16.世話係と運命の出会い(憧れの残骸と世話係の性分4)
最終話です。少し短いです。
「ルクス様。昨晩は何時にお休みになりましたか?」
「え?えぇと、日付が変わって、少し経ったくらい、ですかね」
「3時間を少しとは言いません!」
「そうですか?あっという間でしたよ?」
「はぁ。本日はお仕事を終えたら、少し仮眠なさってくださいね」
「え?いえ、昨日の続きが……」
「それ、期限はまだ先ですよね?それに仮眠を取って、頭を休めた方が、後々、効率的に仕事を進められると思いますが?」
「仕事は最低限で良いのでは?」
「いえ、仕事が早く終われば、研究時間が増えますよ、と言っているんです」
「な、なるほど。分かりました。それでは、午後は仮眠します」
「はい」
何だか、以前の師匠との会話を彷彿とさせるルクス様とのやり取りに、俺は溜息を吐いてしまう。
今回の話し合いが俺の勝利に終わったことに、護衛のリグネウスと、従者のウブラは安堵している。
二人はルクス様が連れて来た者たちだ。仕事を覚えるのが早く、主に忠実で、余計なことはしない。
だが、ルクス様の世話や説得までもを、俺に任せるのはどうなんだ?と思わないでもない。
まぁ、それが俺の務めでもあるから、別に良いのだけれど。
何だかんだで、ルクス様は協会長として、十分な働きをしている。
俺たちも上手く付き合っていけている。
俺にも従者や護衛、部下が付くようになったのは、未だに慣れない部分もあるが、まぁ概ね、順調だろう。
そう慢心してしまっていたのが、良くなかったのかもしれない。
夜明け前。異変を知らせる警報に起こされた俺は、手早く身なりを整えて、ルクス様の執務室に向かった。
そこには俺の従者と護衛も集合していた。少しして、ルクス様たちが到着した。
遅れて、部下たちも入って来る。
「報告を」
「はい。先程、ヴァラレ支部で魔術地震を検知し、緊急警報が作動しました。現在、ヴァラレ支部からの報告によると、最果ての森の方向から、上級の魔術地震が発生した。支部長と砦の騎士が現場に急行。原因を究明中。ヴァラレ支部は厳戒体制に入っている、とのことです」
「分かりました。続報があれば、こちらに持って来なさい」
「はい。失礼いたします」
そうして、今すぐするべきことは、それほど多くないということに安堵したのも、束の間、ルクス様ががたりと音を立てて、立ち上がった。
「ルクス様?」
「協会本部に、膨大な魔力量を持つ者が転移してきました。それと、これは…………デピラの気配、でしょうか」
「ということは、地震の元凶と共に、こちらに転移して来たと?」
「そうでしょう。転移の間に向かいます」
俺たちは足早に、執務室を出て、転移の間に移動する。道中で、デピラに遭遇した。
「デピラ!?どうした?」
「はい。詳細は不明ですが、簡単にご報告を。召喚魔術らしきものにより、完全なる白階位の少女が、召喚されたようです。四肢はありますが、他はないようです。最果ての森では地盤が弱く、また白階位では危険が多いと判断したため、直接、こちらにお連れしました」
「分かりました。まずは保護。それから聞き取り。その後は、最果ての森の調査ですね」
「はい。転移の間で待機するように申し上げました」
「分かりました。向かいましょう」
そうして、歩きながら、報告を受けて、一先ずの方針を決めた俺たちは、転移の間に向かった。
転移の間は頑強に造られている。
それに遮蔽もしっかりとしている。
だが、その扉を開けた瞬間から、大きな魔力を感じられた。
俺たちは生唾を飲み込んで、ルクス様に続いた。
そうして、突然やってきたオデット様を保護して、二人が親密になるのは早かった。
ルクス様にそういう方ができて、嬉しいと思う反面、二人の暴走具合に、頭痛と胃痛の絶えない日々が始まった。
けれど、それでも主の幸せそうな表情を見れることが、いつしか、俺たちのかけがえのない幸せにもなっていた。
だからこそ、二人が一緒にいようと努力する姿を見ると、あの時の神官のような、あの時のアダクさんのような、あの時の師匠のような、そんな気持ちで見守ってしまうのだ。
今なら、保護者の気持ちが分かるかもしれない。
そんな世話係らしい感想に、俺は苦笑してしまった。
それでも、どうか、二人が寄り添い、共に歩き、一緒に笑い合える、幸せな日々が続きますように、と願わずにはいられない。
俺の心にあるのは、かつての憧れの残骸と、今の世話係としての性分だけだった。
ここまでお読み頂きまして、ありがとうございました。
本編である「私の大切な人は魔術の師匠」が1万pvを達成しました。
誠にありがとうございます。大変、嬉しく思います。
1万という数字には関係がありませんが、きりの良い数字ですので、少し長めにお礼のお話を書いてみました。
思い付いた部分だけを書いているので、概略のような形になりました。




