第四話 普通の日常
ウチはママと現代へ戻った。
夜23時、パパを叩き起こす。
「華恋。帰ったのか。おかえり。」
「うん!!でね!パパ!!サプラーイズ!!」
ウチはパパの腕を引き、ママの居るリビングに連れて行く。
「華耶ちゃん……」
「ママ戻ったんだよ〜!!」
えっへん!!と腕を組む。
まぁ、ウチは何もしてないけど。
『きゃー!ただいま!!マイダーリン♪』
「おかえり。」
「パパ、泣いてる??」
「泣いてない。」
「え〜??」
『ダーリンは、昔から涙脆いのよ♪』
「そうなの〜!?」
『華恋が生まれた時もね、立ち会ってくれたんだけど、ダーリンったら私が痛がってるの見て泣きながら倒れたんだから〜!!あの時はちょーウケたわ〜♪』
「華耶ちゃん。あの時は悪かったよ。言わない約束だったじゃないか。」
『ふふっ。あの時の写真もあるわよっ♪』
「え〜!!どこどこ!?見たい〜!!」
「やめてくれ……それより華恋。お前はもぉ寝なさい。疲れてるだろう。子供はもう寝る時間だよ。」
「ウチもぉ子供じゃないよ!!」
「僕が生きている内は、子供だよ。」
「何それ〜!20とか〜30、50になっても〜??」
「当たり前だろう。早く寝なさい。」
「はぁ〜い。」
ウチは口を尖らせながら、2階にある自分の部屋へ入った。
これは後からパパに聞いたんだけど。
パパとママは、ウチが部屋へ戻った後2人で話をしたんだって。
それで、ママは供養する事になったって。
ママはそこに居て、会話もできるのに。
他に話した事は教えて貰えなかったけど、パパの赤くなった目を見たら深く聞けなかった。
パパもいっぱいいっぱい悩んで、2人で決めたんだってわかったから。
___翌朝
ウチは久しぶりの学校登校!!3ヶ月ぶりくらい!?
ちょー楽しみ!
ウチはアラームで起きて、制服に着替えて一階へ降りると、パパとママは驚いてウチを見る。
『華恋!おはよ〜!!』
「おはようママ!パパ!」
「1人で起きれたのか。珍しいな。」
「すごいっしょ〜!!久しぶりの学校楽しみすぎる!!」
『あ〜。華恋??』
「なに?ママ。」
ウチはルンルンで食パンを頬張る。
『今日は日曜日よ。』
ウチの手から食パンが滑り落ちた。
「そんなぁぁぁああ。」
ウチがグスグスしていると、パパが「今日は買い物へ行こう。」と言い出した。
パパが!?珍しい〜なんて思いつつ、ウチは食べかけの食パンを完食して服を着替え直す。
久しぶりの3人でのお出かけ!!嬉しい!!
ウチ達はデパートでお買い物をして、帰りに少し良いレストランでご飯を食べて、丸一日満喫した。
家に帰る頃には、21時を過ぎていた。
家にはお祖母ちゃんと、大伯父さんが大っきい荷物を持って待っていた。
2人はママの姿を見て、安心したように笑ってた。
「もう、いいのね?」
お祖母ちゃんは、ママの手を取って優しく話しかける。
『はい。義母さん。今まで本当にお世話になりました。私を柊木家へ温かく迎えてくださって、ありがとうございます。私凄く幸せ者です♪』
「華耶ちゃんが、嫁いで来てくれて本当に嬉しかったわ。私より先に逝ってしまうなんて……こちらこそありがとう。」
お祖母ちゃんは涙を流してた。
ウチは泣けなかった。
大伯父さんが、着々と供養の準備を進めていく。
ウチは何も言えずに、供養が始まった。
ママは笑って手を振っていた。
ウチは静かに手を上げる。
しばらくして、供養が終わりママを留めていた形代が灰になる。
お祖母ちゃんと大伯父さんは、今日は時間も遅くなったのでお泊まりする事になった。
「ごめんね。華恋ちゃん、部屋お邪魔しちゃって。」
