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第十三話:夕暮の帰り道

「なるほどね。それであたしたちに相談もなく班を決めちゃった、と。そういうことでいいん

 だよね?桜華さんや」

「はい、あの、すまん…」


 その日の放課後、役割の分担や今後の流れの確認のため、現代文の時間に決定した(というか無理矢理決めた)六人が集まっていた。班員は、女子はいつものわしら四人。男子は竜之介ともう一人、常にヘラヘラした顔をしているこの男の計6人である。そして、今はどんな状況下かというと…


 わしは今絶賛正座をさせられ、3人に詰められておる真っ最中じゃ。なんの相談もなく勝手に班を決め、あまつさえ誰かわからない男子を入れたことが、かなり逆鱗に触れてしまっているらしい。


「まあまあ、ええやん?この話はここでしまいにし……」

「うっさい、てかあんた誰だっけ」

 京訛りの男が助太刀に入るも椿の前にあえなく撃沈。というか確かに此奴の名前、わしも知らんな。


「嘘やろ?沖田や、沖田 虎太郎!一カ月同じクラスで過ごして、名前も覚えられてへんのかいな…」

 といい、かなり落ち込んでいるようだった。

 

 んん…というか、この河内弁のような訛りを聞くと悪寒が走るんだよな……。京や堺の腹黒い商人共の、あの薄気味悪い笑みが鮮明に浮かんでくる。


 

 色々と脱線し、話し合いが空中分解しかけたところで凛が小さくてを叩き、

「早く決めちゃおうよ。時間もったいないし」

と言って、一本締めた。


「とりあえず何作るか決めないと。じゃないと買い出しもできないし、まずはそこからだよね」

「確かに、まあ無難にカレーでいいんじゃない?あたしよく家で作るから慣れてるし」

「俺もカレーでええわ、竜は?」

「別になんでも」

 カレー?異国の料理だろうか、聞いたことがないな。焼き味噌に湯漬けでいきたかったのだが…。まあ、皆で作る料理でもないし、今回は諦めよう。


「じゃあ、あとは買い出しかの分担…かな。一緒に住んでる私と桜華ちゃんが買い出しに行った方が良いよ

 ね、多分。当日も持ってくる時二人で分けられるし」

「じゃあ、お願いしようかな。凛とあたしは、小道具一式とか細々したもの担当しよか。

 男二人はー、二人はー…」


 男に振る仕事がないのだろう、確かに男は料理の出来る者と出来ない者の差が大きいしな。よーくわかるぞ…なぜならわしは出来ない方の人間だったからな!懐かしいのー、子供の頃、腹が減ったので台所番に黙って料理をしようとしたら、火事になりかけた事があったな…懐かしいわ。


 などと昔のことを懐古していると、椿が何か思いついたような顔でこちらを向き、とても人間とは思えないほどの悪い顔をして、

「じゃあ、男子は買い出しの手伝いをしてもらおう!重いもの持つくらいはできるでしょ?」

と言って目配せしてみせた。

 

 此奴、わしが行きつまっていることを察して……でかした!でかしたぞ、椿!

 なるほどな、女子の妙な団結力はこう言ったときに生まれておったのか。

 

 着々と進む準備の裏側で、熾烈な駆け引きと意地汚い根回しが始まっていたが、男子二人は、当然気が付苦はずもなかった。


*****


 次に日学校が終わると、桜華、晴、竜之介、虎太郎の四人は買い出しのため、学校と家のちょうど間あたりにあるスーパーに向かっていた。


 椿が作ってくれた予想外の好機。わしはこの買い物で、差し迫った炊事遠足で竜之介を振り向かせるための下準備をだな…。

と考えておった。おったのだが、此奴は…

「桜華ちゃん、なんでそんな喋り方なん?」

この男は……。


「なあなあ、桜華ちゃん、このジャガイモデカすぎひん〜??握り拳ぐらいあるで!」


 邪魔ばかりしよって!!

知らんわ!芋と一緒に皮を剥いで、釜にぶち込んでやろうか、このたわけが。


 結局、邪魔が入ったせいで何も出来ずに買い物が終わってしまい、各々が、食材がぎっしり詰まった手提げ袋を片手に持ち、夕暮れの川沿いを歩いていた。前を歩く晴と虎太郎は何やら楽しそうに談笑しているようだ。

 

 まあ、本命はあくまで炊事遠足当日であって、今日の機会は、まあ空から降ってきたものくらいに考えて…。と思いつつもやはり、少しばかり口惜しさと後悔が湧き上がり、それを顔に出すまいと必死に噛み殺していた。すると龍之介がいきなり、わしが持っていた袋を取り上げたので突然のことに驚き、足を止めてしまった。すると、


「…。重そうだったから」

と、一歩前にいた竜之介は、振り返ってそう言うと、またスタスタと歩き始めた。

 

 こいつ…。保健室の時といい今の行動といい、天然の人たらしだな。無自覚なのが一層タチが悪い。しかしおそらく、ただ不器用な奴なのだろう、人が嫌いで避けているわけではなくどう接するのが正しいのかわかない、と言った感じか。可愛いではないか。


 桜華は、竜之介と前世の幼い頃の、どこか未熟な刺々しさがあった自分の姿を重ねて小さく笑うと、数歩前を歩く竜之介を小走りで追い、故ありげにその背中をたたいた。




 


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