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固有魔術とそれから……

 翌日の朝、昨日と同じようにマリーによる授業を受ける。

 

「ソーラとロッサ以外全員いるな? 今日も授業をはじめるぞ」

 

 マリーは周りを確認して言った。

 ソーラともう一人の弟子は狩りに出ているらしい。

 

 この空間では畑などを育てることはできるが肉や魚はない。

 近くの村にいくのも、魔女だと怪しまれる恐れがあった。

 その代わり、この空間を作っていた森には動物が多く生息し、川に魚もたくさんいた。

 その為、時々当番制で動物や魚をとっているんだとか。

 

「今日は黒魔術の種類についてのおさらいだ。黒魔術には基本属性として火水風土闇光とある。それらを使った、基本的な魔術が初級魔術だ」

 

 マリーは説明をしていく。

 初級魔術は昨日も言った通り、威力が弱く戦闘などではあまり役に立たない。

 だが発動は簡単だし、火を付けたいときや涼みたいときなど、日常生活には便利だったりした。

 

「また魔術を応用して水を氷にしたり、剣に火を宿したりも出来る。それが応用魔術。応用魔術は様々な組み合わせをすることで、独自の魔術にもなりえる」

 

 応用魔術には簡単なものから上級魔術に近いものまで幅が広い。

 アイリスも水を氷に変えるなど比較的簡単な魔術なら使えることができた。

 

「次に上級魔術。基本は初級魔術の強化版ってところだな。あたりめーだが、初級魔術より威力が比べもんにならねぇくらい強い。その分、魔力の消費と発動に時間がかかるがな」

 

 アイリスがどうしても使うことが出来ない上級魔術。習得するのが難しいのはもちろんだが、それを覚えるということは魔女たちの目標の一つでもあった。

 

「で、最後にもう一つ……これはある意味一番重要と言ってもいい魔術がある。おまえは分かるか?」

「たしか、固有魔術……ですよね?」

「ま、正解だ。固有魔術、その名の通り、唯一そいつだけが使える魔術ってことだ」

 

 アイリスは少し自信がなく言ったが、どうやら当たってたらしい。

 

「これは努力の成果だったり、生まれつきの体質だったり、突然手に入ったりする能力だ。固有ってのもあって単なる上級魔術と違い、特殊な能力が多かったりする」

「わたしの魔眼がいい例ねぇ。どっちかっていうと、固有能力って感じもするけど」

 

 マリーが説明している途中でライアが口を挟む。

 

「そう、こいつみたいに体質的なものが固有魔術となる場合もある。ちなみに接触型が発動の分類にされるようになったのも、それを使う固有魔術能力者が増えたからだな」

 

 言われてみれば確かに、ライアの魔眼の能力は特別だ。

 

 視界の範囲ならば一瞬で魔術を発動でき、自由自在に具現化出来る最強の能力。

 ライアがどうやってこの魔眼の能力を手に入れたかアイリスは分からない。

 だが少なくとも彼女以外にこの能力、魔術を扱える者はいないだろう。それが固有魔術だ。

 

「あの、マリーさんも固有魔術を持ってるんですか?」

 

 ふとアイリスは気になったことを聞いてみることにする。

 やはり大魔女と言うならば、マリーも固有魔術を持ってるのだろうか。

 

「もちろん大魔女は全員固有魔術は持ってるよ。マリーは一番、固有魔術習得するの遅かったけどねぇ」

「うっせ! だが固有魔術は固有魔術だ。てめぇのパクリ眼でもオレの固有魔術は使えねぇだろ」

「そりゃね。あんなの分析できないし、触ったら人たまりもないっての」

「そんなに凄いんですか?」

「当然だ、オレが黒魔術最強の魔女と呼ばれる由縁でも……」

 

 会話の途中で突然ドアを開かれ、それを見たマリーは言葉を失う。

 

 そこには茶髪の少女が右腕から血を流し、足を引きずるように現れた。

 

「その傷はっ……どうしたんだロッサ!」

 

 現れた少女はソーラと一緒に狩りに出掛けたはずの弟子の一人だった。

 彼女がこんな姿だというのにソーラの姿は見当たらない。

 そして彼女は深刻そうな顔でこう言った。

 

「マリーさまっ……! 大変です……ソーラが魔女狩りに……あいました」

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