第一章「大陸という地」~③~
第一章が終了となります。次回は第二章。物語はまだ序盤ですが、此処から加速が始まります。では、次回。
~③~
色褪せた廃墟と見紛う街並み。
この数年、内陸部の工場が殆ど再稼動していないという現状も手伝って、大気汚染が大幅に緩和されたと言われる空は残念ながらも曇りで、僅かな日差しを大地に恵んでいた。
主要な国道以外に手を付けていないという事で車両の通れない路が七割以上という有様らしく。
人影が二人。
しょうがないとテクテク歩いていた。
一人は少年。
六六千四。
しかし、もう一人は前日影も形も無かった少女だ。
歳は今年で十二歳。
今朝方、使い一行に紹介されたワンの妹はフゥと言った。
「おにーさん。こっちこっち」
140cm程だろうか。
頭二つ分以上小さな少女が凸凹の酷い道を軽く先行しながら導く。
暗い場所でもよく映える白い肌と紅の瞳が少年の視線を惹いた。
何でも色素の異常。
所謂、白子というものらしい。
少し病的ですらある細い身体。
薄らと血管の透けた肌は病弱や夭逝という言葉を想起させるのに十分だ。
ワンに似ているのは少しきつめの目元くらいだろうか。
明るく人懐っこい表情が無ければ、病院が似合いそうな倖薄少女。
それが千四のフゥに対する第一印象だった。
「此処から先はちゃんとフゥさんの言う事を聞かないと死んじゃうアルよ」
「フゥ、さん……」
どう呼ぶべきか悩んだ末にそう呼んだ千四が明るい病弱(そうに見える)少女にポツリと呟く。
「何アルか?」
細い眉。
お河童頭の少し赤み掛かった髪。
ポッキリと簡単に手折れてしまいそうな造花を思わせる首が傾げられる。
小さな白いベレー帽にこれもまた純白のトレンチコート姿で振り返った相手に何と言うべきか迷って。
しかし、やはり言うべきかと決意して。
千四が真面目な表情を作った。
「別に語尾へアルは付けなくても」
「え……?」
フゥの目が丸くなる。
「ニホンの人は大陸の人の言葉の最後にアルを付けると信じているってサブカル大全に載ってたのは、まさか嘘!?」
驚愕の真実を聞かされたらしい。
「別にそういう常識は無いと……」
「フ、フゥさん。ま、間違ってたアルか!?」
冗談じゃなさそうな驚きように少年は頭痛がした。
そんな大全を作った奴がいるとしたら、張っ倒してやりたいとの思いが彼の脳裏の大半を占める。
何処の誰だ。
儚げな病弱少女に日本のサブカルを与えたのは!!?
そんな千四の深い憂慮とは裏腹に何事かを思案していたフゥの表情がパッと閃きを宿す。
「おにーさん。フゥさんは間違ってたノン」
「ノンも要らない気が」
「これからは普通にしますデース」
「いや、普通はデスかマスでいいと思う」
「そう、デスか?」
何故か誇張された英語訛り。
それ以外の日本語が恐ろしくネイティブに近い事を考えても日本人が言葉遊びをしているようにしか聞こえない。
「です、だけでいいと思う」
「分かりましたです。おにーさん」
「……もうアルで良い気がしてきた」
コントに付き合わされている気分で少年がぐったり囁き。
フゥがにこりと頷いた。
「日本語って難しいアルね」
最終的に元に戻った語尾には突っ込まず。
千四が少女の横までようやく追い付く。
安全靴を履いているとはいえ、周囲の悪路は思っていた異常に歩き難く。
朝食後の軽い運動程度に考えていた千四はヲタゲーマー魂を発揮して、ゼェゼェと体力の無さを露呈した。
「おにーさん。大丈夫アルか?」
「一応、自分で言い出した事だし、まぁ……」
