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この世界で何を求める  作者: 七支 刀
楠野里高校編

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16/18

楠野里高校:10

 良太は、体育館から正門まで移動してきた。楠野里高校の校門から一歩出るとそこには森が広がっている。俯瞰して観れば森の中にポツンと高校があるような光景になっているのだろう。


「小学校とかはないんだな」

「みたいね。有希子が残念がってたわ。あるだけで大分違ったって」

「だろうな。物理的に狭いし」


 独り言に参加してくれた比奈や一緒にいる面々はここが今までいた場所ではないと再確認させられた。


 楠野里高校は本来、周囲に同じ系列の幼稚園、小学校、中学校が隣接していた。だが、きれいさっぱり森へと姿を変え、痕跡すら残っていない。元々高校と敷地を共有していた大学の建物だけは残っていたが高校の生徒数に対して現存する建物だけでは手狭なのは否めない。生徒会長である細川有希子を悩ませていた一因である。


「ダンジョンの入り口はどこにあるんだろうな?」

「ん~~。外周回ってたら見つかるんじゃない?」

「そんな気がします。なんせ他にも大量にあるって話でしたし」


 話の流れで気になっていたダンジョンの入り口の場所を聞いてみると意外とすぐ近くにあると考えているようで、比奈と生徒会の子が返してくれた。


 良太と一緒にダンジョンの偵察に赴くのは陸上部副主将の成田比奈、生徒会副会長3年の馬場綾、そしてサッカー部2年の前川宏太の3名だ。


「自分もそう思います。何なら、敷地内に作ってくれた方が楽だったんじゃないかとは思いますが……」


「一理あるね。でもダンジョンからモンスター出てくるかもしれないって考えたら敷地内じゃなくてよかったんじゃない?」


 肩をすくめながら前川くんに聞いてみる。困った様子だったが諦めたように苦笑いだった。


「それは…勘弁ですね」


「だろ?だからマシじゃないかな。じゃあとりあえず時計回りで行ってみようか」


 楠野里高校の正門は敷地の南東側にある。高校の正門から外周を時計回りに歩き始めてしばらくすると比奈が良太の顔を覗き込んでくる。


「ちなみに、なんで私を呼んだの?私邪魔じゃない?」


「ああ、お目付け役2人と俺1人は居心地悪いじゃん?」


「そんな理由?」


「そうだよ?」


 比奈は事実だと顔に張り付けている良太に呆れた。てっきり何か仕事を任されると考えていたからだ。そして元々こんな感じだったかと納得する。


「我々のことをお目付け役と決めつけないでほしいですが、まあその側面は否定しませんよ」

 良太と比奈の話を聞いていた馬場さんはそう認めた。サッカー部の前川君も苦笑いしている。


「生徒会長からはダンジョンの確認を頼まれましたが、竹中君がどれくらい強いのかは確認しておいてって言われてますから」


「自分もそんな感じですよ。まあダンジョンの調査が中心ですけどね」


 それを聞いて良太は比奈の顔を見て見入ると納得したようだ。良太としてはあまり初対面で仲良くなるのは得意ではないのでその方面が得意な比奈を指名したというのが理由である。


 そんな雑談をしながら歩いていると丁度正門の反対側に明らかに地下への入口とわかる洞窟が口を開けていた。それは森の中に不自然に岩が突き出し、ご丁寧に地下鉄の駅入り口のように階段が見えている。


「……大分ご丁寧な見た目ですね」

「隠す気がないのでは? 明らかに見つけやすいようになっていますし」

「探すことにグダルの求めてないんでしょ」


 見た目に呆れた前川君の発言に、馬場さんと比奈がツッコむ。だが、見た目に呆れたのは皆同じだ。


「それにしてもここにあるなら体育館から確認してから出てくればよかったな。裏門からだとすぐだったのに」


 良太は高校の裏門を見ながら恨めしそうに言うしかない。今いる場所は丁度、体育館の裏側なので裏門から出ればすぐそこだった。


「……確認は大事よね。今度から気を付けよ」


 比奈が呟いたが、ここにいる全員が改めて確認の重要性を心に刻んだ。


 そんなことばかり考えていられないので良太はダンジョンの入り口の正面に立つ。


「俺は入って様子見るけど付いてくる覚悟は出来てるか?」

「貴方に呼ばれた時点で出来てる。連れてこられてここに置いて行かれる方が御免よ」

「そうっすよ。てか一番強いの竹内先輩なんだから一緒にいる方が安全なんですけど」

「私たちもダンジョンを見てくるように言われているので、覚悟は出来てます」


 一応最終確認しようと3人に問いかけると三者三様の答えが返ってきたが、覚悟は出来ているようだ。


「じゃあ行きますか」


 4人は入口に足を踏み入れ、そのまま階段を下りていく。洞窟の中は狭いわけではなく良太たち4人が横に並んでも余裕のある横幅だった。さらに森だった地上も転移する前に比べれば木陰があるので涼しかったのだが、洞窟の中は肌寒さを感じるほど気温が低い。


 先頭を良太が歩き、最後尾に前川君、間に比奈、馬場さんを挟む形で階段を下りていく。壁面には装飾が施され、装飾を引き立たせるように等間隔に松明が設置されている。しかし階段が長いのか一番下は見えなかった。


「ここは何か出てくると思う?」

「コウモリとか?」

「……イヤかも」


 階段を下りながら馬場さんと比奈が話している。幸い生物の気配はなく、モンスターと遭遇する事は無かった。


 雑談しながら10分ほど洞窟を下っていると階段が終わり、そのまま一本道となる。


「やっと終わりか。帰りこれ上るの?」

「考えたくないからやめて」


 帰りを考えてうんざりすると比奈から嫌がられた。他の2人が話に乗らなかったのはこの一本道の雰囲気に圧倒されているからだ。


「空気が変わったな」

「そうね……空気が重くなったような感じがする」


 一本道は禍々しいと形容できるほど、不気味な空気を出している。壁には悪魔を模したと思われるレリーフや装飾が存在感を放ち、突き当りには大きな金属製の扉が開いているのが見える。


「道にしたって随分凝った作りなんだな……」


 雰囲気にのまれ緊張しているが、装飾が理解を超えてしまったため半ば呆れながら呟く。しかし、先ほどまでと比べて、他の3人には余裕はないようで話には乗ってこない。警戒度を引きあげ、一本道を進み大きな扉を抜けると部屋に繋がっていた。その光景に思わず息をのむ。



 その大空間は西洋の玉座の間を思わせるような圧巻の巨大空間だった。

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