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第二十二話 バグ

前回のあらすじ


 オーククイーンを倒し、クエスト『監獄踏破』をクリアした社一行。

 アカシアの提案によって【始まりの町】へ向かうのだった。

Ring-Ring-Ring-Ring……Ring-Ring-Ring-Ring……


 ダンジョンを脱出した直後、俺の腕からこんな音が鳴り出した。

 厳密には俺の腕についたブレスレットから。

 そして前方を歩く三人の様子を見る限り、この音が聴こえているのは俺だけのようだ。

 このブレスレットの正式名称は「アルトラのブレスレット」。ゲームのガイドキャラクターであるアルトラと連絡をとるためのアイテムだと聞いている。

 キャラメイクの時に受け取ったはいいものの、今のいままで使ってこなかったんだよな。


「おーい、ちょっと先いっててくれ!」

「はーい! それじゃあ後で場所についてはメッセージ送りますね!」


 運営側からの通信だから梢たちと距離をとる。

 「どうしたんですか?」みたいな声がないあたり、アカシアさんたちが連れていってくれるというお店の方に興味が向いているようだ。

 ……ちょっと前まで俺の後ろをついてくるばっかりだったのに。

 子どもが独り立ちしたときの親の心情ってこんな感じなのかな。

 

『……さん! 社さん、聞こえてますか!』


 後輩の成長にジーンときてるところに音声が割り込んできた。

 出所は件のブレスレット。

 無意識のうちに手首ごと掴んでいたので、電源スイッチみたいなのに触れてしまったんだろう。


『おーい。……あれ、また上手くできてないのかな』

「ごめんごめん。聞こえてるよ」

『あぁ、良かった。通じましたね』

「えーと、何か用かな?」

『……用事がないとダメ、ですか?』

「いや、ダメだろ。ってか、そんなこと言うキャラクターだっけ?」

『……テコ入れがあったんです』

「え……あの真面目学級委員長風キャラは?」

『今は「何気ない一言でドキッとさせる系委員長」らしいです……』

「似合ってないな」

『しかも、もともとの設定であったAI(委員長キャラ)は消せないみたいで、どうにも取って付けた感じになってるんですよ』

「難儀だなぁ」

『いいんです。……貴方がこの事を知っていてくれれば、それで』

「……それも?」

『すみません……貴方を前にするとなぜだか上手く話せなくなるんです』

「……」


 確かに取って付けたようなキャラだ。

 その『取って付けたような感じ』が、改めてゲームキャラと会話しているということを認識させてくれる。

 プログラムを弄るだけで性格が変わるなんて自分ではとてもじゃないけど受け入れられないな。


「えーと、それで?」

『はい?』

「いや、本当にただメッセージ送ってきただけではないんだろ? そろそろ本題に入らないか。結構無駄に時間を使ってる気がするし」

『スミマセン……貴方と話しているとついつい時間を忘れちゃいますね』

「そういうのはもういいから」

『……はい。では本題に入ります。今回連絡したのは、社さんの武器について原因が見つかったからです』

「それは俺が武器を持てない理由ってことだよな? 分かったのか」

『いや、武器を持てない理由は未だ分かっていません。しかし、社さんに適合武器が存在しない理由が分かりました』

「ほう……で、その原因は?」

『バグです』

「どんな?」

『それは不明です』

「は?」

『……現在、社さん以外の一部プレイヤーにも「適合武器が五種類表示されない」という異常が現れています。社さんのように適合武器が1つもないプレイヤーは確認しておりませんが、少ない人で1つしか表示されないプレイヤーもいます』

「なるほど。俺のはその延長線上と」

『恐らくは。しかし、その原因が私たち運営側にあるのか、あるいはプレイヤーの皆様に共通する何かがあるのかという部分が全くの不明なのです。制作スタッフ総出でバグを探していますが、それらしいものは見つかっていないのです』

「だから『不明』か……」


 病気なんかと同じようなものなのだろうか。

 症状が出ない人と出る人がいて、その症状の出方も人それぞれ。感染こそしないものの、似たようなものだろう。

 俺はたまたまその症状が強く出ただけというわけだ。

 まぁ、俺だけじゃないということが分かって少し気が楽になったかな。


『さて、ここまでで質問がなければ連絡は以上になりますが』

「質問はないよ。わざわざありがとう」

『いえいえ、貴方と話せる口実ができて、私も良かったです』

「……さいですか」

『あう……で、ではこれで……』

「うん、それじゃあ……あ、いや。ちょっと待って!」

『はい? なんでしょう?』

「質問……いや、どちらかというとクレームかな」

『クレーム、ですか』

「あぁ、【西の荒れ地】にあるダンジョンについてなんだけど」

『オークの根城になっているものですね』

「そうそう、それ。あそこで起こる強制クエストだけどさ、強制なのにあの残酷な風景ってどうなのかなーって」

『……クエスト?』

「ほら、【監獄踏破】ってやつ」

『えーと、いや。どうやら私もゲームの隅々まで把握してるわけではないようですね……ごめんなさい』

「あー、知らないならまぁいいか。とりあえずプレイしてみた感想として、もう一回点検とかしてみたほうがいいんじゃないかなと思っただけだから、レーティングとか」

『はい、ありがとうございます。スタッフに伝えておきますね』

「よろしくね。それじゃ、今度こそ。じゃあね」

『お時間をとって申し訳ありませんでした。また何かございましたら連絡ください。……用事がなくても、いいですから』


 その言葉を最後に声は消えていった。

 ふむ。

 ゲームのナビゲーションキャラクターなら知ってると思ったんだが、そこまでの知識は入れられてないみたいね。

 まぁ、伝えることは伝えたし十分だろう。

 ……そろそろ、梢たちに合流しないとな。

 パーティーチャットでメッセージを送って、俺も【始まりの町】を目指しましょうかね。

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