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妹と舌戦

文化祭も無事終わり、振替休日の月曜日。

香織と本音で話し、トラウマの真相や今のお互いの気持ちを知った。


とはいったものの、特に大きく今の関係が変わる訳では無いし、なにかとても恥ずかしいことを言ったような気もする。


なるはやで忘れるためにも、休日を満喫するべく、昼間からベットに寝転がり、最近溜まってきていたアニメを消化する。




気づけば夕方になり、家族が帰ってくる時間が近づいてきた。


「ただいま〜」


1階の玄関から美咲の声が聞こえる。

帰ってくるの早かったなと思ったが、中学校では月曜日は学校全体で部活が休みだったことを思い出し、納得する。


パタパタと階段を上がってくる音がする。俺の部屋の隣の美咲の部屋へと向かっているのだろう。


俺は一言おかえりくらい伝えておこうかと起き上がり、ドアの方を向いた。


すると勝手にドアが開き、美咲が部屋に入ってきた。


「美咲、いつも言ってるだろ、ノックを……」


俺がそこまで言いかけたところで美咲が割り込んで話し始める。


「お兄ちゃんよ、聞くべきか悩んだんだけど、やっぱり気になるから聞くね。」

「ん?何をだ?」


「お兄ちゃん、私は見てしまったのだよ。この間行った文化祭の時に、香織お姉ちゃんを。」


なにぃ!?割と来場者も多くて、人でごった返してたのに、顔を合わせてたのか!?


どこか恥ずかしさがあるため、香織とのことを家族に知られたくない俺は何とか誤魔化そうとする。


「ん?人違いじゃないのか?最近会ってないし、見間違えたんじゃ?」

「いやいや、さすがに見間違えないと思うけどな。それに、友達から香織って呼ばれてたと思うよ。」


ぐぬぬ、路線変更だ!


「まぁ、それが香織だったとして、なんで俺に教えてきたんだ?中学のこと知ってるよな?」

「だって、お兄ちゃんの高校の文化祭に香織お姉ちゃんがいる理由なんて、お兄ちゃん以外になくない?」


切り返しが鋭い。


「いや、部活の関係とかかもだろ?」

「うーん、そうなのかな?」


美咲は首を傾げて考え込む。


俺は何とか誤魔化し切れたかと思い、心の中で胸を撫で下ろす。


そう思っていた矢先、美咲が話し始める。


「でもさ、お兄ちゃんよ。」

「なんだ、妹よ。」


少し間を空けて、まるで某少年探偵のような口調で続ける。


「私、お兄ちゃんが最近、夕方たまに出かけてることとか、勉強頑張ってることと、文化祭に香織お姉ちゃんがいた事、繋がってるんじゃないかなって思ってるんですよ。」


図星である。さすがは俺には無いコミュ力と人脈を持つ妹。推理力まであるのか。


俺はできる限り平静を保ちながら、答える。


「い、いやいや、たまたまだと思う、ぞ?」


我ながら誤魔化すのが下手だ。俺が内心焦りまくっていると美咲が口を開く。


「お兄ちゃん、同じ家に住んでいる以上、そのうちわかることだよ?ほら、楽になっちゃいなよ。」


なんだろう、妹から王手を指された気分だ。俺と美咲の間にカツ丼が見える気がする。


観念して、被害を最小限にするべく美咲に言葉を選びつつ話す。


「あぁ、美咲の思った通りだよ。最近、また香織と話すようになったんだ。漫画貸したり、勉強したりな。」

「お願いだから母さんには内緒にしといてくれ……」


美咲はしてやったりといった表情で答える。


「やっぱりね、様子変わったな〜って思ってたもん。お兄ちゃん、安心して。文化祭で香織お姉ちゃんを見たのは、私だけだよ。お母さんは知らないはず。」


それを聞いてホッとする。まだお隣と付き合いのある母さんに知れたら、何が起こるかわかったものじゃない。


そんなことを考えていると、美咲がニヤニヤした表情で続けて言う。


「でも、お兄ちゃん、香織お姉ちゃんのこと、昔みたいに下の名前で呼ぶようになってるよ?」

「へ?」


俺は、間抜けな声を出しながら、頭が真っ白になる。


「お母さんにバレたくなかったら、家では気をつけなきゃね。あ、あと、今度、私も香織お姉ちゃんに会わせてね〜。」


俺が呆然としてる間に、美咲はそう言って、手を振りながら部屋を出ていってしまった。


俺は、いつから自然に下の名前で呼んでたかを思い出そうとして、冷静に、文化祭の帰りの時だと思い当たる。


気をつけてたのになと僅かに落ち込みながら、それだけ香織のことを深く受け入れつつあるのだと自覚した。

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