唾を飲み込みながら、自分とフゥの歩き方の何処が違うのだろうかと少年は細い少女の全身を眺めた。
「どうかしたアルか?」
「いや、別に……それよりも案内をお願いしておいて何だけど、大丈夫か気になって? 君は少なくとも、ワンさんの妹であのビル側の人間なわけだから」
トコトコと。
再び歩き出したフゥに続きながら、千四が周囲を見つめる。
人の気配はするし、人影も建物にはある。
しかし、誰も出ては来ない。
「姉と同じ使いアルから、お気に為さらず」
「難しい言い回しも分かるなんて、もしかして日本に留学でも?」
「姉が暇潰しに買って来てくれたライトノベルを昔から、アル……///」
少し恥しげに言う少女があまりにも年頃らしかったから。
少年は思わず笑ってしまった。
「な、何か可笑しいアル?」
「いや、少しだけ……昔を思い出させてくれたから」
割れた窓硝子もそのままな道の両脇には乱雑に張られた板と釘の壁があちこちにある。
汚物の匂いが漂う場所を黒と白の外套が場違いに歩いているというのに誰も近付いてこない。
ビルも家屋も商店も何もかもが四年前のまま。
止まってしまったかのように錯覚する街の中。
折れ曲がった街灯に背を預けて。
千四は恵まれた国の“小さな大人達”が失ってしまったものを持つ少女を見つめた。
「今の僕の国は少なくとも四年前から、照れたり、恥しがったりする同年代は凄く減った。それに比べたら……自然に見える」
「そ、そう、アルか?」
「言葉もネイティブ並みだし」
「ほ、本当アルか!?」
ズイッと迫ってくる顔に千四が頷いた。
「少なくとも、ウチの国じゃ正しい日本語が絶賛崩壊中で……」
苦笑する千四の言葉は事実だ。
四年前から成人年齢が過去の慣例にならったわけでもないのに十四歳まで引き下げられた通称“元服”の影響で大人みたいに話す“小さな大人”が増えた。
無論、社会の要請が変化を促した結果なのだから、本来は“大きな大人達”こそ、それを受け入れるべきだったのだが、未だに相手から投げ掛けられる言葉にキレる教育者は後を絶たない。
「えへへ。おにーさん。ありがとうアル」
「どういたしまして」
はにかんだフゥの頭を千四が撫でると。
少女はそれを受け入れた後。
再び、道を明るく歩き出した。
「そう言えば、名前聞いてなかったアル。お名前は何アルか?」
「六六千四」
「むろ、せんし? ええと、戦士?」
後ろ向きに歩きながら器用に凸凹を避けるフゥに感心しつつ千四がどんな勘違いされているのかを何となく理解した。
そもそもが珍しい名前だ。
普通に言葉だけで『戦士なんて凄い名前だね(キラキラネームかよ)』と言われ慣れた彼からすれば、フゥの考えている事も予想出来た。
「戦う方じゃなくて。数の千に四と書いて千四って読むから、分かり難いかもしれない」
「千に四……」
フゥに近付いて手に千と四。
それから1004と彼が書くと少しの間が空き、理解したのか。
コクコク頷きが返される。
「おにーさんはまさか、ニホンに今も生息するという忍者戦士の末裔アルか!?」
「何か発想が間違った日本観満載な気が……」
「あ、少し待つアル」
まだ、そんな会話が続くと思っていた千四を手で押し留めて。
フゥが人差し指を唇の前に当てた。
頷いた少年が少女の指示に従って押し黙る。
すると、少女がトコトコと薄暗い路地へと向かい手招きした。
誘われるままに少年が後を追う。
すると何とも言えない腐敗物特有のアンモニア臭が漂い始める。
眉根を寄せて、あまり見たくないものを道の先に想像した千四だったが、歩みは止めなかった。
やがて、路地裏から出ると半壊した車両と電柱で道が塞がれた一角に出る。
