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幼なじみと部活

美咲に香織とのことを見破られ、香織と会わせる約束を言いつけられた後のこと。


俺は、とりあえず落ち着こうとスマホを手に取った。するとそこには、香織からのLINEが届いていた。


どうやら、美咲と言い合っている時に来ていたようだ。


かおり『ねぇ、私、今日部活ないんだけど、一緒に帰らない?』


香織は俺も学校があったものだと思っているようだ。実際は土曜日にあった文化祭の振替休日である。


とはいえ、香織は文化祭に来てくれた訳だし、お誘いを無碍にするのも気が引けるので、ちょっとお出かけすることとしよう。


優斗 『いいぞ。駅で落ち合おうか』

かおり『わかった!私はあと15分くらいで着くよ』


俺の返信が遅れたのもあって、あまり時間がないな。

俺は慌てて服装や髪を確認し、身支度をして玄関へ向かう。


「あれ?噂をすれば香織お姉ちゃんとお出かけかな?」


途中で美咲に声をかけられた。


「今日は時間ないから、また今度な。」

「ちぇー、行ってらっしゃーい。」


そう言って家を出て、急ぎ足で駅へと向かう。


駅が近づいてくると、駅の中、改札の方を見つめる香織の姿が見えた。


香織は俺が改札から出てくると思っていて、こちら側に気づく様子がない。


俺は近づき、後ろから声をかけようとする。


「よう、かお……」


香織のことを無意識に下の名前で呼ぼうとしていたものの、美咲との会話を思い出して、気恥ずかしくなり、止めてしまった。


酷く中途半端な俺の声を聞いて、香織がこちらに気づいて、振り返った。


「あれ?優斗?今日学校休みだったの?」

「あ、あぁ、文化祭の振替でな。」

「あっ、そっか。そうだよね。ごめんね?休みの日に。」


香織は申し訳なさそうな表情でそう言った。


俺は別に嫌々出てきた訳でもないので、慌てて香織に伝える。


「いや、全然大丈夫だって。むしろ……」


俺は慌てて言葉にしたため、口が滑りかけてしまった。


別に俺が香織と一緒に帰るのを楽しみにしてたからなんだという話ではあるが、香織に面と向かって言葉にするのは、なんだか照れくさいし、恥ずかしい。


香織は俺が言いかけたことをそのままにするわけもなく、聞いてくる。


「えっ?むしろ、なに?」

「えっと……、た、楽しみに、してたぞ。」


咄嗟に誤魔化すことも出来ず、正直に答えた。


「へぇ〜、そっか。」


さっきまでの香織の申し訳なさそうな感じは収まり、一転して明るい雰囲気が戻ってきた。


「ねぇ、優斗。」

「ん?なんだ?」

「私もね、楽しみにしてたよ。」


香織は微笑みながら俺に向かってそう言った。


俺は咄嗟に言葉も出なかった。うん。正直めっちゃドキッとした。


俺は、何とか言葉を選び、口を開く。


「とりあえず、帰るか。どっか寄るか?」

「そうだな〜、せっかく優斗が迎えに来てくれたし、寄り道して帰りたいんだけど、今日あんまり手持ちないんだよね……」


「そうか、それじゃ、今日は帰るか。寄り道はまた今度にしようぜ。」

「うん。残念だけど、そうしよっか。」


残念とは言いつつ、香織の表情は明るいままだ。


香織が気を落としてないことに安堵しつつ、2人で並んで自宅への道を歩く。


俺はふと気になったことを香織に聞いてみる。


「なぁ、部活はどんな感じなんだ?」


この間、文化祭から、生徒会の話になったので、今度は香織の部活について聞いてみようと思ったんだが、香織が少し不満そうな顔でこちらを見ている。


「ねぇ、優斗。2人とはいえ、話しかける時は名前呼ぼうよ。」

「えっ?」


今まで気にしていなかったのに、突然こんなことを香織が言うのは、十中八九、あの、文化祭の日のせいだろう。

これまで避けてきていた分、いざ名前を呼ぼうとすると恥ずかしい。

あぁもう!美咲のせいだ!美咲があんなこと言ったから、変に意識してしまう。


「えっと、中村さん?」


そう呼ぶと、香織の雰囲気と表情が悲しそうなものになってしまった。


俺は慌てて謝り、言い直す。


「ごめん、ごめん!悪かった。謝るよ、香織。」

「……、うん。この間、下の名前で呼んでくれて、嬉しかったよ?だから、辞めないで欲しいな。」


これは俺が全面的に悪いので、何も言えない。ちゃんと名前を呼ぼう。


「それで、香織。香織の方の部活は、どんな感じなんだ?」

「楽しくやってるよ。先輩もいい人たちだし、ペアの人も気が合うしね。」

「いい感じなんだな。大会とかどうなんだ?中学の時は、結構良い結果残してたよな?」


よく全体の朝会の時に、校長先生から表彰されてた記憶がある。


「うーん、やっぱりレベルが高いからね。今度大会もあるんだけど、良い結果を残すのは難しいかも。」


香織でもやっぱり3年生相手だと厳しいんだろうな。


俺は、文化祭に来てもらった訳だし、俺も応援とかしに行った方がいいかなと思い、香織に聞いてみる。


「香織、俺に応援に来て欲しいとかあるか?文化祭来てもらったし、お礼みたいな感じでさ。」

「えっ!?」


香織は驚いてから、少し考えて、答えてくれる。


「うーん、ちょっと恥ずかしいし、緊張するけど、優斗が見たいって言うなら、来てもいいよ?」

「なら、今度の大会は見に行こうかな。いつあるんだ?」

「来週の土曜日だよ。街に出たとこにある、スポーツセンターであるの。」

「おっけ、応援しに行くよ。」

「うん。少しでも多く勝てるように、頑張るね。」


俺は、どんな感じで大会ってやるんだろうなと考えると、1つ思い当たることがあった。


「あっ、香織、俺と香織が幼なじみで、関係があるってことは分からないように、遠目から応援するから、安心して、勝利を目指してくれ。」


香織はキョトンとした顔をした後に答える。


「うん。優斗、気遣ってくれてありがとね。」


そんな話をしていると、自宅前まで着いた。


「それじゃ、優斗、またね。」

「あぁ、またな。」


そう言って香織と別れ、家に入る。


「おー、おかえり、お兄ちゃん。楽しかった?」


リビングにいる美咲が話しかけてきた。


「あぁ、楽しかったよ。」


俺はそう答えて、自分の部屋へと向かった。

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