第94話 更新確認
東京ダンジョン管理局・地上出口。
清掃を終えたカイ・シノハラは、
背負った掃除機の重さを少しだけ感じながら階段を上がった。
外は夕暮れ。
探索者たちが行き交い、
いつもより視線が柔らかい。
リサ・カミシロが隣で腕を組む。
「……なんか、最近空気違わない?」
「そうでしょうか」
「そうよ。
前みたいに“邪魔”とか“底辺”とか言われなくなったし」
ナカニシ・コウイチが後ろから笑う。
「せやな。
この前なんて、探索者に“お疲れさまです”言われたで。
わて、耳疑ったわ」
カイは少しだけ考えた。
「……ありがたいことですね」
そのとき、空中に淡い光が浮かんだ。
【SYSTEM LOG】
【World Repair Rate : 0.0042% → 0.0043%】
【Trend : Cleaner Reputation +】
【Note : 人間側の更新確認】
リサが目を丸くする。
「ちょっと待って。
“人間側の更新確認”って何よ」
ナカニシが首をかしげる。
「わてら、システムに評価されとるんか?」
カイはログを見つめた。
「……どうやら、
人々の認識が変わったことで、
世界の修復効率が上がったようです」
リサは呆れたように笑う。
「人の気持ちで世界が軽くなるとか、
どんな仕組みよ……」
ナカニシが肩を叩く。
「ええやん。
悪口言われるより、よっぽどマシや」
リサは少しだけ視線をそらした。
「……まあ、そうね。
あたしも、前より歩きやすいし」
カイは静かに頷いた。
「世界が少しでも良くなるなら、
それで十分です」
リサは横目でカイを見る。
「……ほんと、あんたは変わらないわね」
小さく息を吐き、
誰にも聞こえないくらいの声で続けた。
「……そういうとこ、嫌いじゃないけど……にゃん」
ナカニシが手を叩く。
「ほな、帰ろか。腹減ったわ」
三人は夕暮れの街へ歩き出した。
【SYSTEM LOG】
【Public Perception : Cleaner → Improving】
【World Repair Rate : 微増】
【Status : Good Influence Detected】
世界は今日も、ほんの少しだけ――軽くなった。




