3馬鹿アタック後編
「覚悟しろよぉおおおお。今日こそ払ってもらうかんなハァァァァァァァ~~!!」
パンク風の格好をした3人組がもめごとを起こしているようだ。
語尾の悲鳴?は止めるつもりはないらしい。
なにやらメンドーな一日になりそうだ。
異世界3日目は曇り空。
今日のお店は定休日らしい。
できるだけ早く王都に行きたいし、単発のバイトでも探してくるか。
おやじさんに許可をもらって、町に出て行った。
ミカちゃんはずっとあんな感じらしいので、挨拶もせずに出てきてしまった。
大丈夫だ、問題ない!
道路の真ん中には馬車が通り、荷車を押すおじさんおばさんが忙しそうに働いている。
町並みは中世ヨーロッパの賑やかな商業都市みたいだ。
やたら背が高くてのっぺりした建物が密集している。
道はレンガのようなブロックで舗装されていて、なぜか坂が多い。
ここに来る(着陸する)とき、町の全体像を見たが、周りに山はないし、谷もないし、丘になっていることもなかった。
インフラ整備の都合なのか、町を作ってから土地が隆起したのか、いろいろ理由があるんだろう。
っと、そんな難しいことはどうでもいい。
仕事を探さねば!
職安のような施設はあるのかな?
これだけ忙しそうにしているんだからありそうなもんだが……
ちなみに、初日にやっていた力仕事のバイトは、忙しそうにしている人に声をかけてやらせてもらった。
そもそも一日だけの仕事で考えると限られるような~。
朝市の通りまで来ると、そろそろ終了の時間ということで、片付け始める店がほとんどだった。
片付け&荷物持ちのバイトってありかな?
と、
「覚悟しろよオオオオ。今日こそ払ってもらうかんなハァァァァァァァ~~!!」
パンク風の3人組が通りで出店している人になにやら怒鳴っている模様。
そんなわけでメンドーなイベントに遭遇したわけだ。
周りで見ていた人に話を聞くと、場所代を払っていない店主に取り立てが来た図らしい。
あの3人組、昨日というか、いつもおやじさんの店に間違って入っていく連中だよな。
「ま、待ってくれ! 本当に払えねえんだ。それに、ここを追い出されたら払うもんも払えねぇよ」
取立てられているおじさんは拝むように訴えている。
確かにここで稼げなくなったら
てか、ここって場所代かかるんだ?
そんな心を読んでか、居合わせたおじさんが事情を話してくれた。
「朝市の組合に所属して年1回の賦課金を払っていりゃいいんだが、あの場所は所有者が流れ者に貸している区画になっているんだ。今は場所も全て埋まっているから新規で出店が難しくなっていることも問題なんだが……」
大人の事情がいろいろとあるようだ。
取立ての理由も正当なものだろうし。
あ、パンク男と目が合っちゃった。
そろそろ撤退するか。
「待てヤ!そこのボォォォォイ!」
思い出したくもないが思い出してしまった。
あのカトーとかいう3人組のリーダー(?)ってクラスの担任がしばらく休んでいたときに臨時でやってきた音楽教師と似ている。
テンションが無駄に高くて、エセ外人、エセパンクな感じで喋っていたっけ。
決して、授業をおろそかにしていたわけではないだろうが、自分に酔っているところがあり、まともじゃなかった。
って、もしかして呼び止めたの俺ェェェェ!?
ここは無視だろ?俺とは限らないし。
ボーイってなんだ?少年?知るか!
足早にその場を立ち去る。
背後から怒声のようなものが近づいてくる気がするが絶対気のせいだ!
「おぉ早かったな」
店に戻ってくると、おやじさんは店の掃除をしていた。
「わわっ、おやじさん。それくらい俺がやりますよ~」
おやじさんから雑巾を取り上げて机を拭き始める。
「お、おう。しかし、仕事探しに行くんじゃなかったのか?」
「今日は外に出ない方がいいって占いのおばちゃんに」
「?……そうなのか?」
ただ、俺はこの時の選択肢を間違えたかもしれない。
なぜなら……
「ボォォォォイ!探したぜェェェェ!!」
来やがったからだ。
「なんだよ。また間違えか。とっとと失せやがれってんだ! 客が寄り付かなくなるだろが」
いつもの珍入者におやじさんが叫ぶと、
「ノンノン!今日は俺は一味違うぜェ、オヤジ!そこのボゥゥゥゥイに用があるんだハァァァァ!!!」
無意味な奇声はヤメレ!
