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「なっ」
僕は振り返って驚いた。
少し先の方で、和倉と如月が数人のギャングとも取れる男たちと対峙している。
「わ・・・和倉、如月!」
「来るな!」
僕はあわてて近寄ろうとして、和倉にさえぎられた。
「来たらだめだ」
和倉は男たちを見たまま言った。
「早く逃げて!」
如月も叫ぶ。
「おっと、そうはいかねぇな・・・サツでも呼ばれたら困るんでね」
そういってニット帽をかぶった男がナイフをちらつかせる。
僕は唇をかみ締めた。
男たちが近づいてこようとした時。
「誰だよ、君ら・・・」
そういったのは、田口でも中田でも江桜でもなく・・・佐崎だった。
佐崎が、僕らから70メートルぐらい離れたところにたっている。
僕は驚いた。
こんな怒った佐崎の声は、初めて聞いたからだ。
「あ?また餓鬼かよ」
男たちはバカにしたように言う。
「僕の仲間に、手、出してんじゃないよ」
佐崎がそういうと、後ろから銃を構えた警官隊が顔を出した。
「ちっ」
男たちは舌打ちすると、ナイフや金属バッドを構えた。
「武器を捨てなさい。抵抗しないで指示に従いなさい」
警察のほうから声がする。
男たちは和倉と如月が立っていた場所を見た。
だが、二人とも隙を突いて逃げ出している。
そして男たちは・・・僕を見た。
「この餓鬼がどうなってもいいのか!」
気づいたら、僕の首にはピアスだらけの男の腕が巻きついていた。
もう一方の手にはナイフが握られている。
底知れぬ恐怖が僕を襲った。
「瀬斗!」
佐崎の叫び声がする。
不意に、父さんと母さんの顔が脳裏に浮かんだ。
「・・・のか・・・」
「あ?」
「こんなことしてて恥ずかしくないのか!なにやったのか知らないけど、こんな責任押し付けるようなことして、逃げてばっかりで、恥ずかしくないのかよ!」
僕は気づいたら叫んでいた。
「てめぇ、自分のおかれてる立場分かってんのか?」
「ぐ・・・」
首に巻かれた腕の力が増した。
人は死にかけた時に全てを悟るってのは、本当かもしれない。
僕は父さんが何故あんなに怒ったのか、はっきりと分かった。
僕が逃げていたからだ。
さっき自分の言ったことが、自分に向かってかえってくる。
逃げるなって、そういいたかったんだね、父さん。
分かってあげられなくて、ゴメン。
「う!」
急にピアスの男が声を上げて手を緩めた。
僕は必死で走った。
「瀬斗、ダイジョウブか!」
佐崎が真っ先に飛んでくる。
後ろに潜んでいた警官隊が、男たちを襲ったのだ。
「あぁ、ダイジョウブ・・・」
その横に和倉と如月もいた。
「・・・よくも、僕の大事な仲間を・・・」
そういって走り出そうとする佐崎を必死で和倉が止めている。
ほっとして、僕はへたり込んだ。




