に関わる瞬間になったら話は別だ。

拳「フッ!」


ブォンッ!


俺はセイバーバーをブラッドに向けてやり投げのように投げ飛ばす。

ブラ「(武器を捨てた?)」

 一瞬、その考えが頭に過ぎったが、次の瞬間にはその認識は覆される。

拳「ッッ!」

 腕を翳した瞬間、セイバーバーの挙動は意志を持ったかのように斬り掛かる。

ブラ「おぉ..!」


キンッ!


打ち返したセイバーバーが、空中で軌道を変え、再びブラッドへ襲い掛かる。


ブラ「(容易に弾く事も出来ないか..)」

俺はその隙に斬り落とされた腕を拾い上げる。

拳「今なら..」

元の箇所にくっ付ける。一瞬で感覚は取り戻される。

拳「ッッッ..痛ってぇ..んっ、ぺっ」

喉から血が吐き出される。そう、この感覚。初めて腕を青龍の魔物に斬られてくっ付けた時だ。

拳「懐っついなぁ..」

ブラ「(そんな芸当を)..フッ!」


ガゴンッ!


セイバーバーを力強く弾き返す。セイバーバーと繋がっている感覚はバチッと静電気のように絶たれる。

拳「うッ!?くッ!」


シュルルル パシッ!


それでも、俺はもう1度念を込めて、セイバーバーを操り、手元へ収める。だが、ゴッソリと神経が削られる感覚が俺を襲う。うわ..これ削れるな..

ブラ「せっかくリスペクト持って片手で付き合っていたのに..」

 地面に転がる腕が、まるで磁石に引かれるように断面へ吸い寄せられる。気付けば、転がった腕は元通りだった。

拳「手間掛からなさすぎやろ..」

ブラ「当然だろう、私の血なんだから」

お互い、理屈は通用したものじゃねぇな..

拳「..さぁ、どうするつもりだ?」

ブラ「どうするって..ぁあ、もう限界か?」

拳「ハッ、誰がだよ..」

ブラ「私の一手を待っているように見えてね。このまま待ち続けたら、いずれ切れ

   るだろう?」


拳「..ほざいてろ」

でもまぁ..図星か。実際、最後のひと踏ん張り中ではある。

でも今は強がるしかない。強がって強がって、相手が俺の限界地点を悟らせないようにしないと..

ブラ「..じゃあ、試しに」

ブラッドは指先を俺に向ける。

拳「そ、それは..」

体の細胞が震え上がっている。逆にまだ足が崩れ落ちない俺を褒めて欲しいくらいだ。

ブラ「タイミングは教えてやる」

拳「..舐めプか?」

ブラ「言っただろう、試しだと。今から打ち込む『血迅』を受けれるか受けれない

   かだ」


拳「...」

俺は黙った。その沈黙は自分から解こうとはしない。

ブラ「黙ってるだけだと、打ち込むだけだぞ?」

拳「....」

血迅の脅威は食らった俺が一番解っている。体の1部も未だ痙攣している。生死を彷徨うことになったトラウマは一生消えることはない。だが、黙っているのは単に恐怖を抱いているからではない。

ブラ「..窮屈になったもんだな、拳マン」

拳「来いよ」

ブラ「ッッッ..」

 彼の目と一言の重さに覚悟の念が現れていた。それに応じて、ブラッドの指先1つ1つに刺激が生じた。

ブラ「これだから..お前は..拳マンは!」

 ブラッドは再度、力強く指先を拳マンに向ける。完全に放つ合図だ。

拳「ッッッ!」

ブラ「『血迅』!」

恐らく技名を言い終わる直後、本当にマジで0に限り無く近い秒数後に、発射が完了して俺の急所に直撃するだろう。初めて受けた時に理解が出来なかったのが何よりの確信だ。

だから、それよりも、いちに早く!俺は!


...ビュンッ!ガッコッン!


ブラ「ま、マジか!」

拳「よっし!」

そう、事前にこぶしボールを操り、放たれる血迅を無理やり相殺した。撃つタイミングを教えてくれなかったり、ミリ単位でのミスでもしていたら、俺は既に息絶えていた事だろう。

 弾け飛んだこぶしボールの1部は血迅によって、欠けてしまったが、大破はしなかった。

ブラ「死にかけた技で..よくそこまで大胆な真似を..」

拳「..どうやろうなぁ、俺だってこんな事するなんて命知らずにも限度があるわ

  な。でも..1つスピってる事言うなら..この目(左目)で死の境界線(アージャン)を見る事が、

  出来たから!俺は吹っ切れたんだよ!フッ!」


ブォンッ!


