第78話 適性検査
東京ダンジョン管理局。
清掃員試験会場。
机の前に若い男が立っていた。
「志望理由を」
試験官が言う。
男は答える。
「昔、清掃員に助けられました」
「だから、自分もなりたいんです」
名前。
タカハシ・ユウ。
数年前。
ダンジョン事故で倒れていた少年だった。
その時、モンスターを処理し、床を清掃していたのがカイ・シノハラだった。
男は覚えている。
血の匂い。
静かに床を拭く清掃員。
命を救われた。
だからここに来た。
試験が始まる。
第一試験。
清掃技能。
モップ操作。
薬品配合。
残骸処理。
結果。
【SYSTEM LOG】
【Skill Test : PASS】
試験官が次の端末を開く。
「第二試験」
「適性検査」
画面に表示される。
掃除愛測定
男は戸惑う。
「掃除愛?」
試験官。
「清掃員には必要です」
質問が並ぶ。
・汚れを見てどう思うか
・掃除をしていない場所を見るとどう感じるか
・誰も見ていなくても掃除するか
男は答える。
だが結果が出た。
【SYSTEM LOG】
【Cleaner Aptitude : FAILED】
男が驚く。
「え?」
試験官が言う。
「掃除愛が不足しています」
「志望理由は理解できます」
「ですが」
「あなたは人を救いたいのでしょう」
「掃除が好きではない」
男は黙る。
その頃。
ダンジョン中層。
カイは床を拭いていた。
リサ・カミシロが端末を見る。
「面白いの来てる」
「昔助けた子が清掃員試験受けたって」
ナカニシ・コウイチが笑う。
「お前の弟子やん」
結果が届く。
不合格。
リサ。
「掃除愛不足」
ナカニシ。
「厳しいな」
カイはモップを動かす。
「清掃員は」
「掃除が好きな人が向いています」
床の血痕を拭き取る。
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Continue】
試験会場の外。
男は立っていた。
そして静かに言う。
「……探索者になります」
ダンジョンには、
色々な仕事がある。
清掃は、
その一つだった。