おやじさんから渋い顔を向けられた。
随分と厄介な奴らにからまれたな?そんな表情だ。
仕方がない。おやじさんには迷惑をかけられないしな。
「外デロ、クソ野郎!」
ケンカをふっかける意味合いを込めて全力で親指を地面に向けてやった。
そういや、このポーズってこの世界で通じるのか?
店から離れた場所までやってきた。
「で、何の用だ?」
この手の連中とのバトルには慣れっこだ。3人まとめてたたんでやるぜ!
と、いつものテンションはどこにいったのか、パンク3人組は、急に深刻そうな顔で喋りだした。
「あんた、喧嘩強そうだよな? 助っ人頼まれてくれねえか?」
うわー。どっかで聞いたことある台詞キター。
そういうことは姐さんに相談してくれ。と言いたいところだが、ここには残念ながらいない。
そう、非常に残念だが愛しの姐さんはここにはいない……どこにいるんですかぁああああ!!!???
「あの……どうしたいきなり?」
パンク男たちにこいつ大丈夫か?という顔をされた。
確かに俺はボケ担当だが、お前らみたいなやつに心配されたくない。屈辱だ。
「……それで、なんで俺が強そうに見えるんだよ?」
この世界に来てから喧嘩をしているところを見られたわけじゃないし、したことだってない。
「簡単な話だ。とある人とあんたが似ているからだ。それに気霊も連れているしな」
と、俺の頭右斜め45°に浮遊している緑の物体を指差す。
「いやいや、こいつは戦闘向けじゃねーし。その“とある人”ってのも別人だろ?顔が似ているとかってよくある話だ」
すると、パンク男ことカトーはもっと真剣な顔をした。
「顔も似てるが、雰囲気も似ている。謙遜するところ、鋭い眼光、身軽そうな体型、“あの人”に似ているぞ」
「ほ、褒めても何もでないぞ……?」
って、鋭い眼光って目つきが悪いってことかコラァ!
俺も実は目つきにコンプレックスを感じている。
姐さんもまたとがった目つきをしているが、そこが痺れる!あこがれるー!
「とにかく、俺たちに力を貸してくれ!」
「……内容を聞いてから考えてやるよ。」
てかさ、“とある人”とか“あの人”とか誰だよ!?
「もう知っているかもしれんが、俺たちは取立屋だ。俺がカトー、このモヒカンがヤマちん、アフロがミッチだ」
ちなみにカトーの髪型は感電して出来上がるような爆発頭だ。
アフロに似てるがアフロは球状、爆発は放射状だ。
「以前は、もっとマジメなノリで取立業をやっていたんだが、“あの人”がいなくなってからというもの、俺たちはどんどん舐められていく一方。クライアントからのクレームも後を絶たない」
あー……俺はただの高校生なんだが。サラリーマンの愚痴を聞いている気分だぞ?
今度はヤマちんが喋りだした。
「“あの人”がいれば借りてた連中もさっさと払うもん払っていったんだ」
涙目になっていた。
「“あの人”がいれば!」
ミッチにいたっては、顔のパーツの穴という穴からいろんなものが出てる……
そしてなんかもう、“名前を言ってはいけないあの人”みたいなノリになってるな。
「“あの人”って誰なんだ?」
『……っ!』
3人に衝撃が走った。という解説が適当か?
そして黙り込んだ。
「いやいや、黙ってちゃわからんでしょ」
『……』
「よし、帰る!」
『まっ、待ってくれェェェ!!!』
3人同時に俺の足にすがりついてきやがった。
ビジュアルも合間ってゾンビだな。頭を蹴り飛ばしてやろうか?
綺麗な放物線で飛ぶんだわ、アレ。腐っていればの話だが。
とりあえず、まとわりつかれたのは片足だったため、自由な方の足で3人の手を踏み潰してやった。
悲鳴もそこそこに、本題に入ってほしい。
「“あの人”が誰なのか?それと、具体的に何をすればいいのか?報酬はいくらか?失敗しても報酬はでるのか?」
とにかく条件次第だ。
取立業はやったことがないし、知識も勿論ない。
聞けるだけ聞いておかないと色々メンドそうだ。
「カトー、大丈夫だ! この人になら喋ってもいい気がする」
「しかしだなヤマちん……」
「大丈夫だ。俺のソウルフルなアフロがこいつは信用できるって言ってる!」
こらっ! 判断はアフロ任せなのか!?
