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僕が執行部へ入ってもう一週間がたとうとしている。
無意識の間に、僕はみんなのことを「佐崎」「中田」「田口」「如月」「和倉」「江桜」と、君付け、さん付けをしなくなっていた。
でも、そのほうがなんだかしっくり来る。
人と壁を作りたいって意識も消え始めていた。
未だ、自分が何なのかなんて、全く分からないけど、時間はまだたっぷりあるんだ。
そう思うと、すごくやる気が出てくる。
学校に行くって気になれた。
そんな時、毎年恒例らしい二年キャンプがやってきた。
「キャンプ場所は向山の中宮キャンプ場。三日間の貸切で、二泊三日のキャンプを行う」
田口が企画書を読んでいる。
二年キャンプは生徒会主催で、金銭関係での運営しか先生の出番はない。
新生徒会になって、初の大仕事だ。
「しつもーん」
佐崎が元気に手を挙げた。
「中宮キャンプまでの移動はどうするんですかー?」
「先生に頼んで、貸し切りバスでの移動になる」
「了解でーす」
佐崎は手を下ろした。
一見、田口が生徒会長に見えるが、佐崎が生徒会長だ。
「金銭面のほうは梶谷が調べている。どうだ?」
田口は僕のほうを見た。
僕は会計用のノートパソコンから顔を上げた。
「テントを借りる為の費用を検索中」
僕がそういうと、田口はうなずいてみんなのほうに向き直った。
「しつもーん」
また佐崎が挙手する。
「テントって、何人ずつですかー?」
「それは今確認してるところではない」
「了解でーす」
・・・もう一度確認しよう。
生徒会長は田口ではなく佐崎だ。
「今週の休日、執行部で下見に行く。実際にテントを張り、一泊する。それから食料の調達や、天気の変化についても確認をとる必要がある。何か質問は?」
「しつもーん」
佐崎かと思いきや、挙手したのは江桜だった。
「ぬいぐるみ持って行ってもいいですかー?」
「個人の判断に任せる」
「了解でーす」
前々から思っていたが、佐崎と江桜は似ている。
「何か、面白そうだね〜」
楽しそうな如月の口調に中田がうなずく。
「よーし、調子出てきた!」
中田がうれしそうに笑っている。
このとき、誰も知らなかった。
キャンプの下見で、とんでもないことに巻き込まれるなんて。