俺は再び、セイバーバーをブラッドの方へ投げる。

ブラ「(またか..混乱目的か?なら、このまま避けてすぐに血迅を放てばいい)」

 ブラッドは軽々とセイバーバーの軌道を読み切り、頭部の位置を少しズラした。


ピタッ


 セイバーバーはブラッドの真横で綺麗に停止した。本来なら目と鼻の先の間隔で綺麗に抜け駆けていただろう。

ブラ「ん?」

拳「今だ!」


ドタッッッ!


 周囲の地面がひしゃげるような轟音とともに、蹴り上げた地面は、コンクリートやアスファルトで出来ているであろう建物の数々を丸ごと消滅させ、まるで爆砕地のような跡がくっきりと残っていた。

 その轟音が鳴り響いた直後にはブラッドのすぐ目の前に位置していた。

ブラ「(ギアが上がってたのか?)」

拳「より速く、より力強く!」

 セイバーバーを手に取り、瞬きをした瞬間には、セイバーバーと1番近いブラッドの首元を斬り込み、もう一度、瞬きした瞬間には、人間の弱点である全ての箇所を斬り付ける。

拳「ウラァァァ!」

もっと!もっと!この昂る感情を力に変えろ!俺は更に強くなれる..まだまだ強くなれる!

ブラ「ッッッ!?」

 ブラッドは途端に体を強ばらせた。並々ならぬ感情を抱いてるようだった。

 その瞬間、体の一部が赤黒く変化していく。


ブラ「『ブラッドタイム』」


拳「ッッッッッッ!?それはやb」


ドドドドドドドドドドドドドドドッッッッッッッッッ!


 3秒間のブラッドタイム、その僅かな時間で繰り出される打撃の数は、万の位にまで達していた。

拳「ハッ..ハッ..」

衝撃により、数十m地面にのたうち回った。全身に打撃による激痛が響き渡る。声そのものが出ない..痛いとかじゃなくて、ただただ苦しい。

拳「い、息を..息をォォ..ハッ..ハッ...」

前にそれを(ブラッドタイム)使ってきた時より..明らかに殺意マシマシやったぞ..つかそもそも今の動きは前のとは比にならない。

ブラ「悪い癖だ...久々に恐怖心を抱いただけで、本気を出してしまった。出力

   の調整も怠りすぎて..無駄に血を浪費してしまった..血迅で節約してた

   のに..」



 ブラッドの体は元の赤色へと戻り、両腕は真っ黒に焦げていた。ブラッドの生存本能が働いた瞬間だった。

ブラ「...まだ、息があるのか?私の本気を数秒間、耐えれたと言うのか?」

拳「ぁっぁ..俺も..よくわかってない...」

弱々しい声を発しながらも、俺はまだ立ち上がろうとした。前までの俺なら、このままわざとでも倒れ込んでたろうな..

ブラ「(無意識下で私の攻撃の相殺をしていたのか?)考えても仕方がない。勝負

   は付いているからな」


拳「ま、まだ..だ」

ブラ「これ以上は無駄にしかならない。私も少々落ち着きが足りてなかった」

 ジリジリと接近し、指先を拳マンの脳天へと向けた。血迅を撃つ構えだ。

ブラ「けつじ..ん?」

 血迅を言いかけたタイミングでブラッドはある真実に気付き始める。

ブラ「神田神壱が..死んだ?いつ?..いや、かなり前..5分前?..まさか」

 それは有り得てはいけない。有り得てしまったら、直ちに拳マンを殺さなければならない。

ブラ「ッッッ、けつz」


ドダァァァァァァァァン!


 その瞬間、遠くから神田王国を囲っていた巨大な壁が、外側から弾け飛ぶ。粉塵が舞い、瓦礫が雨のように降り注ぐ。

 黄色い着ぐるみのようなスーツを纏った、もう1人の棒人間が瓦礫の中心で堂々と立っている。

拳「あ、あれは..間違いない...」

ブラ「..もういいか」

 諦めや焦りなどはない。次の脅威を理解した者の冷静さがあった。

 その隣には、既に松本が鎮座していた。

ブラ「(速ッ..)」

 ブラッドが攻撃をしようとしたと同時に、松本は拳を握りしめていた。

松本「『れきれきパンチ』!」


ドォォォォン!


 手の中から莫大なエネルギーが収束し、打撃と共に放出する松本の最大の一撃。ブラッドの攻撃諸共貫通し、ブラッドは塵のように消滅したように見えた。

松本「間に合ったか..社さんが言ってくれんかったらゆっくり行ってたな」

拳「ま、松本...」


◇◇◇◇◇

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