周囲の事も気にせず。
こっちこっちと手招きしたフゥが骨組みだけとなった車両のフレーム近くへ彼を誘った。
「………」
嗅いだ事のある臭い。
それは四年前の避難生活を思い起させる。
莫大な死者を出した巨大災害から一週間程の事だろうか。
キャンプ近くではよくその臭いが問題となっていた。
電源の喪失。
満杯の保管所。
地域の体育館や辛うじて残ったものの、居住には適さない施設を総動員して行われた作業。
最初の三日は吐くものが続出したが、一週間二週間経つと慣れる者も多かった。
感覚を麻痺させれば、大概の事に人間は動じなくなる。
「あ~これは一週間くらい経ってるアルね」
フゥが懐から取り出したハンカチで顔の半分を蓋いながら、繁々とソレを見やる。
少年は思わず覗いてしまった事を後悔したが、半分以上顔が分からなかった事に少し安堵する自分も感じた。
人間が浮かべるとは思えない表情。
だが、それもグロ画像にある程度耐性のあるネット世代には何処か作り物めいて見える。
現実感が無いというのはそれだけで一種の救いかもしれない。
道端にあったのはもう何を着ていたかも定かではない半分腐乱した屍体だった。
「この傷口……小口径アルね。まぁ、密造された黒星辺りアルか。それにしても軍用車両のフレームという事は……此処の連中もかなり危なくなってきてるアル」
冷静に検証したらしきフゥがトコトコと千四の傍に戻ってくる。
「おにーさん。やっぱりあっちの人アルね。屍体を見るのは初めてアルか?」
「いや、ただ見慣れる程は見てないってだけで……」
「そうアルか。でも、これで周辺の治安状況が最悪なのは解って貰えたと思うアル」
「確かに……」
そもそもどうして二人切りでビルから出て街の様子を見に来たのかと言えば、千四がワンに周辺の治安情況を自分で確認したいと言ったからだ。
ワンは最初止めた。
何故なら治安が劣悪極まるのは既に言うまでも無い事で。
ビル周辺へ不用意に出るべきではないと主張したからだ。
しかし、前夜の話し合いを行った千四は少なからず自分の目で街の現状を見る事に拘った。
結果、ワンは彼の先導役として妹のフゥを付けたのだ。
最初、自分より幼い少女に危険な事をさせるのはどうかと思った千四だったが、巨乳の女秘書はまったく問題無いと二人を送り出した。
(これくらいじゃ驚かない、か……)
フゥが自分達のような恵まれた環境とは無縁の領域で生きて来たのだという事を今更に実感させられ、千四は目付きを更に悪くしながら溜息を吐く。
「おにーさん。まだ見て回るアルか?」
「一応、ビル周辺は全部」
「……あんまりニホンの人にはお勧め出来ないアルよ?」
「生憎と見知らぬ街で暴徒相手に地形も分からず立ち回れる程、戦闘慣れもしてないし、賢くも無いんだ」
千四の瞳を見つめて。
フゥがしばし瞬きした。
「変わってるアルね。おにーさんは」
「一応、此処に全員を連れて来た責任くらいは取らないと、とは思ってるもので……」
「ふふ、最初は僕の考えた最強の城官みたいな目付きの悪さだと思ってたアルが、良い人みたいアル」
「?」
「あ、気にしないで欲しいアル。ただのスラングみたいなものアル」
フゥが周囲をキョロキョロ見回してから、千四の手を握った。
「これから危険な場所を幾つか見て回るので、手を握ってて欲しいアル」
「咄嗟の時、動き辛いような」
「そこは気にしなくていいアルよ。一応、周囲からこっちは見えないアルから」
「使いの力?」
フゥが微笑みを浮かべただけで沈黙し、歩き出す。
それに千四も習った。
