第76話 小さなノイズ
夜のニュース番組。
人気キャスターが笑顔で話していた。
「ダンジョンの清掃員という職業ですが」
「正直、ただの後始末ですよね」
スタジオが軽く笑う。
「探索者の活躍がなければ存在しない仕事です」
その瞬間。
画面が一瞬だけ歪んだ。
ザッ。
視聴者は首を傾げる。
放送はそのまま続く。
「危険と言われていますが、掃除ですよ?」
再び。
ザッ。
映像に小さなノイズ。
音声が一瞬だけ飛ぶ。
SNS。
「今の見た?」
「テレビ壊れてる?」
「さっきから画面おかしい」
スタジオでは誰も気づいていない。
キャスターは続ける。
「清掃員がいなくても」
「探索者がいれば十分です」
ザッ。
画面に黒い線。
【SYSTEM LOG】
【Broadcast Signal : Minor Corruption】
東京ダンジョン管理局。
リサ・カミシロがモニターを見る。
「この番組だけ?」
ナカニシ・コウイチが肩をすくめる。
「他の局は正常やな」
カイ・シノハラは端末を見る。
【SYSTEM LOG】
【Signal Layer : Micro Bug】
「放送信号に微小なバグが発生しています」
リサ。
「原因は?」
カイ。
「……不明です」
番組は続く。
キャスターが言う。
「清掃員の仕事は――」
ザザッ。
顔が一瞬だけ崩れる。
視聴者コメント。
「またノイズ」
「この人の番組だけ変」
ナカニシが笑う。
「嫌われとるんちゃうか」
リサ。
「バグに?」
カイはモニターを見る。
【SYSTEM LOG】
【Reputation Data : Distortion】
「言葉のログが蓄積しています」
「差別発言が、信号層に干渉しています」
ナカニシ。
「言葉のゴミやな」
カイは掃除機を起動する。
放送データ層。
ノイズログを吸い込む。
ゴォォォ……。
【SYSTEM LOG】
【Signal Cleaned】
次の瞬間。
番組は正常に戻った。
キャスターが言う。
「……あれ?」
リサ。
「直したの?」
カイ。
「清掃しました」
ナカニシが笑う。
「テレビも掃除いるんやな」
カイは掃除機を背負う。
【SYSTEM LOG】
【Cleaning Complete】
次の日。
その番組の視聴率は、
少しだけ下がっていた。




