灰色の帰り道Ⅴ
「……じゃあ学校に来てない人たちは行方不明なんだ」
【怪異】の対応を終えてから数日経ったある日の夜。
いつも通り良乃の家で課題をしていると、珍しく良乃が口を開いた。
「見に行った二人だっけ? 捜索願いが出たって白乃が言ってたんだよね」
良乃が事件のその後の話をするなんて珍しいなと思いつつ相槌を打つ。
【怪異】に巻き込まれた人の末路としてはよくある話だ。
この後遺体で見つかったり、心身喪失で発見される可能性もある。一体どれがマシなんだろう。
「白乃さんは何か言っていた?」
「特には。見つかるといいねくらいは言ってたかも」
人の話はちゃんと聞きなさい。まぁ良乃だから仕方ないか。
最後の一文を書き終え、たつたちのおもちゃにならないようにカバンに仕舞い込む。
今時手書きでレポートを書かせるなんてどうかしていると思う。
丁度そのタイミングでスマホに通知が入った。
開いてみれば、お墓と、その前にたくさんの犬用おやつやおもちゃ、お花がお供えされている写真とメッセージだった。
「アミさん、ちゃんとたろすけのお墓参りできたんだ」
覗き込もうとするたつとともにも見せてあげたけれど、それを見た二匹は何故か逃げてしまった。
何か変なものでも映っていたのかな。
噂は結局、私の求めているものではなかった。
空振りなんていつものことなのでいちいち落胆はしないけれど、思うところが無いわけじゃない。
それからふと、良乃との会話を思い出す。
「ねぇ良乃」
お腹におかかを乗せたままソファに寝転がっている良乃に声をかける。
「幸福の魔女、いた?」
手に持っていたスマホを置いて、少しの間を置いて良乃が答えた。
「幸福の魔女ごっこをしている莉音ならいたかな」
「何それ」
暗に幸福の魔女はいなかったと言われたみたいで少し、いやだいぶ不服ではある。
けれど良乃はいつだって、見えたものをそのまま見る。
それは【怪異】が相手だろうと人間が相手だろうと変わることはない。
まぁそのうちいたと言わせて見せるんだけれど。
課題をしまったカバンを肩にかけ立ち上がる。
「帰るの?」
「うん、課題も終わったしね。あ、今日の残り物はタッパーにあるから早めに食べるんだよ」
「はいはい」
たつとともにお別れをして、夜の街を一人歩く。
少しずつ夏の気配を纏わせた空気が頬を撫でる中、自分の家が見えてきた。
「ただいま」
玄関の灯りをつければ、靴のない玄関が沈黙で出迎える。
用事のないリビングを無視して二階の自室に帰る。
パッと目に入るのは、いつも写真立てだ。
記憶にない幼い私と、私を抱き抱えている男の人の写真をそっと撫でる。
もしあの時良乃がいなければ。
或いはアミさんより先に私が【怪異】に触れていたら。
アレはあの人の姿をとったのだろうか。
「早く会いたいよ、柘榴お兄ちゃん」
私の願いを聞き届ける存在は、どこにもいなかった。




