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二 気付いた時には嵌っている

冷たい朝の空気に身を縮こませながら、人通りのほとんどない通学路を歩く。



朝の部活動が許可されているとはいえ、体育会系の強豪校というわけでも生徒達がみな学校近くに住んでいるというわけでもないので、開門前に校門の周囲にいる学生は片手の指で足りる程度の数でしかない。



 冷たい空気から逃れるために首を征服の襟の中にうずめ、鞄の中から取り出した漫画を片手に開門までの数分を潰そうとした。



その時、恐らく昨日までの自分ならけして気付かなかっただろう。俺と同じように開門を待つ生徒の中に、浜川咲の姿を見付けた。



 気付きはした。だが話しかけるかどうかはまた別の問題だ。実際、同じクラスの生徒だからと言って廊下ですれ違った際に声を掛けない生徒などいくらでもいる。



だが、昨日浜川咲が浮かべていた明らかに不満にまみれた笑顔を思い出してしまった。散々心の中を暴れ回った罪悪感が、自分でも意外な行動を起こすきっかけとなった。



「浜川さん」



 相手の肩を叩くほどの関係でもなく、さらにもしかしたら見間違えている可能性もあるという程度の間柄であることを考慮して、横から回り込み顔を確認しながら恐る恐る声を掛けた。



パッと少女の顔は俺の方を向き、浜川咲は明らかに驚いている様子であった。



 真の美人は不意の表情も美しいという柄にもない言葉が頭に浮かんできて、でも確かにその通りだと一人納得した。



「え、お、小田君!」



校門の前に集う他の数人の生徒の顔が一斉にこちらに向くほどに大きな声で浜川さんは俺の名前を呼んだ。



彼女は周囲の反応に恥ずかしそうにしながらも、今度は俺だけに聞こえるような小さな声で囁いた。



「おはよう」



 内緒話をしているような感覚になり、なぜか心がざわついた。



自分個人としては、「大丈夫。もうちゃんと君の顔と名前を覚えた」という些細な確認のつもりで声を掛けただけだった。



それ故に、相手の予想外に好意的な反応に驚き、彼女の挨拶に対し返すべき言葉が上手く出てこなかった。



何秒経っただろうか。二人の間に訪れたしばらくの沈黙がもたらした気まずさがようやく俺の口を動かした。



「お、おはよう」



 会話終了。



まあ自分の会話能力なら話しかけた時点で選択を誤っていたのだ。仕方がない。



そう割り切ろうと思った。だが相手の顔から、沈黙に耐えられないというよりもむしろもう少し会話を続けたいという欲求が見て取れた。



気付けば俺は凡庸な脳みそを必死に回転させ、なんとか言葉を喉から絞り出していた。



「今日は早いんだね」



「・・・・・・え、うん」



 会話終了。



これは明らかに振った話題が悪かった。その証拠に、浜川さんは恨みの念が込められた視線をじっとこちらに向けてきていた。



 会話下手で本当に申し訳ない。



 心のうちで謝っていると、彼女は少し拗ねたように言葉を紡いだ。



「・・・・・・私、ずっと前からこの時間に登校してるんだけど」



 浜川さんの予想外の発言に対し、「嘘!?」と驚きの声を上げなかった自分を少しだけ褒めてやりたい気持ちになった。



なんと答えるのかを頭の中で吟味して、一呼吸溜めてから返事をした。



「ずっと?」



「確か、小田君が開門前に来るようになる前から」



 俺が朝練のために開門前に学校に通うようになったのは一年生の四月の後半からである。そうすると、およそ一年間に渡り、俺と浜川さんはずっと一緒に校門が開くのを待っていたことになる。



毎朝開門前に並ぶ学生などほぼ同じ顔ぶれなのだ。何度も見かければ自然と顔を覚えるのも当然だろう。



 出てきた情報を頭の中で整理する度に、自分がいかに周囲に気を配らずに生きてきたのかがわかり、一日経って消えかけてきた罪悪感が息を吹き返して、再び俺の胸を締め付けた。開く度に罪を重ねてしまう己の口を、一生閉じてしまいたい衝動に駆られた。



