7.新協会長の挨拶(お礼の小話)
「陛下、魔術師協会より、協会長と前協会長がお越しになりました」
「通せ」
執務室内には僅かに緊張が漂っていた。
協会長交代の知らせは届いていたが、新しく協会長となる人物については、厳重に秘されているからだ。
神殿からも、貴族からも、情報を入手できないと知った時には、魔術師協会という、ある意味、一国とも言えるその存在に、皆が警戒心を抱いていた。
その新協会長からの挨拶があると聞いた時には、仕掛けてきたか、と思った。
ここで協会長が誰であるかを示すのが彼らの理由で、協会が王国にどのような態度を取るかを確認する、というのが我々の理由だ。
奇しくも、互いにこの機会を求めていたのだから、新協会長は誰であるかを秘する価値がある人物なのだろうと予想している。
そして、取り次ぎに許可を出して、扉が開かれた。
その先にいる人物を見て、執務室の皆が驚き、息を呑んでいる気配がした。
「お初にお目にかかります。新たにサタロナ王国魔術師協会の長となりました、ルクス・プリンシピウムと申します」
協会長が身に付ける正装のローブを羽織っている青年を見て、私は思わず、笑みを浮かべてしまった。周囲の皆は警戒心を露わにしている。
これはやられたな。南の公爵の手引きか?
いや、ルクスは以前から協会に入り浸っているのだったな。
さて、それでは王国に対して、どのような立ち位置を取るのだろうか。
それを探るために、私はこちらからも仕掛けることにした。
「ルクスよ。其方が協会長となるのであれば、早くに教えてくれても良かっただろう?」
「申し訳ございません。協会にとって、協会長の交代は重大事ですので、協会内でも一部のみにしか情報は開示されません」
その返答を聞いて、側近たちは理解を示すような表情をした。
うん、これはこちらの負けだな。
私の側近たちが騙されるほどの尤もな理由を堂々と述べて見せる度胸と知恵があるのだ。
ここでこれ以上、私が非難することはできなくなった。
「それもそうだな。それではルクスよ。これより、協会長として、我らとも良好な関係を築いていこうではないか」
「はい。私は協会長としての責務を全ういたします」
ふふふ。最後までつれない奴だな。
こうして、協会長の就任の挨拶はあっさりと終わったのだった。
本編である「私の大切な人は魔術の師匠」が累計6,000pvを達成いたしました。
お読み頂いている皆様、誠にありがとうございます。
今回も、6,000という数字には関わりがありませんが、小話を書いてみました。




