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ハーレム,俺の義妹が天才漫画家だった件  作者: 下級生


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84/111

第84話 お兄ちゃん?

ありがとうございます! 今日、なんと1万PVを突破しました!


こちらは1万PV突破記念の追加更新です!


いつも読んでくださって、本当にありがとうございます!

鳳凰院沙織と食事を終えたあと、2人は店の前で別れた。


 涼介が家に戻った頃には、もう10時近くになっていた。


 両親はすでに寝ている。


 ただ、物音を聞きつけた凌乃だけは、自室のドアをわずかに開け、隙間から顔を覗かせていた。


 その表情には、どこか不満が浮かんでいる。


 何よ、こいつ。


 最近いつもこんな遅くまで出歩いてるじゃない。


 好き勝手しすぎじゃない?


 お父さんも、どうして涼介には何も言わないのよ。


 このままいったら、そのうち朝帰りまでしそう。


「帰るの遅すぎ! あの女巨人と遊び歩いてたの?」


 さすがに一言くらい言っておくべきだろう。


 凌乃はそう考えていた。


「まあ、一緒に飯を食べてきただけだよ」


 涼介は軽く答えたあと、逆に尋ねる。


「それより、今日は楽しかった?」


 その一言を聞いた途端、凌乃の仏頂面がわずかに崩れた。


 本人としては認めたくないが、今日M展へ行けたのは本当によかった。


 松井菜菜子のステージは期待を裏切らない素晴らしさだった。


 『月魔女変身』の衣装を身につけ、あの声で演じる姿は、まさに自分が描いたキャラクターが現実へ飛び出してきたようだった。


 完全に見惚れてしまった。


 最高だった。


 あの少し恥じらいを残しながらも、どこか艶っぽい衣装もたまらない。


 思い出すだけで、いろいろと妄想が膨らみそうになる。


「ふん。まあまあだったんじゃない?」


 それでも涼介の前では素直になれず、凌乃はそっぽを向いた。


 けれど、口元の緩みまでは隠しきれていない。


 そんなに楽しかったのか。


 だったら、わざわざ今日に合わせてサイン会を開いた甲斐もあったな。


 涼介は笑ったものの、何も言わず自室へ戻ろうとした。


「ねえ」


 背後から、小さな声が飛んでくる。


「まだ何かある?」


「別に……」


 凌乃は妙にもじもじしていた。


「今日は、その……ありがと……」


 そして。


「……お兄ちゃん」


 夜の静まり返った廊下でなければ、聞き逃していたかもしれない。


 それほど小さな声だった。


「!」


 涼介が勢いよく振り返る。


 しかし、そこにはもう固く閉ざされた凌乃の部屋のドアしかなかった。


 再婚して家族になってから、これだけ長く一緒に暮らしてきた。


 それでも。


 凌乃が正式に自分を「お兄ちゃん」と呼んだのは、これが初めてだった。


「……これがプレゼントってことか?」


 涼介はしばらくその場に立ち尽くしたあと、思わず笑ってしまった。


 そして自分の部屋へ戻っていく。


 数分後。


 凌乃の部屋のドアが、再びほんの少しだけ開いた。


 暗く静かな廊下では、自分の心臓の音まで聞こえてしまいそうだった。


「私……何言ってるのよ……」


「よりによって、あいつをお兄ちゃんって……恥ずかしすぎる……」


 ……


 M展2日目。


 涼介は朝早く起き、凌乃と一緒に電車へ乗った。


 2人そろって出かけるのは、これが初めてだった。


 両親はまだ起きていなかったため、リビングのテーブルに置き手紙だけ残してある。


 道中、凌乃は明らかに寝不足だった。


 電車の座席に座るや否や、いつの間にか眠り込み、そのまま隣にいる涼介の肩へ頭を預けてしまう。


「まったく。昨日あれだけ疲れてたのに、早く寝ればいいものを」


 どうせM展で1日中遊び回ったあと、夜更かしでもしていたのだろう。


 涼介は動かず、そのまま肩を貸してやった。


 やがて降車駅が近づいたところで、ようやく凌乃を起こす。


「……私、寝てた?」


 凌乃はまだぼんやりした様子で目をこすった。


「見れば分かるだろ。しかも、いびきまでかいてたぞ」


 涼介はつい、からかってしまう。


「そんなわけないでしょ! いくら寝ぼけてても、そこまでしないわよ!」


 凌乃の頬が一気に赤く染まった。


 ここは公共の場なのだ。


 しかしすぐに涼介の笑みへ気づき、自分がからかわれただけだと悟る。


 鋭い目で睨みつけた。


「やっぱりあんた、ほんっと嫌い!」


 怒ったように吐き捨て、そのまま先に電車を降りていく。


「何よ、あのムカつく奴……」


「そもそも昨日、あんなこと言わせるから、恥ずかしくて夜中まで眠れなかったんじゃない……!」


 ぶつぶつ文句を言いながら歩いていた凌乃は、ふと後ろを振り返った。


 涼介は少し離れたところを、のんびり歩いている。


 その姿を見た途端、また不満そうに眉を寄せた。