「本当に気付かなかった?」



 二週間どころではなかった。その事実が予想以上に重い。



「いや、人いるなあとは思ってたんだけど、ぼんやりとね、それが誰とまでは、さあ、意識しなかったし。でも、ほら、漫画。俺漫画読む時はかなり集中しちゃうからさ。だから、その、これから毎朝ちゃんと浜川さんがいるって認識できたわけで、だから、ちゃんと声を掛けるから、うん」



 自分でも最低な言い訳だと思ったのだが、意外にも浜川さんは「ふうん」とどこか納得したような、少し得をしたような顔をした。



怒りが爆発してもおかしくない状況であったために、こうも急に彼女の反応が静かになる理由が俺には全く思いつかなかった。



「じゃあ私が小田君を見付けたら必ず声かけるから、そっちから気付いた時にも必ず声かけてね」



 なんだ。そんなことか。



 そう安堵したのも束の間、それはつまり毎朝話しかけてこいということではないか、と気付き突発的な胃痛に襲われた。



女子生徒に話しかける時に周囲の視線を気にしつつ精神力を削りながら話す男子生徒の気持ちというのは、逆の立場には存在しないものなのだろうか。それとも実は結構怒っているのではないのだろうか。



 色々考えはするも、俺に拒否権がないことは明白だった。



「・・・・・・オーケー。了解。わかりました。必ず声かけるよ」



 俺がそう言った丁度その時、守衛さんが校門の鍵を開けてくれた。



「開いたし、行こっか」



 今すぐ逃げ出したい気持ちでその場を離れたのだが、浜川さんはぴったり俺の横を歩いていた。圧迫感によって引き起こされた胃の痛みを紛らわせるために、俺は彼女にぱっと思いついた話題を振った。



「そう言えば、俺は朝練があるから早く来てるけど、浜川さんはどうして?」



「・・・・・・勉強しようと思って」



 優等生の模範解答に圧倒されながらも、「どんな教科を勉強しているの?」というあたりさわりのない話題を限界まで引き延ばしているうちに、俺達は下駄箱に着いた。



そこで上履きに履き替え、俺は更衣室に、浜川さんは恐らく教室に向かうためにお互い別の方向に体を向けた。



「また後で」



「じゃあ」



そう言い合って俺達は別れた。




     *     *     *     *     *     *





 更衣室で運動着に着替えると、俺は誰もいない、暗く静かな体育館へと足を踏み入れる。



 一人で走り、一人でドリブルし、一人でシュートを打つ。誰にも邪魔されない贅沢な環境だというのに、無心になれない俺は、いつもしょうもない考えばかりに頭の中を支配される。



 意外な遭遇のためだろう。今日の俺の頭の中にあったのは、浜川咲に関することだった。彼女が今朝言ったことが引っかかっていたのだ。



 朝の静かな教室は、果たして勉強が捗るのだろうか。



静かな環境だから集中できるとはいえばそうなのだろう。だが、あの広い教室に一人ぼっちでいる自分を想像すると、とても寂しい気持ちになった。いくら周囲に関心を払っていない人間だと言われようとも、やはり独りは寂しい。