「いいよいいよ〜!!お祖母ちゃん久しぶりだねぇ!!」
「そうね、華恋ちゃんが退院してからだから、半年くらい会えてなかったかしら。」
「そうだよぉ、ウチも会いに行けなかったし〜。」
「でも、華恋ちゃん。貴方が無事で良かった。」
お祖母ちゃんはすぐに眠りについた。
ウチは、「寝つき良〜!!」と感心しながら布団を頭まで被って目を瞑る。
何度も目が覚めて、夜がいつもより長く感じた。
朝起きると、お祖母ちゃんが朝ごはんを作ってくれていた。
ウチは、制服に着替えて一階へ降りる。
お祖母ちゃんの作った朝ごはんは、ザ・和食って感じで美味しかった。
「うまっ!お祖母ちゃんの作ったご飯最強!!」
「ふふっ。まぁまぁ、ありがとう。」
「華恋、時間大丈夫かい?」
パパにそう言われ、ウチは時計を見て、ご飯をかき込んだ。
「やばっ!!ちょっ、ウチ急ぐわ!!お祖母ちゃんごちそうさま!!」
「おそまつさま〜。」
ウチは食べ終えた食器をシンクに置いて、急いで家を出た。
ウチは走って学校へ向かった。
電車に乗って、改札を出て。
「ギリ間に合いそう!!」
時計を見ながら歩いていると、ドサッと人とぶつかり相手を転かせてしまった。
「うわっ。まじごめん。大丈夫??怪我ない??」
小学生くらいの少年が顔を上げる。
ウチは16年間の経験でこの目を知ってる。
……人じゃない。
「まじごめん!!ウチ急いでてさ!!ママ見つかるといいね!!じゃあね!!」
ウチは手を合わせて、小走りでその場を去った。
少年は、ニコニコと手を振っていた。
学校が見えて、チャイムが鳴り始める。
門を通ると、教頭先生が立っていた。
「先生〜おひさ〜!!」
「おぉ!柊木君!身体はもぉいいのか?」
「うん!!ちょー元気!!」
「校内は走るなよ〜!」
「はーい!!」
ウチは校舎へ入り、階段を駆け上がる。
2年B組の扉をガラッと開けると同時に、チャイムが鳴り終わった。
みんながウチを見て、教室がザワザワとする。
「柊木さんだ!」
「柊木じゃん!」
「華恋じゃーーーん!!!」
「みんなおひさ〜!!」
「華恋の席ここだよー!!」
「一番後ろの窓際端っこて!学生にとって最強の席じゃん!!」
「空席邪魔だから追いやられただけだけどなー!!」
「うわっひど!!」
ウチは席にカバンを置いて、椅子に座る。
「あ、てか、みんなまじありがとーー!!入院してた時寄せ書きと千羽鶴!めっちゃ嬉しかったわ!!」
みんなに聞こえるように声を張る。
そう言ってると、担任が教室に来てプリントが配られる。
「球技大会あんの!?」
「そだよー!華恋がいつ来るかわからんからさー、一応凛らで華恋出そうなやつ多めに出てんのー。」
イェーイとピースをする3人は、ウチと中学から親友のりこぴんとゆりちとりんでぃ。
「まじ神。だいすき!!」
「知ってるー。てか華恋さぁ、どれだけメッセージ送っても見ねーからさぁ。ちょー心配したんだけど!」
「ごめーん!!ちょっと電波届かないとこいてさー!!」
「まじ?なにそれ、山奥でも行ってたん??」
「まぁ〜。そんなとこ!!」
出席確認も終わり、授業が始まる。
「やべぇ。高校生の3ヶ月やべぇ。なんもわからん。」
「だろうな、3ヶ月真面目に通った凛もわからん。」
「バカすぎだろ。」
「バカじゃないしーバカって言う方がバカだしー。」
「あんたらうるさい。どっちもバカ!」
「うわっ酷いよ、ゆりち〜!!」
ウチと凛音ことりんでぃの言い合いは、百合香ことゆりちに止められた。
それよりゆりちはいつ見てもかっこいい!
文武両道、美ギャルである。3ヶ月の間にも更に磨きがかかって美しさが増してる!!