「わかった、話そう」
いいのか!?
あぁ……俺はまたツッコミ役にまわってしまった。
「“あの人”の本名は知らない。勿論、仕事は取立だ。金を貸した相手の中で返済が滞っている連中を煽るのがメインだ。金を相手から直接巻き上げるようなことはしない」
「報酬額は?」
「成功報酬になる。失敗した場合は支払うまで取り立てを続けるか、依頼を断念する。その場合の違約金はないが、金貸し屋からの信頼が下がる」
カトーは淡々と仕事の説明をする。
マジメな話では喋り方もマトモだ。
だが、
「報酬額は?」
「人数分で折半だ」
「……具体的な額は?」
「大丈夫だ。最初はうまくいかないものさ!」
「……金貨?銀貨?」
「まずはひ弱そうな奴から狙っていくが正攻法だな」
「……帰」
『まっ、待ってくれェェェ!!!』
埒があかない。
「わかった!3:2でどうだ?」
ヤマちんが提案してくる。報酬額の分け前のことなのだろう。
「当然、3だろうな?」
『う……』
こ、こいつら……
そりゃ経験0の俺が言うのもアレだが、こいつら俺に頼んできてるんだろ?
俺の腕を見たこともないくせに見込んで言ってるんだろ?
しかも成功報酬だ。失敗すればオサラバ。
俺は一日しかやれないから1回で成功させないといけない。
「報酬はもらう。でもそれ以外で俺は“あんたらを”手伝うメリットがないと承諾できない。意味わかるよな?仕事は他を探せばいいわけで、あえて危ない橋を渡る必要もない」
カトーはしばし考えるように腕を組み、何かを思いついたのか、ポケットから何か取り出した。
「これでどうだ? 片道分だが、まともに買うとなると結構な額になるんだぜ?」
紙切れだった。紙幣かと思ったが、よく見ると、王都行き馬車用と書かれていた。
ん? これってもしかして……
その日の取り立ては2件だったが、俺を見るなり、焦りながら硬貨の入った袋を突き出してきた。
勿論、巻き上げるのが仕事ではないため、依頼人へ届けるまで同行した。
さて、“俺を見るなり”というところが気になるが、仕事は無事終了だ。
俺は正直なにもしていない。拍子抜けだ。
チケットを受け取りつつ、それが本物であるのか、念のため、業者に確認することを怠らない。
本物だった。チケットの右端に偽造防止の印刷がされていた。
印刷技術はあるんだなー。魔法かな?夢がヒロガリングだ。
ちなみに報酬の分け前は3:2で俺が2ということでマけてやった。チケット貰ったし、しゃーなしだ。
「ボォーイイイイイィィィ!! また一緒に仕事しようぜェェェ!!!アデュッシャァァァ!!」
さっきの神妙な面持ちはなんだったのか。
いつものハイテンション?な状態で去っていった。
するとすぐにアフロ頭のミッチだけ戻ってきた。
「あぁ言っているが本当に感謝してんだ。助かったぜ」
握手を求められてそれに応じてやった。
「縁があったらまた会おうぜ」
「できれば今回で最後になることを祈るよ」
ブラックジョークも気にせず立ち去っていくミッチ。
意外といい奴なんだなー。
しかし、“あの人”とは誰なのか?
生きているなら会えそうな予感がするのは気のせいじゃないかもな。
完全なフラグだよ、これ。
「グリン、ここから王都までは何日かかる?」
「馬車だから、7日くらいだね」
「その間の食事は自分持ちだよな?」
「そうだよ。ちなみに、魔物が出ない保証はないから武器も持ってた方がいいね」
店に戻り、今後の計画を立てていた。
王都行きのチケットが手に入ったことで、ここで働く必要はなくなった。
給料が4日後に出るため、それまではこの町を動けない。
おそらく1週間分の食事代はどうにかなるだろ。
保存食を買ってみたが、前借りした分は残っている。
あとは武器だな。
「グリン、憑●合体とかオー●ーソウルとか出来ないか?」
「なにそれ?」
漫画の知識はないらしい。
主人公が守銭奴になっていますが、状況が状況なんで仕方ありません。