 自分のボールの音だけが、体育館の中に響く。



実のところ、浜川さんのことを考えている振りをして、本当は一人でバスケをする自分の虚しさを噛み締めているだけなのかもしれない。



だが、嫌ならしなければいい。確かにそうなのだが、早く誰か来てくれないだろうか、とどうしても期待してしまうのが人間の性というものなのかもしれない。



 その時、ドタドタという足音が聞こえて、思わず体育館の入り口に目を向ける。



「参上!」



 高校二年生にもなっても未だに中二病が抜けきっていない、と思われかねないような、格好良さげのダサい決めポーズと共に現れた綴人の姿を見て、俺は思わず笑ってしまった。



「栄治、おっす」



「おはよう。綴人、ごめん。お前に勧められた漫画、まだ読んでないや」



 到着早々に体育館の端に腰を下ろしてバッシュを吐いていた綴人にそう声を掛けると、「別にいいよ。ゆっくり読んで」と弾んだ声の返事が返ってきた。



「いま貸してるやつを読み終えたら、他にも読んで欲しい作品があるんだよね。いま栄治が読んでるやつと同じ作者のやつ」



「へえ、いま読んでるやつが終わったら、もっかいそれを薦めてくれよ」



 会話を終えてしばらく一人でシュート練習をしていると、バッシュを履き終えた綴人がドリブルを始め、やがてシュートを打ち出した。



体育館に自分以外のボールの音が響く。それだけで、なんとも言えない嬉しい気持ちになってくる。



 結局、その日朝練にやってきた部員は俺と綴人の二人だけではあったが、一人でバスケをしていた時の寂しさなどどこへ行ったのやら、一対一で点を取り合う攻防をしたりフリースローという決まった位置からのシュートの成功率を競う対決をしたりなど、一人ではなくなったからこその楽しい時間を過ごすことができた。



 やはり独りは寂しいのではないか?




     *     *     *     *     *     *





朝練を終え、生徒であふれる教室の中に入った。



自分の席へと向かうと、平昭さんと楽しそうに言葉を交わしている浜川さんの姿が目に飛び込んできた。



自分で勝手に思い込んで、自分で勝手に納得して、そして彼女の後ろの席に腰を下ろした。



「小田君おはよう」



 今朝校門で会ったばかりだというのに、浜川さんは俺に挨拶をしてきた。どうやら、例の約束をしっかりと守るつもりらしい。



「浜川さんおはよう」



 俺が返事をした時に、視界の端に不思議そうな顔をしている平昭さんの顔が映り込んだ。



「二人って、挨拶とかする仲だっけ?」



 平昭さんの質問に対し動揺を隠しきれていない浜川さんに代わり、俺が答えた。



「うん。まあ、今朝も校門で会ったから」



「あれ? サキちんはいつも開門前に来てるよね?」



 平昭さんが浜川さんに尋ねると、彼女は「うん。そうだよ」と答えた。もちろん、それで平昭さんの疑問が解消されるわけがなく、彼女はますます不思議そうな顔をした。



 平昭さんが混乱するのも当然といえば当然なので、俺は事情を説明する。



「俺はいつも朝練のために開門前に学校に来てるんだよ」



「へえ。いつもホームルームの少し前とかに教室に入ってきてたから、そのくらいの時間に登校してるのかと思ってた」



 よく見ているとは思いはしたが、平昭さんとは既に一年間同じクラスで過ごしたということを踏まえると、周囲に意識をちゃんと向けている人間にとってはそのくらいの情報は知っていて当然のことなのかもしれない。



「そっちはいつも何時頃に学校に来てるの?」



「私は基本、八時とかそのくらいかな。でも朝来るたびにいつもサキちんが一人で勉強してるから、すごく驚いてるけど」



 八時頃に平昭さんが登校するまでずっと一人でいるということは、浜川さんはおよそ三十分間一人で勉強しているということになる。



 俺は朝練中に抱いた疑問を、浜川さんに尋ねてみることにした。



「朝の静かな教室で勉強したら、やっぱり捗るものなの?」



 すると、浜川さんは少し困ったような表情をした。



「どうだろ。私がそれほど集中力の良い方でもないからかもしれないけど、静かすぎると逆に時計の小さな音とかが気になって、あまり人にお薦めはできないかな。友達が来たらやっぱり話しちゃうし」