そんなウチらの横で梨瑚ことりこぴんは、スヤスヤと気持ちよさそうに眠っている。
午前中の授業が終わりお昼休み、ウチはクラスメイトに囲まれていた。
「柊木さん、もぉ怪我は大丈夫なの?」
「みんなで見舞い行った時は寝てたからヨォー。」
「まじ!みんなありがと〜!!ウチちょー元気!!」
ウチのクラスメイトはみんな良い人!!
元気になったお祝いって、ウチの好きなヨーグルとかグミとかくれた!!
「ちょっと!食べかけ混じってんだけど!!くれるなら新品よこせ〜!?」
「ごめん、恋々僕が食べた。」
「りこぴんかよ!!人が貰ったもん先に開けるな〜!!」
「それよりさぁ。恋々早く食堂行こ〜?今日は恋々の好きなカレーうどんあるよ〜。」
「え!!まじ!?行こ行こ!!」
ウチは、りこぴんに手を引かれながら食堂へ向かった。
各々券売機で券を買い、空いてる席に座る。
「うぇ〜ん、カレーうどんなかったぁ。」
「どんまーい。凛はエビフライ定食ゲットー!」
「可哀想に、まぁ教室出るの遅かったからね。」
「恋々、僕のカレーかけてあげる。」
「ありがと〜。でもいらないよぉ。」
「うどんだから、カレーかけて貰えばカレーうどんじゃん。」
「みんなウチのお椀の中見えてないの?きつねうどんなんだけど!!」
「合うんじゃね。」
「合わないだろ。」
「恋々気合いだよ。」
「いや。合う合わないに気合いとかないから!!」
ウチは親友という敵から、きつねうどんを守りながら食べた。
「てかさー凛達、華恋が元気になるの待とうって先月オープンしたカフェ行ってないんだけどー!」
「まじ!?待っててくれたの!!」
「当たり前だよ。恋々が行きたいって言い出したんだよ。」
「それにオープンして一ヶ月経ったから、多少空いてきてんだよね。行く?」
「行く行く!!行きたいです!!」
「やったね。恋々元気になったお祝いパーチー。」
「やったー!!ありがとぉー!!」
「じゃぁ予約しとくわ。」
「ありがと!!ゆりち〜!!」
ウチは午後の授業もウキウキで過ごした。
授業が終わり、放課後。
ウチはすぐに帰る準備をして、カバンを肩にかける。
「できた!!行こう!!」
「華恋早すぎー!!」
「予約の時間まで、まだ1時間以上あるよ。」
「恋々ウキウキさん。」
「だって〜。ずっと楽しみだったもん〜!!」
ウチがウジウジしてると、とりあえず学校を出ることになった。
学校からカフェまでに商店街があるから、商店街にあるゲームセンターで時間を潰すことにした。
「見てな!」
りんでぃは、得意げにクレーンゲームでぬいぐるみを狙う。
500円を入れて6回終わったところで、りんでぃは諦めた。
「取れないー!!」
「欲あり過ぎるんじゃない??」
「何それ!欲あり過ぎると取れないんですか!!ゆりち!!」
「いや、関係無いと思うけど。無欲の時って、くじとか当たるじゃん?」
「なるほど。」
ウチとりんでぃは、無欲になる為ポカーンと頭を空っぽにしてクレーンゲームに100円を入れる。
ウチは適当に掴めそうな所に、アームを移動させる。
ストラップをツルッと撫でて上がったので、「やっぱダメか〜。」と思っていたら、チェーンの部分が引っかかって持ち上がった。
「やば!!取れたんだけど!!」
「おぉ。すげ、おめでとう。」
「凛取れんかった!!」
「りんりんはだって、大っきいぬいぐるみだもん。すぐには取れないよ。」
「悔しいー!!欲しい!!取ってよぉ梨瑚ー!!」
「お金出してくれるなら良いよ。」
「まじ!!出す出す!!」
りんでぃは、両替機で100円玉を作ってりこぴんに渡す。
りこぴんは500円を貰って、全部入れた。
少しずつ動かして、5回目でゲットできた。
