援軍来たる!
「ぎゃーーーっ! 目が! 目がぁぁぁ!」
「い、家康さま! 大丈夫ですか? う、うわぁぁぁ! 目がつぶれる~!」
家康くんと四天王たち、そして光秀ちゃんも、突然天から降りそそいできたレモン汁のシャワーにもがき苦しんでいる。私はとっさの判断でぎゅっと目をつぶり、信長くんの目も手でおおってガードした。偉人学園でこんなことをやるのはあの子しかいない!
「清少納言先輩! お待たせしやした! 天才発明家・平賀源内、ただいま参上!」
レモン汁の雨がやみ、私と信長くんが空を見あげると、気球が真上でぷかぷか浮いていた。源内くん、和泉式部ちゃん、夏目漱石くん、杉田玄白くんたちが気球から顔をのぞかせて私に手をふっている。昨日、破壊されたはずの『ウキウキ飛べる君』を源内くんはもう修理したんだ。さすがは天才発明家!
「どうだ、オモチャのウォーターガンを改良した目つぶしバズーカの威力は! 一発でバケツ一杯ぶんのレモン汁をぶっぱなすことができるんだぜ! しかも、レモン汁には唐辛子をたっぷりまぜているから、効果は十倍だ!」
「お、おのれ! ロボットたちよ、弓矢の準備をしろ。あいつらを射落とせ!」
家康くんが激怒してそう命令すると、ロボットの兵士たちは弓矢をかまえた。ロボットたちはレモン汁をあびても機械だから平気なのだ。
「そうはさせるか! 気球アターーーック!」
源内くんたちは気球から飛びおり、パラシュートを開いた。その直後、『ウキウキ飛べる君』のカゴについていたジェット噴射機によって気球はものすごいいきおいで急降下、ロボットの兵士たちめがけて落ちてきた。
「ウ、ウワーーー! ツ、ツブサレル~!」
どっかーーーん!
砂煙が舞い、周囲は視界がひどく悪くなった。そんな時、私と信長くんの手をだれかが引っ張った。「こっちよ」という声で和泉式部ちゃんだとわかった。
「助けに来てくれてありがとう。わたしが監禁されている場所、よく分かったね」
私は和泉式部ちゃんにお礼を言った。……でも、香子の姿がない。昨日、あれだけひどいことをしたのだ。とうとう愛想をつかされてしまったんだ……。
「ヒミコさまの占いのおかげよ。副学園長が光秀になぎこちゃんを誘拐するように命令したことも分かっちゃった」
やっぱり、副学園長が黒幕だったのね。玄白くんの言う通り、署名活動を失敗させる気なんだわ。許せない! ……あれ? 私の本名を和泉式部ちゃんがなぜ知っているの? 不思議に思ったけれど、今はそんなことを聞いている余裕はなかった。
「けほ、けほ! くそ、口に砂が入った。や、やつらを逃がすな!」
家康くんと四天王たちはまだ目が見えなくて動けない。ロボットの槍隊たちが「ウオー!」とさけびながら、逃げる私たちを追いかけてくる。
「ここは僕に任せてください!」
漱石くんはそう言うと、「ピーーー!」と指笛を吹いた。すると、どこからともなく、猫の泣き声がニャーニャーニャーと聞こえてきた。
「ナ、ナンダ? 猫ノ大群ガヤッテ来ルゾ⁉」
百匹以上はいる猫たちは、「うにゃーーーっ‼」といっせいにロボット兵士たちに飛びかかり、ロボットたちはパニックにおちいった。
明治時代の文豪・夏目漱石が初めて発表した小説『吾輩は猫である』の主人公の猫は、漱石が飼っていた猫がモデルだ。二代目の漱石くんは『僕たちは猫の大家族である』という小説を書くため、偉人学園中の猫たち(学園は小さな町と同じくらいの大きさだからたくさんの猫たちが住んでいる)をエサで手なずけていて、猫の観察を毎日やっている。だから、漱石くんが呼んだらどんな場所にいても猫たちはすぐにかけつけるのだ。
「ロボットたち、何をやっている! 鉄砲隊、うて!」
「家康サマ、ダメデス。レモン汁ノセイデ火ガツキマセン」
火縄銃はぬれてしまうと使えなくなる。さっきのレモン汁の雨でびしょびしょになり、鉄砲をうつことができなくなっていたのだ。
「敵がパニックになっている間に、食堂に逃げこむんだ! あそこなら、織田軍の武器がたくさんある! 食堂にたてこもって迎えうつぞ!」
「でも、信長くん。この人数ではあっという間にやられちゃうわよ。あいつら、二百体ものロボットを手下にしているんだから」
「大丈夫よ。もうすぐ、学園中から援軍がかけつける予定だから。香子ちゃんの学園放送のスピーチが成功したらの話だけれどね」
和泉式部ちゃんの口から「香子」と聞いて、私は「え⁉」とさけんだ。「名乗りの儀式」をしていないのに、和泉式部ちゃんはなぜ私の本名を知っているの? なぜ香子の本名を知っているの? そして、香子の学園放送のスピーチって何? 学園全体に放送を流すには学園本館の放送室を使う必要がある。でも、副学園長の許可がなかったら使用できないはずだ。私が、わけがわからずに困惑した顔をしていると、和泉式部ちゃんはウフフと笑い、
「香子ちゃんはね、武蔵くん、一葉ちゃんといっしょに学園本館へなぐりこみ中よ」
そう言うのであった。……あの大人しい香子が、な、なぐりこみぃ⁉
もと子(和泉式部)
「次の投稿予定は18時! 年越しの準備でみんな忙しいかもだけれど、いよいよクライマックスだから、みんな読んでね!」