 俺の予想とは違っていたが、やはり集中を妨げる要因は存在しているようだ。



「それなら、家で勉強したらいいのに」



 平昭さんのもっともらしい意見に対し、浜川さんは浮かばれない顔で返答に窮していた。



 何か事情があるのかもしれない。彼女が気分良く朝勉強できる方法がないかと俺は思考を巡らせた。



「平昭さんがもっと早くに登校して、浜川さんと一緒に勉強するっていうのは?」



 俺の提案に、ぱっと浜川さんの表情が明るくなる。



「それ、すごくいい」



 一方、平昭さんは一気に疲れたような表情に変わった。



「それは厳しいかな。私、今の時間に来てるのも親に叩き起こされてるからで、本当はすごく朝に弱いんだあ」



 早起きはうんざりといわんばかりの顔に、浜川さんと俺は思わず笑っていた。



そんな他愛もない会話をしばらく続けていると授業開始のチャイムが鳴った。



 いつも通りの日常。だけど、昨日とはどこか、少しだけ違う。



そんな変化の兆しを感じ、いつの間にか気分が高揚していたのだが、次の休み時間にはすぐに微妙な気持ちに変えさせられてしまうことになった。



 授業を終え、教室の隅にいつも通り集まると、俺は明日葉、川崎、尻手の三人に取り囲まれ、一種の尋問のような質問攻めが開始された。



「おいおい、栄治! なんだか浜川と仲良くなってんじゃん」



 修学旅行の夜のように興奮している様子の明日葉が、肘で軽く小突いてきながら小さな声でそう言ってきた。



「仲良いっていうか、普通に話してるだけだけど」



「いや普通はあんなかわいい子と上手くしゃべれんぞ」



 いや、普通ではないと思うのだが。



 そんなツッコミの胸の中にしまいつつ、新しいおもちゃを見付けた子供の顔をしている明日葉やいつも通りのじゃれ合いに愉快な気持ちになっている川崎。



そんな二人とは対照的に、不安とほんの少しの攻撃的な意思を瞳に宿した尻手の様子が気になった。



「今日はたまたま話しただけだよ。女子と話すのは精神力を使うから」



 そんな言い訳をしておいたが、大した意味があるようには自分でも思えなかった。というのも、尻手の表情の理由を、すぐに想像することができたからだ。



尻手の不満の種は、俺と浜川さんが会話するという行動そのものにあるのだから。



とはいえ、尻手のことは気になりつつも、俺も浜川さんも数少ない開門待機組の生徒だ。当然、朝必ずといっていいほど彼女を見かけることになる。



そして、見かけたら必ず声を掛けるという約束を俺は破ることなどできない。



案の定、次の日の朝、俺は彼女に声を掛けた。



「おはよう」



 振り返った顔には笑みが浮かんでおり、「おはよう」という彼女の喜びの色が混じった声を聞いて、俺は反射的に自分の口元を手で押さえていた。



無意識に、自分の顔も緩んでいたのだ。



「約束、ちゃんと守ってくれるんだ」



「そりゃするよ。話しかけなかったらすぐばれるでしょ」



 少しイタズラっぽい声色で話す彼女に当然だという態度で返答すると、彼女はくすりと笑い声を漏らした。



「確かに。私が後ろ向いたらすぐわかっちゃうもんね」



「そうそう。人がたくさんいれば後ろに隠れられるんだけど」



「それでもわかると思うよ?」



「満員電車くらいたくさん人がいても?」



「そんなたくさん人来ないよ」



 明るく笑う彼女を見ていると、不思議とこちらの気分も明るくなった。



そのためだろうか、その次の日も、そのまた次の日も、校門前にいる彼女がこちらに気付くよりも先に、俺は声を掛けていた。



声を掛けたら、そのまま会話が続き、何度も話すようになる。すると会話に要する緊張感も抜けていき、やがては気楽に話せるようになる。



そういう経験が積み重なった結果、俺は特に気にすることなく、普通に教室で浜川さんに声を掛けるようになっていた。



その様子を見ていた友人達は、当然教室の隅に俺を呼び出した。



「栄治、俺は応援してるぞ」