使いの世界で自分が何使いであるかという情報は重要なものだ。
知り合ったばかりの人間に教えられるようものではないだろう。
どんなに可憐で病弱に見えても、フゥは大陸のような過酷な世界で生きてきた人間なのだ。
不用意に自分の生命線を教えてくれるはずも無い。
「じゃあ、周辺を回りましょうアル」
絵面だけ見れば、ルンルン気分でピクニックに行く病弱少女と見えなくも無い。
しかし、彼らの往く手にあるのは瓦礫と物陰の息遣い。
そして、屍体と罅割れ雑草の生い茂るコンクリートだけだった。
それから二時間弱。
千四とフゥはビル周辺を見て回った。
時に人を見掛ける事もあったが、フゥの力のせいか。
近くまで寄っても気付かれる事は無かった。
街並みを歩く少女の手際に少年は時間一杯関心していたかもしれない。
道端に落ちている金になりそうなものを彼女は時折拾っては腰に下げたポーチに入れていた。
例えば、ボロボロの紙幣。
あるいは壊れた機械式の時計。
他にも千四には判別不能な金属片や無造作に伸びている植物。
どれもこれもビル内部に持って帰っても使い道があるかどうかすら定かではない品ばかり。
時折、耳を済ませて出会った人間の会話を盗み聞き、あっちだこっちだと危険なルートを回避しているのは何となく彼にも分かった。
高いナビゲーション能力はワンが連れて行けと言うのも理解出来るものに相違ない。
「此処の区域で最後アルよ」
ビルの屋上から見渡して一応は気に留めていた一角。
錆付いた倉庫とプレハブが立ち並ぶ景色。
数百mに渡って続く倉庫の群れ。
その半分以上は崩落しているが、廃屋にしては屋根が真新しく補修されている場所もあると気付いて、千四は僅か人の営みがあるのだと知る。
トコトコと迷い無く歩くフゥに付いていけば、無人と思われた区域にもちらほらと人のいる気配。
適当な倉庫を覗けば、瓦礫の山を漁る者が数名いて、糧探しに勤しんでいる。
「この辺はねーさんが仕切っているのでまだ何かあると思って漁ってるみたいアルね」
「じゃあ、さっきの屍体は……」
「おにーさん。頭良いアル……そう、かなり危ない兆候アル」
ワンが仕切っている領域。
その中でさえ知らない内に軍人と思しき者が殺害されている。
治安が加速度的に悪化しているのは間違いないだろう。
「近頃は軍閥も一枚岩じゃなくて負けた側が追い出されて夜盗紛いの事をしてるアル。離脱時に武装や弾丸の類を持ち出すのがお決まりで、勿論言うまでも無く凶悪な連中ばかり……それを殺して金目のものを奪うなんて、一年前なら殆ど見られなかった光景アルよ」
「……そろそろ帰ろう」
「そうアルね」
千四が切り上げようとした時、フゥが視線を空に向けた。
「どうかした?」
「ちょっと、付いて来て欲しいアル」
手を離したフゥが足音も立てずに歩き出した。
何も言わずに従って歩き二分後。
半分崩壊したと見える倉庫の前に二人程、人が屯していた。
その姿は冷え込みが厳しい地方のせいか。
青いパーカーにジーパンという出立ち。
三十代程だろうか。
無精髭の生えた男達の腰には無造作に黒い小口径の拳銃が突っ込まれていた。
その脇を通って半開きになっている扉の前まで行くとフゥが彼を手招きする。
(度胸試しはあんまり……せめて、致死性トラップくらいはどうにかして欲しいところではある……)
緊張しながら真横を通って千四がフゥに合流し、開いた扉の奥へと入る。
すると陽の光に照らされた崩壊部分とは裏腹にまだ崩れていない場所があった。
(―――これは?! こんなものまで横流しするのか?!)
