楠野里高校:14
雑談しながら延々とも感じる階段を上り、ようやく出口から空の色が見えるようになった。
「ハア、ハア。ダンジョンよりもこの階段の方がしんどい」
「同感です。階段上るのしんどすぎる」
愚痴をこぼすと前川君が反応してくれる。比奈と馬場さんの顔を見ると死んだ目で黙々と階段を上っていた。
階段を上り切り地上に到着すると、そのままへなへなと誰からともなく座り込んだ。
「やっと階段上りきったわ」
「正直階段が一番のネックじゃないですか?毎回これの上り下り面倒くさすぎる」
座り込んで比奈が開口一番、ダンジョンまでの道のりの批判をしている。それに馬場さんも追随している。良太も苦笑いするしかなかった。
「それで、とりあえず地上までは着きましたけどこのまま裏門から戻りますか?」
馬場さんが疲れた顔をしながら質問してくる。
「いや、あと半分だし外周は全部確認しておきたい。」
「せっかく外に出たし、それぐらいなら付き合うわ」
比奈が承諾し、馬場さんと前川君も頷いてくれたのでそのまま反時計回りに外周を歩くことになった。学校の敷地は本当にそのまま転移してきたようであるが、学校との敷地を隔てる柵の外側は森の中という奇妙な状況となっていた。
「じゃあ行きますか」
立ち上がりながら3人の顔を見るとヨロヨロと起き上がってきた。
「外で活動するとなったら学校の周辺の木を切り倒さないといけないですね」
「賛成です。流石にこんなに森が近いと安全に移動するのも難しそうだし」
周囲を見ていて気が付いたのか馬場さんと前川君が話している。
(今のままじゃ見通し悪すぎるもんな。さっきの草原とはえらい違い……)
良太は深く考えず、一応周囲の警戒をしながら先頭を歩いていたが、左側に学校の柵があるにしても警戒しにくく感じていた。
「良太、どうしたの?ダンジョンよりも険しい顔して」
その様子が気になったのか比奈が話しかけてきた。振り返ると馬場さんと前川君も雑談をやめてこっちを見ていた。
「いやぁ、こんなに森だと警戒しにくいから疲れるんだよ。音が多すぎるし、見通しが悪いから」
「そんなに変わるの?」
「ああ。さっきは草原だったからな。ここは森だし、地面だけじゃなくて木の上とかも一応見ないといけないから」
風で草がこすれる音や、木の葉の擦れる音、風の音、すべてが合わさって、大阪という緑の少ない都市で暮らしている良太にとってはあまりにも経験がない。
「じゃあやっぱり学校の周辺の木は早々に切り倒した方がよさそうですね。生徒会長に伝えておきます」
馬場さんが話を聞いて対処法を考えてくれている。その横で前川君も森の奥の方をみていた。
「ダンジョンにはウサギがいましたけど地上には何がいるんでしょうね?さすがに何も生物がいないってことないでしょうし」
その発言に全員が押し黙った。放り出された場所にどんな生物が生息しているかを全く理解していない事に気が付いてしまったからだ。
「ダンジョンよりも先に、高校周辺の調査の方が先だったかな」
「今考えてもしょうがないでしょ。それに長い目で見れば先にダンジョン行ったのは間違ってないと思うわよ」
「そうですよ。俺たちの調査自体は合ってると思います。最悪地上は戦えない人間でも少しずつ調査できますしね」
少し方針を間違えたかと反省したが比奈がフォローしてくれた。それに前川君も慰めてくれるが一度不安になったものはすぐには晴れない。
]「そうはいってもね。地上の方が脅威としては近いんだから先に周辺の調査をして安全かどうかの確認はするべきだったんじゃないかとは思っちゃうよね」
「どちらにしても、高校の周辺一帯であれば恐らく4人では足りないのでは? 今日の“このタイミング”でと考えれば問題のない事だと思いますよ」
心情を吐露してしまった発言は馬場さんに反論された。
「それに、今のところこの森で動物をみたというのは聞いていません。なぜ、地上とダンジョンに分かれているのかという疑問はありますが……」
「確かに。地上に何かしらがいるならわざわざダンジョンを作る必要はないよな。……でも人間以外に生物がいないなんて出来るのか?」
「……竹中先輩が戦った恐竜は地上に出現しました。少なくとも地上で生きる事が出来ないという事はないのでは?」
「それはそうでしょうね、私たちも普通に生活出来てるし。じゃあ地上とダンジョンをあんなにしっかり分けた意味はなんなの?」
全員が考え込み、黙っていると前川君が震えながら口を開く。
「……ダンジョンは人を減らすための装置。とか?」
「どういう意味?」
「高校生が一定の数まで減らすことがこの世界の目的だとここにこの世界に連れてきた犯人から言われたと聞いてます。ダンジョンはそのための装置だとしたら?」
「……ありえるな」
「二人とも本気で言ってるの?」
「ああ、その考えで行けば地上も別の使い道として考えているのかも。例えば……陣取り合戦」
「陣取り合戦。ですか?」
「地上は陣営ごとの陣取り合戦の盤面として、ダンジョンは人を減らすための装置として、っていう機能の違いを持たせてるのかも。“くろこ”は戦争になるって言ってたしな」
良太は前川君の意見も踏まえて新たな考えを出す。突飛に感じるが大きく違うことは無いのではとも思えていた。比奈や馬場さんは絶句し、前川君は思考の沼に入ってしまったタイミングで外周を半周し、正門に到着した。
「とりあえず、帰ってきたからこの話は他の奴も入れて話そう」
「では、生徒会長はまだ体育館にいると思いますので体育館に行きましょうか。」
バリンッッ‼ ガシャャャンッッッ‼‼
体育館へ向かおうと外廊下を歩いていると、上から不意にガラスが割れる音、一瞬時間がずれて良太の目の前にイスが降ってきた。
「な⁉ ハァ⁉」




