残虐な拷問
「……ん……ここは……」
ソーラが目覚めたとき、そこには見慣れぬ建物が周りにあった。
おそらくだがこの周辺にある人間の村だろう。知ってはいたが、マリーに近づくことを禁止されていたがためによくは知らなかった。
体はきつく紐で縛られ、身動きは取れず地面に這いつくばる格好だ。
何者かに矢で刺されたと思ったらいつの間にか気を失い、この状況である。
一緒にいたはずのロッサは見当たらない。どうにか逃げられたと願うしかない。
状況を把握しつつある時、近くに人がいるのを感じた。
「やっと目覚めたか」
顔がよく見えないが男性の声と言うのがわかる。おそらくこの人物が自分達を襲ったやつだ。
「おめーが……私たちを襲ったでやがりますか」
「そうだとも」
男は低い声で言った。
ソーラはその姿を睨み付けるように叫んだ。
「てめーの目的はなんでやがりますか! なぜ私たちが魔女だと分かったでやがりますか!」
「黙れ」
「ぐッ」
突然頭を足で踏みつけられた。
顔が地面に強く擦りつけられる。
そのせいで口に砂が入ってきて不愉快だ。
相手が踏みつけるのをやめ足を頭から話すと口の中の砂を吐き出した。
「俺はただお前たち魔女を処刑したいだけだ。たとえお前が魔女じゃなくても、この村の人間でない女はみんな殺せばいいと思ってたしな」
つまりこの男は自分達が魔女じゃなくても女であれば殺すつもりだったと言うことか。
昔ならともかく、今そんな事が許されるはずがない。
魔女狩りが推薦されてるとはいえ、魔女だと確かめる方法はいくらかある。
なのにそれを確かめようとせず、無差別に女性を殺害するなど知れればこの男も無事ではないはずだ。
とはいえソーラは自ら自分が魔女だと告白してしまったし、実際に魔女であるがために関係のない話ではある。
「安心しろ。お前の後にすぐ仲間たちも同じ目に遭う」
ソーラは目の色を変えた。
ロッサがいないということは、わざと逃がした上で、それで自分を助けに来た仲間も殺すというつもりなのか。
だがしかしそれは難しい話である。
「てめーみたいなやつにマリーさまは負けねーです! マリーさまが来ればてめーなんてすぐにやられます!」
そう、マリーが来ればこんなやつ一瞬で蹴散らしてくれる。いやマリーでなくてもそんなの容易いことだ。
「だから黙れと言ってるだろッ!」
「ぐぁッ!」
男は怒鳴り、ソーラの脇腹に強く蹴りを入れる。骨が折れても可笑しくないほどの痛みが伝わってくる。
「さて、そろそろ処刑といこうか」
男はその時を待ちわびていたように、嬉々として言った。
マリーたちが来る前に自分は殺されるのだろうか。
もしかしたら見捨てられたかもしれない。でもその方がいいとも思えた。
そうすれば自分だけで被害は済む誰も苦しまなくてすむと。
「火炙りにするなら、さっさとしやがれです」
もはや半分諦めた感じに彼女は言った。
「火炙り……? ふっ……ぶははははっ!」
突然男は笑いだした。不気味だ。なにがおかしいというのだろうか。
「そんな単純なやり方で死ねるとでも思ってるのか? 残念ながらそんな簡単に殺しはしねーぜ。お前にはたっぷり苦痛を味わわせて死んでもらう」
「なにをしやがるつもりですか……」
すると男は長いなにかを手に持っていた。火刑でなく長いものを持っている。
あれはおそらく鞭だ。
「こうするんだよ!」
男は鞭をソーラの背中に叩きつけた。
「があッ……!」
背中に苦痛が走る。先程の蹴りとは比べものにならない痛みがソーラのからだ全体に染み渡った。
たった一回叩きつけられただけで服は破れ皮膚を引きちぎりる。そこから血が溢れ出ていく。
それが一回きりではない。何度も何度も、立て続けに鞭を叩きつけられていく。
「ほら、どうだ! 痛いだろ? もっと泣き叫べ!」
男は容赦せず嬉しそうにソーラの体全体を鞭で叩いていく。
こんなの人間がする事ではない。
この男はまるで、悪魔にでも取りつかれているかように残虐的だ。
「……っ……マリー……さま」
思わずソーラの目からは涙が溢れ出ていく。
それは苦痛からではない。
もうマリーの側にいることが出来ない悲しさに満ちていたのだ。
彼女がいたから今の自分がいて、彼女のために自分は生きている。
でも、もうそれは出来ないのだろう。
自分はこのまま男の思うがままに痛め付けられて死ぬ。
この状況を一人で抜け出す事はできない。
体は傷だらけで出血がひどい。背中の感覚自体が無くなっていき、意識が薄れていく。
もう言葉を口にする気力もなかった。
「もう悲鳴も上げる事もできなくなったか……だがその体が引き裂かれるまで何度でも何度でも叩きつけてやる!」
もう男の声も聞き取りにくくなってきた。死期が迫っている感じがした。
「おい」
その時、一つの声がした。
これは男の声ではない。
今ソーラにとって一番、聞きたい声だ。
はじめは幻聴かと思った。
だが目の前を見るとそれは真実だと言うのに気づいた。
今の自分にとって一番大切な人、感謝してもしきれない人。
その彼女が目の前にいた。
「オレの弟子に…………手えだしてんじゃあねえええぇぇぇッ!」




