表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/11

スキル鑑定の儀式

見に来てくださり、ありがとうございます。

 数日後、スキル鑑定の儀式に参加することになった。薬学や錬金術といった、勉強によって習得できるものではなく、個人に与えられた才能だ。

 言ってしまえば、これは「適性検査」や「適職鑑定」と言い換えてもいい。

 このスキル1つで、俺に何が向いているのかが決まる。


「……営業だったらどうしよう」


 嫌だなぁ……。異世界でも「お世話になります、私、エルク・ラウルスという者です」って言いながら名刺渡すの。……想像したくねぇー!

 クレーム対応とか営業ノルマとか契約書とか、そういうのが異世界まで付きまとってくるんだ。

 やだよぉー! おじさんもう営業したくないよぉー! 契約段階で揉めて全部おじゃんになるのも、取引先に難癖つけられて、上司に詰められるのもヤダヤダヤダヤダ! 営業だけはいーやーだー!

 ……きっつ。

 おじさんが駄々っ子になっても、キモいだけだな。


「楽しみね、エルク」


 母さんがそう言って、俺の頭を撫でた。……全然楽しみじゃないです! 助けてください!


 大聖堂と呼ぶに相応しい教会に、多くの子供達が集まっていた。俺もあの中に並ぶのか。

 手鏡と櫛で髪を整え、襟元を正してから列に並んだ。


「エルクのスキル、どんなものになるんだろうな」


 父さんが呟く。


「きっと、優しいスキルよ」

「いやいや、男気あふれる騎士道スキルかもしれないぞ」

「やーねぇ、この子には戦いなんてさせたくないわ」

「男なら、剣を持ってナンボだろうに」


 ちょっとだけ言い争う両親。……本当に、本当に営業だけは勘弁してください! どうか神様お願いします! 営業以外で! それ以外なら何でもいいです! 料理とか掃除とかでもいい。何なら無職でも構わない。だから営業だけは、営業だけは……!


「そうそう、今年からスキル鑑定の他に、ジョブの神託も行われるそうだ」


 信託? いや、神託か……。信託は課長が一人で大損ぶっこいたやつね。災害で投資先が倒産して、700万くらいすっ飛んだらしい。ヒエーッ。

 今世は商売と関係ない仕事がしたいと祈りながら、列に並んだ。


「おいお前!」


 不意に声を掛けられた。金髪でまん丸なお腹の、馬鹿っぽい5歳児がいた。


「お前、僕より前に並ぶな!」

「はい、どうぞ」

「フンッ、素直じゃないか」


 流石に5歳の子と喧嘩なんてしないよ。どうせ鑑定の儀をする訳だし、お茶会があるから、終わり次第帰れる訳でもない。ここでの並び順に、大した意味はないのだ。


「お前、男爵家だろ」

「はい。私はエルク・ラウルス。ラウルス男爵家の長男です」


 随分と偉そうな子なので、ですます口調の方がいいな。


「ふふん、僕はマルケス・ポーキン。ポーキン伯爵の子なんだ! どうだ、偉いだろう!」

「あのポーキン伯爵家の!? 素晴らしい、さぞや立派な才能をお持ちなんでしょうね」


 ……ポーキン伯爵って、誰?


「そうだぞ、僕は凄いんだ! 分かったか!」

「はい、しかと心得ておきます」


 少し誇らしげに、彼は俺に背を向け、前を向いた。

 伯爵家ってことは、そこそこ大きな街の領主なのかな。

 マルケス君の派手な格好からして、結構見栄を張る家柄だということは分かる。ただ……


「……麻?」


 服の材質に違和感がある。貴族なら、なるべく肌に優しいシルクや、丈夫なホワイトスパイダーの糸を使うことが多い。

 それなのに、彼の服の素材は、ゴワゴワとした麻だ。よく見ないと分からないけど、上流貴族なら、すぐ見抜くんじゃないかな?

 それに、身に付けていたエメラルドのブローチも……色付きガラスだな。宝石の光り方じゃない。本物のエメラルドは、天然物特有の濁りやムラがある。でも彼のブローチには、そういう不純物がない。


「……貴族の世界って大変だな」


 ここで何のスキルを得るかで、更に立ち回りが変わってきそうだ。はぁー、何になるのやら……。




 スキル鑑定の儀は、恙無く進行している。


「おお、素晴らしい! 其方のスキルは【剣術】、魔法は炎。ジョブは魔法剣士だ」

「魔法剣士! やったー!」


 3つ前にいた子が、当たりジョブっぽい反応をした。なるほどね、当たりは戦闘系か。魔物が出る世界だから、戦える力は重宝されるのだろう。

 父さんが騎士云々言ってたのも、戦闘スキルがあれば不遇になることはないからかな?


「むむ、其方は……【テイム】だな。魔法はクッキー魔法。その上ジョブも【テイマー】か。……忌むべき能力だ。神に見放されておる」

「っ……そ、そんな……!」


 2つ前にいた女の子が、眉尻を下げて、トボトボと離れていった。テイムって、何だっけ? 魔物と仲良くできるとか、そんなんじゃなかった?

 倒すべき魔物と仲良くなるスキルは、ハズレなのか。

 良いスキルだと思うけどなぁ。俺が欲しいくらいだ。


「其方は……おお、【聖剣術】! 魔法は光、ジョブは【聖剣士】である!」

「やったー! お父様、やりましたよ!」

「おおおおお! マルケスよ、よくやった!」


 聖剣士は大当たりか。ただ、戦士ってお金掛かるんじゃない? 大丈夫?

 俺の番になった。


「この聖水に手を入れるのだ」

「はい」


 祭壇の中央に貯められた水の中に、手を入れた。すると、キラキラと水が乱反射して、薄っすらと文字が現れた。


「ふむふむ……其方は【交渉】。魔法は鑑定、ジョブは【商人】である」


 しょ、商人?

 鑑定できて、交渉するタイプの商人……?

 それって……




「営業じゃねえかあああああああああああ!!」




 神様のバカヤロぉおおおおお!!




ありがとうございました。もし面白いと思って頂けましたら、評価、ブックマーク等よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