第四話 縁結び(前編)
翌朝。
顔をべろべろ舐め回されている。
「ちょ、やめ、おいやめろってリブ」
目を開ける。
リブがいた。
尻尾を振っている。
『兄者』
「・・・・・」
『メシ』
「・・・・・・」
『メシ』
「メシ」
『兄者、メシ』
「リブが喋った」
『昨晩から喋っておられるぞ』
「びっくりした!」
「まだ慣れんな」
『昨晩はワシを噛み殺すと息巻いておられたがの』
「物騒だな」
『先程ほどなくして怒りを治めて頂いた』
リブへの丁寧な言葉使いはあえて無視しよう
「ちょっと嬉しいけどな」
『何がじゃ?』
「リブと話ができるのは」
『メシ』
朝飯を食わせながら、昨日のことを思い返す。
右腕は綺麗に治っていた。
痛みもない。
夢ではないらしい。
「そういえば・・・」
『なんじゃ』
「リブの回復早いよね」
『そうじゃのう、でもこれは想定外じゃ』
『リブ殿には供物として死んでもらうつもりじゃったから』
「ふざけんな」
「回復はお前のおかげか?」
『半分はそうじゃろうな』
『ワシを宿したことでお主達は加護を受ける』
「加護?」
『病にかかりにくくなる』
『災いも寄り付きにくくなる』
『家族や近しい者にも多少は恩恵が及ぶ』
「めちゃくちゃ良いやん」
『今頃気付いたか』
『ワシは高貴な神官じゃ、現在力は失っておるがの』
『万能ではないぞ』
『しかし』
『リブ殿は少々妙じゃ』
「妙?」
『非常に薄く』
『本当に僅かじゃがのぅ』
『大神様の片鱗が感じられる』
「オオカミ?」
『山の神様じゃ』
『血か魂かは分からぬ、両方かものぅ』
リブはメシを食い終わり俺の膝の中で欠伸をした。
『朋也とリブ殿との絆は今回の土地神との一戦で更に深いものになった』
『お主を命懸けで守るとリブ殿は魂に刻んでおられる』
『と同時に、お主に対して命懸けで守ってもらえるとも信じておられる』
『これは縁に近いの』
昨日。
血だらけになりながらも。
俺の前に立った姿が浮かぶ。
『リブ殿は御年何歳であられる?』
「三歳かな?」
『これからのご成長が楽しみだの』
「リブ」
お座りしてじっと見つめられる
『兄者』
「お前神様なの?」
『・・・』
『まだ複雑な会話は無理じゃ、時間がかかる』
「爺さんはリブと会話したんだろ」
『ワシとはもう少し複雑な会話が可能じゃ』
「へ〜、まぁいっか」
今日は神社へ行かなければならない。
約束したからだ。
波多良ノ神との契約。
二週間で神社を蘇らせる。
大仕事だ。
「じゃあ飯食ったら狸神社行くか」
『うむ』
朝飯をかき込んで掃除の準備に取り掛かる。
母親「何そのかっこどっか行くの?」
朋也「ちょっと」
「昨日も夜中わけわからん」
「お父さんとお母さんのご飯奪ってお酒も・・・どこいっとったん?」
「ちょっと」
「で、今日もそのちょっとに行くの?」
「まあそうなんやけど、神社の掃除に行ってくるわ」
「神社の掃除?」
頭をかしげる母親
「あんまり遅くならんようにしいよ」
「うん」
「リブ連れて行くわ」
「はいはい」
サッパリした性格の良い女だ
流石は親父
神社に向かう
『リブ殿とは本当に良い関係のようじゃが、何かきっかけはあるのかの』
「まぁ、躾じゃないかな」
「基本的には殴らないと分からないと思っているから」
『ほう』
「よく褒めて、毎日散歩して、飯あげて、悪いことしたら容赦無くぶん殴る」
『朋也は良い家長になるであろうな』
「そりゃどうも」
「同級生に言ったらドン引きされたけどな」
『ドン引きとは、軽蔑のような感情か?』
「そうやな」
『訳がわからんのう』
「俺はまぁ、引く気持ちも分からんでもないけど」
「一応大切にしていることなんで、他人にとやかく言われる筋合いはない」
「だから、俺同性の友達一人もおらんのよね」
『女子はおるんか』
「女には優しくするのが『男子の本懐』だろ」
「その通りじゃ!よう言うた」
「同学年の男はね気に入らなかったら喧嘩になるんよ」
「だいたいクソなんよね」
「どうもうまくいかん」
『ふん、それをお主は何とも思うておらんじゃろうが』
笑い合う二人
『気に入らなければぶっ飛ばせば良いわ』
『男子たるものそうでなくてはならん』
神社に到着
波多良ノ神『おぉー!待ちくたびれたぞ葦原殿、ようきた』
『お!リブ殿も一緒か!昨日は悪かったのリブ殿』
リブ『許す』
朋也「そうなん?あっさりしとるなリブ」
景継『ワシが昨晩説明差し上げたからのぅ』
波多良ノ神『・・・・・言葉を』
景継『そうなんじゃ・・・しかも急激に成長しておられる』
『まだ確定ではないがのぅ』
波多良ノ神が地面に膝をつきリブに平伏する
朋也「面白いけど・・急展開すぎるって、何事?」
波多良ノ神『リブ殿は大神様であられる、四つ足の神の中では九尾様次いで、上位の神であられる』
『ワシなんぞ、下の下の下の下じゃ、ワシは朝廷に祀られたことと、人間に恐れられ神の真似事をしとるに過ぎん』
『大神様は元々神であられる、最上位の神』
リブ『許す』
波多良ノ神『ハハー』
更に深く平伏
朋也「・・・・」
景継『だからまだ確定ではないというておろうが』
波多良ノ神『確定じゃ!馬鹿たれ!』
景継『お主と同格の犬神様の可能性もあるじゃろうが』
景継『ここは四国ぞ、圧倒的に犬神様であられる可能性の方が高い』
波多良ノ神『違ってたらどうするんじゃ阿呆、取り返しがつかん』
『大神様の末裔に葦原の末裔』
『この境内じゃったら余裕でワシが口寄せられるわ!』
『何が葦原朋也、リブじゃ』
『肝が冷えるわ恐ろしい』
波多良ノ神『大神様、契約により朋也殿を2週間お借り致しまする、何とぞご容赦くださいますよう謹んでよろしくお願いいたしまする』
リブ『・・・・』
朋也「いや、意味わかってないって、もうええて、さっさと掃除すんぞ」
景継が高らかに笑う




