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当主不在

 父さんがポーキン伯爵家と話をしている間に、手紙が一通届いた。


「あ! これ……ルマーレ辺境伯家のサインよ!」

「ルマーレってことは……フィーア様か!」


 封蝋を剥がして開けて、母さんと一緒に手紙を読んだ。時候の挨拶が3行ほど続いた。


『──来月、我が城にて行うフィーアの誕生日パーティーに、ラウルス夫人とご子息のエルク君を招待したい』


 そういった旨の手紙だった。当主不在なのが痛い。でも、そもそも名指しされてるのに招待されてないし、行く必要はないか。


「凄い! 辺境伯家のパーティーに呼ばれるなんて、滅多にないことよ!」

「ルマーレ辺境伯領は、ここから2日くらいですよね。すぐに手紙の返事を書きます。封蝋はありますか」

「ええ。でも手紙はお母さんに任せてちょうだい」

「はい、お願いします。封蝋って何処ですか」

「1階の物置よ。右から2番目の棚」

「分かりました、持ってきます」


 封蝋をすぐに見つけて母さんに渡した後、俺はグラーフと共に書類整理を始めた。

 

「エルク坊っちゃん、今月の収支表が完成しました」

「ありがとう! 見せて」


 中を見ると、やはり農作物の需要も大きいのだが、酒や宝石の売買、それと貿易による利益もかなり多い。税収と合わせれば、抜けた8000万の穴埋めは、時間さえ掛ければ可能だ。


「これで、少しずつ問題の規模が分かってきたね」

「はい。……旦那様は、限界だったようですね」


 今回の最大の問題が見えてきた。

 父さんが8000万を、領民や私兵に還元する予算から出してしまったことだ。剰余金から、適当に金を引っ張ってしまったのだろう。

 ここを削ってしまうと、万が一魔物や山賊が襲撃してきた時に、防衛費に回す分がなくなってしまう。剰余金は、お釣りとは違うのだ。

 冬までに8000万を回収しないと、今年は何の山賊対策もなく、春を待つことになる。冒険者を雇って、山を巡回してもらうことすら、やってもらえないだろう。

 この金には、領民達の命がかかっている。


「思ってたより、危ないね」

「剰余金を、丸ごと持って行かれましたからね……」

「坊っちゃん、旦那様と共に交渉に行った方が良いかも知れません」


 確かに、俺もポーキン伯爵との交渉に参加したい。でも、現状それは叶わない。


「来月、ルマーレ辺境伯がご令嬢の誕生日パーティーを行う。それに俺と母さんが呼ばれたんだ。……ポーキン伯爵の元には、いけない」


 困った。せめて父さんのアシストをしたいんだけど……。


「ポーキン伯爵家に向かった旦那様は、すぐには帰ってこられないでしょうから、パーティーの後に向かえば合流できると思いますよ」

「そうなの? ポーキン伯爵領まで、ここからどれくらいだっけ? そんな遠くなかったよね」

「はい。片道1日かからない程度です」


 ……現代基準だと遠いけど、ここから首都まで7日も掛かることを考えると、耐えられないほどの距離ではない。

 現代の移動手段が速すぎるんだよな。

 あーあ、新幹線が欲しいなー。




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