8.もし古代に転移してしまったら(お礼の小話)
もしも、のお話です。
とある日の午後。私はルクスから、古代魔術語について、教えてもらっていた。
今回は古代王国語で書かれた、古い本を使っての勉強だ。
この本が書かれた時代では既に、古代魔術語は廃れていたようだ。
そのために、このような教本があるのだろう。
本を読み進めていると、ふと確認問題のようなものが書かれていた。
以下の文章を翻訳しなさい。
「このりんごを一つ、ください………?」
「オデット様!」
「っ、ルクス!?」
私がその文章を読み上げると、私の魔力が本に吸い込まれて行った。
え、何だろう?
呆然としていると本が強く光った。
同時に隣に座っていたルクスが私を守るように抱き締める。
「オデット様、ご無事ですか!?」
「うん。ルクスは?」
「はい。問題ありません。どうやら、どこかに飛ばされてしまったようですね…………あの本には、魔術の仕掛けが施されていたようです」
気が付くと、私たちは見知らぬ街中に立っていた。
一先ず、互いの無事を確認して、ほっと安堵する。
それにしても、魔術の仕掛けか。転移の魔術か、何かだろうか。
ここはどこだろう。
そう思って、何気なく周囲を見渡した私は、呆然としてしまった。
「うん。転移で協会に戻らないと」
「はい、オデット様」
「…………え?」
「…………どうされました?」
見慣れぬ景色、見慣れぬ町並み、見慣れぬ人たち。
「ルクス、ここって、いつなのかな?」
「いつ、ですか?」
「だってほら、皆の服装が見たことない感じ…………」
「え?こ、これは、まさか、古代でしょうか?伝承にあるような身なりです」
「古代?あぁでも、古代魔術語の勉強をしていたから?」
「分かりませんが、可能性はあります。オデット様がちょうど読まれていた部分は、このりんごを一つ、ください、ですよね?」
「うん」
「であれば、お伽話では、その台詞をオデット様が誰かに言って、通じれば、戻れるはずです」
「そうなの?」
「はい、試練と呼ばれる不思議な魔術があり、それに合格すると、解放されると」
「分かった。やってみる。このりんごを一つ、ください、で合ってる?」
「はい。あ、あちらに果物屋があります。言ってみましょう」
「うん」
私はルクスと手を繋いだまま、果物が山盛りになっている屋台に向かった。
「…………このりんごを一つ、ください」
「おぉ、嬢ちゃん。お使いかな?はいよ、銅貨一枚だ…………あれ?あぁ、試練の幻覚だったのか」
露店の店主が差し出したりんごを受け取る前に、私たちはふっと転移していた。
「ん?」
「オデット様!」
「ルクス!」
「戻れたようですね!」
「うん、良かった!…………あ」
「どうされました?」
「いや、こんなに簡単なら、もう少しゆっくりしてから戻ってくれば良かったなって」
「はっ!そうですね…………折角の機会でしたのに…………」
「ま、まぁ、ルクスがいてくれて良かったよ。手を繋いでくれたのも嬉しい」
「は、はい、私もオデット様をお一人にしないで済んで良かったです」
うん。次があったら、その時はルクスと一緒に、古代の街を観光してみよう。
そんなことを思いながら、古代魔術語の授業は進んで行った。
難なく試練をこなしてしまう二人でした。
本編である「私の大切な人は魔術の師匠」が累計7,000pvを達成いたしました。
お読み頂いている皆様、誠にありがとうございます。
今回も、7,000という数字には関わりがありませんが、小話を書いてみました。




