9.特級の終身刑(お礼の小話)
このお話が日の目を見ることができました。
魔術法学を勉強した私は、法律や刑罰について知り、休憩時間にルクスとその話をすることにした。
「刑罰には死刑、終身刑、罰金刑などがあります。その中でも、例えば、上級の終身刑、中級の終身刑、下級の終身刑、というように更に細分化されます」
「特級の終身刑、とかはないの?」
「あります。過去に行われたこともありますし、現在採用している国もあります。ですが、協会としては正式に認めていません。黙認状態ですね」
「どんな刑罰なの?」
「過去にとある国で行われた際のことについては、物語としても、協会としても、国としても記録があります。極悪非道の王がいて、王子と民衆で革命を起こした、というお話です。その時に行われたのが特級の終身刑でした。民を苦しめた先王は、民からは死刑を望まれていました。しかし、一部の貴族から下級の終身刑にするようにとの嘆願があったのです。しかし、民衆の方が声が大きく、また不満が多かったのです。そこで第一王子だった新王は、特級の終身刑を新たに設け、それを行うことにしたのです。その内容は、二度目の洗礼を、監視人と共に、受けさせることでした」
「監視人?」
「はい。この時は、新王が務めたようです。当時の物語に有名な一節があります。一度目の洗礼は産まれた時。二度目の洗礼は死に至る時。というものです。つまり、監視人に真名の意味が知られることになるのです」
「え、それって、色々と大変だよね?」
「はい。ですから、協会としては公式に認定していないのです。そして、ここでは、真名の意味を利用しない、というような誓約は交わされていませんから、新王は自由に真名の意味を利用することができたのです。そこで、新王は国中にお触れを出しました」
先王陛下の真名の意味をここに記す。
この者、その心根、その行いが善良であるならば、自らが救いし者たちに祝福を贈られるであろう。
この者、その心根、その行いが悪質であるならば、自らが傷付けし者たちに呪い殺されるであろう。
「と。そうして先王は民衆の悪意を受けて、死亡してしまったのです。こうして王国には平和が戻りました、という結末です」
「ふーん」
確かに歴史小説としては面白いのだろうが、史実として考えると、協会としては容認できないことだろう。
「それって、真名の意味の研究には、役立つのかな?」
「それは、まぁ、そうですね。役立つか、役立たないかで言えば、役立ちますが、それを研究材料にしてしまうこと自体が、あまり良くない行為ですので、お勧めはしませんね」
「そうか。確かに」
本人の意思に関係なく、広められてしまった情報を、勝手に研究に利用する、というのは確かに、あまり良いことではないだろう。
刑罰を受けた者であっても、どれ程の罪を犯していても、真名の意味を利用することは、非人道的な行為なのだ。
罪人の真名だから、利用して良い。
そんなことは研究者としても、協会としても、人としても、良くない行為であることが分かる。
直ぐに納得した私は頷いて、その話を終わらせたのだった。
ブクマしてくださった10人と、評価してくださった2人の方々に特級の感謝を捧げます。
いつも、お読み頂いている皆様にも、心からの感謝を。
ということで、本編である「私の大切な人は魔術の師匠」がブクマ10件を達成いたしました。
改めて、厚くお礼申し上げます。
そして、お読み頂いている皆様も、いつも、ありがとうございます。




