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第十四話:炊事遠足①

『じゃあ、忘れ物ないかー?そろそろバス出すぞー』

 担任がそう言ってバスに乗り込むと、ゾロゾロと生徒たちもそれに続く。


 今日は遂に、かねてより待ち侘びていた炊事遠足の日だ。今日こそ竜之介を振り向かす、抜かりはない。今日のわしは、椿たち3人に仕立て上げてもらった完全装備だからな。ワンピース?とかいう服は、この世界の男が好むものらしい。いつも学校で着ている服より動きずらいが…。

 髪も、体育がある時などには晴が、後ろで一つ結びや団子にしてくれるが、今日はさらに時間をかけ、コテのようなものまで使って整えてくれた。椿曰く『鬼可愛』らしいが意味はよくわからん。


 

 荷物を下の荷台に詰め込み、バスに乗ろうと入口へ行こうとした時、ちょうど竜之介と鉢合った。

「お、おう!竜之介…」

 と言って、髪なんかを掻き上げたりしてみた。わしともあろうものがこんな小っ恥ずかしいことを…。いや、椿たちの言葉を思い出せ。『鬼可愛』『マジヤバ』『顔面国宝』、どれひとつ何を言っておったのかはわからんが。


 竜之介は、洒落たわしをみて何か言うかと思いきや、

「おう、なんか…いつもとちげーな」

と吐き捨て、すたこらと中に入って行きよった。

 

 はあああ…なんじゃこいつ!女子がいつもと違う格好をしておったら、とりあえず褒めちぎるものであろう?女心のわからんやつめ、枕草子を読んで勉強してこい。


 幸先の悪い始まり方だが、桜華の顔に焦燥感はない。なぜならそう、戦は始まったばかりであるからだ。壱の手、弐の手と、寄せては返す波のように攻めるのみ。戦い方は決まっていた。



 *****

 

 車に乗り込むと、ひと足さきに乗り込んでいた晴が窓際に座っていたので、わしはそのまま空いている方に座った。一本通路を挟んだ隣は、なんの巡り合わせか虎太郎じゃった…。


「お! 隣は桜華ちゃんかい。ていうか今日はずいぶん洒落込んでるな〜、めっちゃ女の子っぽ

 いで!死ぬほど似合ってへんけど」

といい、腹を押さえてケタケタ笑い出した。


 よし…、殺そう。料理の最中、うっかりを装い包丁で一突き、せいぜい残り数刻の余生を楽しむがいいわ。


 桜華はガン無視を決め込んで席に座り、程なくしてバスは目的地へと向けて出発した。

*****

 

 移動中の車内では、執拗に絡んでくる右隣の阿呆の言葉を、耳半分で聞き流しながら晴とたわいもない話をした。

 


「なんかさ、こうやって二人で話すのは久しぶりな気がするね」

ひとしきり会話が盛り上がった後、落ちついた声で晴はそう言った。


「ん?いつも家では二人きりであろうが」

「いやそうだけど、そうじゃなくてさ。

 なんか気づいたら、いつも桜華ちゃんの周りにはいっぱい人が集まってるから。

 やっぱり、人を惹きつけちゃう何かがあるのかな?さすがは信長様」

「フッ、かもしれぬな、まあ良いことばかりではないがな…」



「なーんか、嬉しいような寂しいような」



「お、妬いてのるのか?ならば、もう寂しい思いをさせぬよう気を配ろうかの。

 それより、そろそろわしを呼び捨てで呼ばんのか?こっちがむず痒いぞ」

「えー、なんか慣れちゃったから。あ、でもね…」


 自分でも不思議なことに、晴とはいつまでも話せそうな気がして、わしらは車内で絶えることなく、たわいも無いことを話し続けた。


 


*****


 学校を発ってから半刻ほどが過ぎると、あたりにはすっかり緑が多くなり、程なくすると目的地の立て看板が見えてきた。


「長かったなあ。桜華ちゃん、俺のことずっと無視するやんー。どうしたん、機嫌悪いん?飴

 ちゃんいる?」

「要らん、黙れ、殺すぞ」

「うおっ…、すっげーリズミカルに怒るやん。こわこわ〜」


 この男は本当に…無神経にも程がある。だが今回の狙いは竜之介ただ一人。こんな下衆を相手にしているほど暇も余裕もない。



*****


 バスを降り各自荷物を下ろし、先生が軽い指示と注意点を述べる終わると、生徒たちはそれぞれ班毎に固まって散り散りになっていった。


 わしら6人も調理場へ向かった。カレーとかいう料理は、大釜で煮込む必要があるらしいので

鍋を使える場所に割り振られていた。聞くところによると肉や魚を、自ら炭火で焼いたりして食す班もあるとか。

 

 

 五分ほど歩き目的の場所へ到着した。そこは、一切に濁りもない小川が流れ、その川をみずみずしい青葉が茂った大きな木が覆い隠していつつも、隙間からは陽の光が差し込んでいる。

 まさに、神秘的の一言であった。


「うわ、俺らこんなとこで飯食うん?風情もクソもないやんけ!」

 確かに、この阿呆の言うとおりだ。飯を食うにしては趣があり過ぎる気が…。


「今更そんなこと言ったって仕方ないじゃんー?だからさ、楽しもうよ!人もいないしほぼ貸

 切り!こんな贅沢そうそうできないよ」


 皆が雰囲気に圧倒されている中、椿一人は楽しむ気満々と言う様子だ。それもそうだ、自分で料理をするなんて何年ぶりだろう。せっかくの機会、たのしまないのは損であろう。






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2000pv目指して頑張ります!

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