 下品とも言えるにやけ面で言葉をかける上機嫌の明日葉。完全に傍観者として成り行きを見て楽しんでいる川崎。二人とは反対に、日に日に不機嫌になっていく尻手。



 俺が行動するのは野暮であるということはわかっていても、やはり友人として放っておけないという気持ちがあった。



放課後。俺は下駄箱で尻手がやってくるのを待ち、現れた彼に「一緒に帰ろう」と声を掛けた。



彼は特に不満を漏らすことなく、俺達は一緒に帰ることになった。



 まだ一ヶ月ほどの付き合いではあるが、俺達は既に気の置けない会話をできる程度の仲になっていた。

だがこの日、なぜか帰り道に相手にかけるべき言葉を失っていた。気まずい沈黙がしばらく続いた後、俺は何とか喉から声を絞り出して尋ねた。



「尻手は、その、もし違ってたら悪いんだけど、浜川さんのこと、好きなのか?」



 いきなり確信を突くような言い方になってしまったが、他に良い方法を俺は知らなかった。



ちらりと横目で友の様子を確認すれば、彼は苦虫を噛み潰したような顔をしていた。



「・・・・・・別に。そんなんじゃない。お前が誰と仲良くしようがお前の勝手だよ」



 本当にそうなのか、とは思ったが、いま追及すれば尻手の機嫌がさらに悪くなることは火を見るよりも明らかであったので、俺は何も言えずにいた。



しばらくして、尻手の方からぼそぼそと声が聞こえてきた。



「・・・・・・えじゃ、釣り合わないから」



 そのまま、「じゃあ」とだけ言い残して、尻手は早足で先へと進んでいった。俺は追いかけることをしなかったので、彼とはそのまま別れた。



 家に帰った後、尻手が俺の質問に対し曖昧な返答をしたことに心の底から安堵している自分に気が付いた。



自分で用意した質問だというのに、相手の返答に応じた次の自分の行動を一切考えていなかったことに呆れながら、もし尻手が「浜川咲のことが好きだ」と明言していた場合、果たして自分はどうしただろうと考えた。



 その日一日中考えたが、結局答えは何も見付からなかった。





     *     *     *     *     *     *





 自分はこれ以上、浜川さんと関わらない方がいいのではないか。



そんな不安からか眠りが浅くなってしまったのだろう。



翌朝、普段よりも早い時間に目が覚めてしまった。



二度寝してしまおうという気にもならず、いつも通りの感覚で朝の支度をした結果、当然ながら今までよりも早くに家を出ることとなった。



 まだ寝ぼけたままの頭で、このまま学校に行けば浜川さんと通う時刻がずれて運よく会わないかもしれない、という理屈の通らない考えを組み立てながら通学路を歩いていた。



すると、ぽんっと何かが俺の肩を叩いた。



何も考えずに振り返ると、頬が何かに突っかかり、肩越しに浜川さんの笑顔が見えた。



「おはよう」



 彼女の柔らかな声が脳を刺激する。



痺れる、というよりも、撫でる、という感覚の方が近いのかもしれない。



高い所から落ちる夢を見た時に感じる、あの生々しい浮遊感。



彼女の声は、まさにそんな感覚だった。かかとから背中を通り、頭のてっぺんまでを一気に、するりと。

心音が突然大きくなり、脳がようやく覚醒した。



 相手の肩を叩き、無防備に振り向いた相手の頬を人差し指で刺す。そんな彼女の仕掛けたイタズラに俺が見事に引っかかったこと。彼女は普段俺よりも早く校門前に到着しているのだから、いつもより早く家を出れば通学路で鉢合わせる可能性が上がること。そして、通学路で偶然出会っただけだというのに、自分の心臓が過去今までにないほどに高鳴っていること。



それら全てを頭で理解できたのは、そのまま二人で学校に向かい、校門が開くまで雑談をし、そして下駄箱で別れた後、体育館へと行き一人でシュートを打ち始めた時だった。



 以降、俺は以前よりも早く家を出るようになっていた。


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