「何ちんたら歩いてるの! 早く来なさいよ!」


 ……


 2人が会場へ到着した頃には、鳳凰院沙織がすでに新しく届いたゲームソフトを整理していた。


 今日は五更真緒がアルバイトのため来られない。


 とはいえ涼介がいるので、3人もいれば十分に回せる。


「おはよう、時雨沢。それと妹ちゃんも」


 凤凰院が軽く手を上げた。


 凌乃は、彼女が今日は昨日のアルトリア柄の上着を着ていないことに気づく。


 代わりに背中へ描かれているのは、別の英霊――メディアだった。


「はい、これは時雨沢の分。サークルスタッフ用の制服よ」


 鳳凰院沙織が、新品の上着を涼介へ放り投げる。


 背中に描かれていたのは男性キャラクターだった。


 メディアのマスターであり、作中で彼女と対になる存在――葛木宗一郎。


 その瞬間。


 高城凌乃が、あからさまに不機嫌な視線を凤凰院へ向けた。


 こいつ。


 涼介と結婚したいなんて言ってたけど、やっぱりただの冗談じゃないんじゃない?


 昨日のアルトリアは偶然だとしても。


 今日これは、絶対わざとでしょ!


 対する涼介は何も気にしていなかった。


 昨夜、凤凰院の結婚話が冗談だと確認したばかりだ。


 何の抵抗もなく、そのまま上着を羽織る。


 普通に着るの!?


 軽すぎない?


 この組み合わせに気づいてないわけ!?


「どうした?」


 妹が明らかに不機嫌そうなので、涼介が首を傾げた。


「別に!」


 凌乃は盛大に鼻を鳴らした。


 急に、自分が着ている衛宮士郎の上着まで気に入らなくなってきた。


 そのまま黙って、売り場の準備を手伝い始める。


 俺、何かしたか?


 涼介にはさっぱり分からなかった。


 その一連の様子を見ていた鳳凰院沙織の口元が、わずかに持ち上がる。


 今日は私の勝ちね。


 ……


 M展2日目が開場すると、売り場の前にはすぐに長蛇の列ができた。


 昨日、到着が遅れて買い逃した客も大量に混じっている。


 それがさらに人を呼んだ。


 1時間もしないうちに、またもや完売の札を掲げることになる。


 周囲のサークルからは羨望の視線が集まり、中にはわざわざ礼を言いに来る人までいた。


 これだけ大きな客の流れが近くまで来れば、その一部は自然と周辺のスペースにも流れていく。


 たとえ作品の知名度が低くても、ついでに見ていく客が増え、売上にもかなりの恩恵があったのだ。


 残った段ボールを片づけ、弁当を食べ終えた頃。


 M展2日目は、ようやく午後の部へ入ったばかりだった。


「今日は私、もう残らないわ。山崎おじさんの店に寄らなきゃいけないから。時雨沢たちはどうするの?」


 鳳凰院沙織はバッグを肩に掛け、帰る準備を始めた。


「しばらく残ってM展を見て回るかな。帰っても特にやることないし」


 涼介は隣の凌乃を見る。


 当の本人はすでに別のスペースへ視線を飛ばし、今にも駆け出しそうだった。


「そう。じゃあ、また明日ね」


 鳳凰院沙織は、わざわざ凌乃へ向かって片目をつぶってみせた。


 凌乃はなぜか後ろめたそうに視線を逸らす。


 本当に苦手。


 この女巨人と向き合うと、毎回天敵に遭遇したみたいな気分になる。


 纱织と別れたあと、涼介は妹について各スペースを回った。


 時折、目を引く作品を見つければ、何冊か購入する。


 しばらく歩いていると、人の流れが意図的にB区のホールへ集まり始めていることに気づいた。


「何かあるのか?」


 涼介が尋ねる。


「有名人でも来てるんじゃない?」


 凌乃はそう答えたあと、何かを思い出したように目を見開く。


「あ、そうだ。今日も『月魔女変身』関連のステージがあるって告知に書いてあった気がする。どこかのアイドルグループが出るとか」


「見に行く?」


「もちろん。でも本番は1時間後だから、もう少ししてからでいいわ」


 昨日ほどの期待はない。


 名前もほとんど聞いたことのないアイドルグループだからだ。


 ……


 その頃。


 B区ステージ裏の控室では、朝倉未来が落ち着かない様子で何度も外を確認していた。


 伊東慎平はメンバーを控室へ連れてきたあと、舞台照明や音源の最終確認へ向かっている。


 戻ってくるまで、少なくとも30分以上はかかるはずだ。


 今、部屋に残っているのはDream Chaserのメンバー3人だけだった。


「静香ちゃん、大胆すぎない? 本番前なのにこっそり抜け出すなんて……」


「でも、ちょっとロマンチックじゃない? 好きな人に会うために抜け出すとか」


「変なこと言わないの。静香は恩人にお礼を言いに行っただけでしょ。デビューしたばかりで恋愛なんて、事務所が許すわけないじゃない」


「ふふっ。でも普段のリーダーって、ずっと気を張ってるし。たまには少しくらい羽を伸ばしてもいいんじゃない?」


「伊東さんにバレなければね」


「うまくいくといいけど……30分。それ以上かかったら絶対にバレるよ」


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