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ダンジョン・デバッガー清掃員 〜世界の不具合を修正してたら神の領域に到達しました〜  作者: やはぎ・エリンギ


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第84話 イメージアップ企画

東京ダンジョン管理局・会議室。


壁に貼られたポスターには、大きく書かれていた。


《若手探索者 × 清掃員 共同プロジェクト始動!》

《ダンジョンを綺麗に! 未来を守る!》


明るい笑顔の若手探索者たち。

その横に、作業服姿の清掃員が小さく写っている。


……もちろん、カイ・シノハラの姿はない。


「これ……本当にやるんですか?」


若手探索者の一人が、引きつった笑顔で言った。


「“イメージアップ企画”って……聞いてた話と違うんですけど」


「俺ら、清掃員とタッグ組むって……何をすれば……?」


管理局の職員は、にこやかに答えた。


「簡単ですよ! 清掃員さんの“お手伝い”をして、

 ダンジョンの安全性をアピールするだけです!」


「お、お手伝い……?」


「はい! 清掃員さんが普段どんな仕事をしているか、

 皆さんが体験して、SNSで発信してもらいます!」


探索者たちは顔を見合わせた。


「……掃除機でゴミ吸うだけだろ?」


「余裕じゃね?」


「むしろ、楽な仕事アピールできて得じゃん」


そのとき。


会議室の扉が、静かに開いた。


作業服姿の男が入ってくる。


「……呼ばれたので来ました」


カイ・シノハラだった。


探索者たちは、軽く会釈する。


「よ、よろしくお願いします!」


「清掃のやり方、教えてください!」


カイは淡々と頷いた。


「では、現場へ行きましょう」


東京ダンジョン第九層。


通路の奥から、黒いノイズが溢れていた。


壁を這い、天井を這い、

まるで生き物のように増殖している。


探索者たちは固まった。


「……え?」


「これ……掃除……?」


「いやいやいやいや、無理だろ……!」


カイは、背中の掃除機を下ろす。


「では、始めます」


スイッチを入れる。


ゴォォォォ……!


ノイズが吸い込まれ、壁のひび割れが修復されていく。


探索者たちは震えた。


「な、なんで吸えるんだ……?」


「これ、掃除じゃなくて……戦闘じゃん……!」


「ていうか、俺ら何すれば……?」


カイは淡々と答えた。


「後ろに下がっていてください。

 危険なので」


探索者たちは、ただ見ているしかなかった。


【SYSTEM LOG】

【破損データ:削除完了】

【世界修正率:微増】


カイは掃除機を背負い直す。


「……以上です」


探索者たちは、呆然としたまま立ち尽くした。


「……これ、SNSでどう発信すれば……?」


「“清掃員すげぇ”しか言えない……」


「イメージアップって……誰の……?」


管理局の職員は、満面の笑みで言った。


「皆さんの“協力”のおかげで、

 素晴らしい映像が撮れました!」


探索者たちは、力なく笑った。


「……俺ら、何もしてないんですけど」


「大丈夫です! 編集で“頑張ってる風”にしますから!」


カイは静かに通路を歩き出した。


「次の現場……行きますか」


探索者たちは、その背中を見送るしかなかった。


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