「取れたよ。一回分余った。」
「やったー!!ありがとう梨瑚ー!!」
「うん。良かったね。」
残りの一回は、ウチが取れた台で使って、カフェの予約時間がもうすぐだったから、ゲーセンを出てカフェへ向かった。
りんでぃは取って貰ったぬいぐるみを上機嫌で握りしめてカフェに入った。
パステルカラーで可愛いカフェで、テラス席もあって学生のお客さんも多かった。
「ウチパンケーキ!!」
「凛もー!」
「じゃぁ私は、チーズケーキにしようかな。」
「僕、ガトーショコラとココア。」
しばらく話しながら待っていると、みんなの頼んだ物が揃って食べ出した。
ウチが頼んだのは、イチゴがのってて粉糖が沢山かかったパンケーキ。甘くてすごく美味しい。
りんでぃは、バナナチョコのパンケーキ。
ゆりちはチーズケーキで、ちょこんとクリームがのってた。
りこぴんはガトーショコラとココア、チーズケーキと同じでガトーショコラもクリームがのってた。
みんな食べ終える頃には、もぉ外が暗くなってカフェを出ると解散になった。
駅まではみんな一緒で、駅に着くと各々別れた。
ウチは行きに通った道を歩くと、朝に見た少年がウロウロしていた。少年はウチに気づくと、笑顔で手を振った。
ウチは手を振り返して、改札を通って電車に乗った。
家に帰ると、お祖母ちゃんが作り置きをしてくれていたご飯をパパと2人で食べて、洗い物をパパがしてくれているうちにお風呂へ入って眠った。
✿ ✿ ✿
___時は遡り、華恋が現代に戻った夜。
2人はリビングで向かい合って座って、お茶を飲んでいた。
「華耶ちゃん。君が居なくなってから僕は……」
『寂しい?』
「うん。僕の世界は、全部華耶ちゃんのおかげで成り立っていたし。今もどうすればいいか、わからない。」
『ふふっ。ダーリンは昔からちっとも変わらないわね。高校生の時初めて出会った時から。』
「変わったよ。」
『そうね。お髭と髪の毛が伸びたわ。そろそろ切ったら?綺麗なお顔が台無しだわ。』
「華耶ちゃん。僕はこれからどうしたらいい。1人でちゃんと華恋を守れるかな。」
『ダーリンはどうして、人を頼らないの?貴方には素敵な義母様も親戚の皆さんも居るのに。一度話してみたらいいわ。
怖い事、苦しい事、助けて欲しい事。』
「でも……」
『ダーリンの話していた、遠いご先祖様に会ったわ。華恋は気づいてないみたいだけれど。』
「あの方に?」
『えぇ。家系図の遠い遠いご先祖様。すごく良くして頂いたわ。それに華恋はその方に恋をしたみたい。ふふっ。言わなくたって分かるわ、ママだもの。』
『そろそろ、話すべきよ。華恋に。
あの子もダーリンと同じく人ならざる者を惹きつける。
過去でご先祖様にお会いできたのは幸運だわ。華恋も助けて頂いた、それに私も。
陰陽師家の末裔である事も、本家の血筋は対魔の力を持つ事もちゃんと教えるべきよ。あの子が傷つく前に。』
「でも。こんな事急に言われても気味悪がるんじゃ……」
『華恋よ?気味悪がるはずないでしょ。それにあの子は、昔から人と人ならざる者の区別が付かないほど、はっきり見えてしまう子だから、何かある前に自分の力を封じるのか、受け入れて力を付けるのか考えさせるべきだわ。』
「うん。わかってる。わかってるんだ。でも僕みたいに封じるのが失敗して、華恋に余計に怖い思いをさせてしまったら……僕じゃ守れない。
母さんも叔父さんも近くに居ない。君も……」
『はぁ。ほんっと!!ウジウジしちゃって。華恋は大丈夫よ!!ダーリンが思う程弱くないわ!!
それにいざとなればダーリンの作ったタイムマシンでご先祖様に「助けて〜!」って行けばいいでしょ!!
あの方ならそんな事で怒らないわよ。』
✿ ✿ ✿




