第77話 落し物
東京ダンジョン下層。
カイ・シノハラは床を拭いていた。
モンスターの残骸。
破損した装備。
血痕。
いつもの清掃作業。
モップを動かした時だった。
紙が一枚、床に張り付いていた。
カイはそれを拾う。
小さなメモだった。
子どもの字。
「せいそういんになりたい」
リサ・カミシロが覗く。
「何それ」
カイ。
「落し物です」
メモの裏。
ギルド見学用の入場スタンプ。
ナカニシ・コウイチが言う。
「見学のガキやな」
「昨日、学校来とったで」
東京ダンジョンでは定期的に見学会が行われている。
探索者の人気は高い。
子どもたちは剣や魔法に憧れる。
だがこのメモには違うことが書かれていた。
「せいそういんになりたい」
リサ。
「珍しい子ね」
ナカニシ。
「普通は探索者やろ」
カイはメモを見る。
【SYSTEM LOG】
【Item Scan : Personal Note】
紙には泥が付いていた。
ダンジョンの床。
探索者が通った跡。
清掃員が通った跡。
すべて混ざっている。
カイはポケットに入れる。
「受付に届けます」
ナカニシ。
「本人喜ぶやろな」
リサは言う。
「変わった子」
カイはモップを持ち直す。
「落し物は返すべきです」
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Continue】
ダンジョンの床はまだ汚れている。
清掃作業は続く。




