第六話 葦原の墓
朋也「高校入学まで後、一週間しかない」
「もう少し遊ぼうと思ってたのに」
ベッドにうずくまる
「わけわからん事に巻き込まれたし」
景継『朋也殿、おはよう、今日も良い朝じゃな』
『リブ殿、おはようございまする』
リブ『おはよう、メシ、兄者』
朋也「おはよう」
『朋也、リブ殿のお散歩なるお付き添いが終わられたら今治に向こうてもらいたい』
「お付き添いって何ぞ?俺が散歩してやっとんやぞ」
『なんと不敬な』
「お前らの価値観を俺に押し付けてくんな、俺にとってリブはリブや」
『力関係がよぉ~わからんくなってきたわい』
「俺が一番上の序列でいいだろ」
『たわけが馬鹿は休み休み言え』
今治へ行く準備
母親「ま~たどっかいくの?」
朋也「今治行ってくるわ」
「はい~?」
「墓参り行ってくる」
「原チャ借りるよ」
母親「バイクは危ないからやめてよ、せめて免許取ってからにして」
「今の俺は大丈夫なんよ加護があるから加護」
「お父さんに言うよ」
『口うるさい女じゃのう』
黙れ
「今日で最後にするから、明日からは入学式までは家で大人しく勉強する」
「もう、お母さん知らんよ」
「朝ご飯は食べて行きなさい」
今治までの道中
『朋也、このバイクなる奇天烈な乗り物はなんだ』
「移動に使う道具だよ」
『早いのぅ』
『確かにこの分であれば昼前には今治の地に到着できるな』
「そうやね」
『海からではなく、奥道後からぬける道で行けるか?』
「そのつもりだけど、何で?」
『海の怪異を避けるためじゃ』
「危険なの?」
『一つ伝えておくかの』
『波多良ノ神はハタの地以外では顕現できんぞ』
「そうなん?」
『あやつはハタの地を守るお役目を与えられた土地神である』
『故に他の地域では顕現できんのだ』
『因みにワシの祠は主なのでわしを携えてどこへでも行けるがの、伊予国外へは出られんぞ、厳密にいうと出られるがワシの加護は無くなる』
『結界内からの離脱はワシとの契約を反故にしたとみなされ違反となる』
「違反したらどうなるの」
『わからん』
「わからんの?」
『過去に試した者がおらんからの』
「愛媛からでなければ良いのね?分かった」
「で、海のルートの件」
『そうじゃった、海はな神道の力が及ばない、及びにくいのよ』
『海外からの漂流者や大和の者ではない者達が多く徘徊しておる』
『話し合いどころではない、即戦闘になる』
『海は天皇家の権威が通用しない治外法権の場所が多いのじゃ』
『それに、それでなくともそなたは怪異と遭遇しやすくなっておる』
「そうなん?」
『先ずわしを携えており、大神様か犬神かまだ分からんが、何せリブ殿を従えておる、波多良ノ神との契約を履行しまだ一柱目ではあるが縁を持っておる』
『怪異や神からすれば異様に見えるであろうな』
『放っておいても向こうから集まってきよるわ』
『国内の強力な怪異や神は概ね神社で祀られたり、祠に封印されたりしておる』
『渚には近づくな、奴らは基本的には陸には上がれんが」
『思わぬ大物と出くわしてしまう可能性もある』
『ひとたまりも無いぞ』
「分かった」
今治の本町通から少し北西に入った場所に墓地はある
じいちゃん曰く、元々蘆原家の墓地はお寺ができる前から有、蘆原家の墓地を僧侶に守らせるため、蘆原家が資金を出して建造した寺らしい
少し遠い親戚がお寺を切り盛りしている
お寺に到着
遠い親戚のおばちゃん登場
「あら坊ちゃん」
「ご無沙汰してます」
景継『誰だあの女』
「遠い親戚だよ」
景継『・・・・皆、似ておるな』
蘆原家特徴を簡単に説明すると、眉毛が太く濃い、低身長で顔のエラが張っている
朋也『葬式は面白いよ、みんな眉毛が濃い』
景継『なつかしいな』
ここにくると血のつながりを感じる。
おばちゃん「後で寄っといで」
「みかん饅頭あるから」
「はい」
景継『みかん?』
無視して墓地へ歩いていく。
段々景継が静かになる。
墓を見る。
長い沈黙。
朋也「どうした」
景継『・・・・・』
さらに沈黙。
幼いころより感じていた、蘆原家の墓地だけ神聖な雰囲気を纏っている事に、この墓の周囲だけ異様に綺麗で苔まで美しい。
圧倒的な存在感である。
景継『美しい』
朋也「うん」
景継『残っておったか』
1,300年の悠久の時を経て自分は怪異になった。
国の在り方、人々の価値観が変わり神も変わった。
なのに。
ここだけは1,300年前のままである。
景継『葦原は1,300年でも変わらぬと申すか』
景継『・・・奴を呼ぶ』
朋也「桑原さんの首を取った人?」
景継『そうじゃ』
景継『名は葦原景忠、歴代最強の防人であり、ワシの重臣じゃ』
『葦原は忌部の分家』
『武家ですらない』
『にもかかわらず、末席とはいえ、朝廷の護家来集に名を連ねとった』
『戦になれば一番槍も多く、負け戦の際には殿を任されることも多かった』
『景忠は怪物じゃ』
朋也「そんなご先祖様がおったんやね、剣道教えてもらいたいわ」
景継『教えを乞うたら良い』
景継が墓前へ立つ。
初めて本気の神官の顔になる。
風がやむ
『葦原景忠』
墓が震える。
景継『忌部景継が命ずる』
『でよ』




