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美佳ちゃん?アタック

翌日。

朝からひたすら、荷物の上げ下ろしの作業をした。

異世界の召喚された主人公補正で、荷物を軽々と持ち上げたり、お偉いさんに気に入られたりといったイベントは無かった。

ただひたすら、馬車から荷物をおろして、別の馬車に載せていく。

季節は春になったばかりなのか?

制服のワイシャツを脱いで、Tシャツだけになってもさほどの汗をかかなかった。

元の世界でも季節は春だし、何の違和感もなかった。



仕事が終わり、硬貨数枚を受け取った。


「おつかれさん!」


泊めてくれたおっちゃんは、荷物を積み替えた馬車に乗って町を出て行った。

同じ場所で泊めてもらうという手は絶たれたというわけだ。


「グリン、この金で王都には行けるのか?」


「格安料金でも銀貨3枚は必要だよ。今回貰ったのは銅貨2枚だね」


ちなみに、銀貨銅貨と言われれば見分けはつくかもしれないが、手にある銅貨とやらは緑色をした金属硬貨で、500円玉より一回り大きい物だった。


「3食分くらいの価値だよ」


「あれだけ働いて3食分か。こき使われたな」


とはいえ、もともと泊めてもらうために交渉したわけだし、お駄賃もらえてラッキーと思わないとバチがあたるだろう。そう思うことにしよう。

銀貨1枚=銅貨15枚らしい。

計算上、肉体労働22回+αだな。

どうでもいいことだが、この計算ができるまで15分くらいかかってしまった。

一応言っておく、算数はとんでもなく苦手だ。

それに、同じような相場で雇ってもらえる保証はないだろう。

あぁ……姐さん。あなたに会いたいです。この際、ウィローネさんでも……はっ!?いかんいかん。いくら同じ顔、同じ声とはいえ、これは浮気だぁあああ!

ごめんなさい姐さああああああん!!


「頭かかえてどうしたの?」


「い、いやな、俺の愛しの人と、その人と同じ顔をした女性とを天秤にかける俺ってなんて馬鹿なんだろうと、心の中で土下座では足りないと思って土下寝をしていたわけなんだ。」


「それは大変ねー。」


「それと、今夜の宿泊先の確保と、王都までの運賃をなんとか稼がないといけないんだよ」


「確かに、王都までなら、まとまったお金が必要だし、日数もかかるよね?」


「そうなんだよなー。荷物の積み込みはきついし、賃金も安いしなー」


「丁度良かった! じゃあウチで働いてみない? 人手が足りなくて困ってたんだ~」


……ん?“働く”?

てっきり、グリンと会話している体だったのだが、そういや、声は女性のもの。

しかも、その声に聞き覚えがあり、落ち着きすら感じる。

振り返って納得した。

話しかけてきた女の子は不思議そうに首をかしげる。

その顔、その声、幼馴染の木城美佳きじょうみかのものだった。



「私はミカソネ=キジヨ。みんなからはミカって呼ばれてるの。」


美佳ちゃんモドキだった~!

町娘の服装といえばいいのだろうか。

この国独特に模様の入ったワンピースを着ている。

庶民派なんだけど、可愛い顔が際立つ。

きっとこの世界でももてるんだろうよ。


「俺は清原竜輔。竜輔でいいよ。それで、さっき働かないかってどういうことかな?」


「うん、ウチの店でね、人手が足りなくて困ってるの」


「ちなみに何の仕事?」


「飲食業。メンスープの店なの」


元の世界では、ラーメン屋の娘。

その“メンスープ”がラーメンやうどんの類なら、本当にそのまんま美佳ちゃんだな。

それは置いとくとして、俺はその手のバイトはしたことがないわけでもない。

こんな道端で拾い物をするかのごとく、声をかけたきとすると、厨房ではなくホールスタッフといったところだろう。

しかし、今は藁であってもすがりたい状況だ。


「採用!採用!住みこみOK! 今夜からよろしく! じゃんじゃん働いてくれな」


ミカちゃんのお店に着くと、待ってましたと言わんばかりにこう告げられた。

外見も性格も美佳のおやじさんまんまだった。


「よかったね!」


よかったのか?

納得いかないが、まぁいいだろう。

一通り、仕事の内容とメニューの説明を受けて、夜からの営業にのぞんだ。


「兄ちゃん!メンターワン1つ!」


「こっちはキャラメルスーワン2人前!」


「俺も同じやつ!大盛りなー」


なお、解説しておくと、『メンターワン』とはワンタンスープのラーメン。

そして『キャラメルスーワン』とは味噌味のワンタンスープのラーメンらしい。

どちらかというと、キャラメルは醤油に近いものじゃないか?

調理はおやじさん1人。

ホールスタッフは、ミカちゃんと俺のみ。

客席は20人で満員御礼。

外にはまだ5人ほど並んでいるという盛況ぶり。

客が入るのにスタッフがこれだけというのは大変だ。

頑張らねば!




「終わったー!」


時刻は深夜1時といった頃だろうか。

ただ、時計は持っていないし、携帯もこちらの世界に来た時点で動かなくなった。

どうせ電波なんて届かないんだから無用の長物になったろう。


「おつかれさん!まかないだ」


おやじさんは、お盆に丼を5人分乗せてやってきた。

ご飯の上に、ワンタンを乗せて醤油スープを少しだけかけてある丼だ。

ご飯の種類はいつも食べている物と変わらなかったが、ワンタンは箸で持っても破れないのに、口に入れるとすぐに溶けていった。


「すっげーうまいっす!!」


「余り物を寄せ集めて作ったんだ。メシは出してねーけどまかない用に炊いたんだ」


働いた後ってのもあって余計に美味いんだろうな。


「ほらほら、付いてるよ~?」


ミカちゃんが俺の口元のご飯粒を取った。

……こ、これは恋人同士でやるあれか!嬉し恥ずかしのイベントかこれはーーー!!!

しかし、


「ふごっ!!!」


俺の鼻に押し付けやがった。

食卓は3人しかいないのだが、宴会のような盛り上がりを見せた。

ち、ちくしょう。ミカちゃんは異世界でも俺の扱いをわかっているじゃないか!!

あまじょっぱからいじゃないの!

※木城美佳について:竜輔の幼馴染。竜輔たちとは違う高校に通う。ゲームヲタク。実家はラーメン屋。


※飯テロは狙っていません。その手の描写力は皆無です。

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