「久しぶりに驚いたアル。さすがにこれは……こんな大物を用意するなんて、軍閥連中が直接関わってるとしか思えないアルね……」
フゥは影となった無傷の地面に鎮座する軍用車両とその上に乗っかっている太く長い鋼鉄の束……車両積載型の明らかにミサイルとしか見えない代物に目を見張っていた。
「おにーさんに感謝しないとならないアル……こんなので狙われたら、さすがにあのビルでもヤバかったアル」
「此処で処理するのか?」
「連絡を入れて強襲部隊を編成させてる間に撃たれても面倒。となれば、やる事は一択アルよ」
「解体する技術でも?」
「機械なんて分からないアルが、マニュアルくらいは読めるアル」
「一応、これを此処で破壊する程度なら可能なんだが」
「え?」
思わずフゥが少年を振り返った。
「これでもクラスBで登録されてて……」
「……おにーさん。実はめちゃくちゃ実力者アルか?」
「新人でも能力は少し強いかもしれない」
強い、どころの話ではないのだが、其処は黙って少年が少女に告げる。
「これ、破壊出来るアルか?」
「たぶん、やるなら一瞬で」
「……いいアルか?」
何を確認されているのか。
そんなのは分かり切っている。
しかし、一瞬見せた程度で千四の力が理解出来るような類のもので無いのは彼自身が一番良く分かっている。
「じゃあ、悪いけど任せましたアル」
頭を下げる少女に日本を一生懸命学んでいるのだろうと感じて。
僅か口元を緩めた少年は現代兵器、それも大物を前に日本で訓練し続けてきた成果を披露した。
ツイッと人差し指が虚空をなぞる。
するとミサイルがグニャリと拉げていく。
その様子はまるで海老が熱されて丸まっていくようにも見えた。
その凄まじい様子から破壊音が響くと思っていたフゥはすぐ近くにいるのにまったく音がしない事に驚いて思わず少年の方を見やった。
海老ぞりのオブジェと化した鋼の槍より、少年の方が余程に稀有なのだと理解したからだ。
「す、凄まじいアル……」
「これだけ曲げておけば、弾頭も取り出せないだろ」
よく観察してみれば、ミサイルの先端から後部まで捻れて変形していた。
ついでに車両も折れ曲がっている。
これでは動かす事も弾頭だけを取り出す事も出来ないだろう。
一瞬で近代兵器を無力化した少年の手際は大陸で生き残ってきた使いであるフゥにしても目を見張るものに違いなかった。
「さっさと帰ろう。これの持ち主がどうするにしろ。こっちから連絡も入れなきゃならないしな」
コクコクと頷いたフゥが腰の後ろに付けていた軍用端末を取り出そうとした時だった。
騒がしい声が周囲に近付いてくるのを悟って、少年が困ったように頬を掻く。
「何か監視装置でも置かれてたか……とにかく退散しよう」
「そうアルね。あ、ねーさん。実は―――」
「言ってる場合じゃない!!」
少女を連れ立って、少年が倉庫内からザッと外へと走り出す。
どうやら倉庫内の惨状が目に入って呆然とした男達は呆気に取られているらしく。
倉庫内から逃げ出した二人には気付いていない様子で喚き始めた。
何を言っているのか言語は分からずとも雰囲気から理解した少年は遠ざかる倉庫には目もくれず。
周辺の崩れた倉庫の合間を縫って元来た道を走る。
「覚えてたアルか?」
男と女の差を差し引いても健脚で息も切らしていないフゥが訊ねた。
「これでもマッピング出来ないダンジョンの攻略は得意なんだっ」
少し息を切らしながら、千四の自慢にもならないゲーマー話にフゥはクスリと微笑む。
「やっぱり、おにーさんは戦士アルよ……」
「何か、言った、か?」
早くも一杯一杯でハァハァ言い始めた少年はまったく聞いていない様子だったが、そんな相手を少しだけ好ましそうにフゥは見つめた。
彼らが急いでビル内部に辿り着いたのはそれから二十五分後。
その頃にはフゥの連絡で即座に部隊を編成したワンが倉庫をビークルで急襲し、内部で騒いでいた男達を鎮圧したとの報が齎された。
糸を引く者を割り出す為に連行された彼らがどうなったのか。
少年は敢えて聞かなかったが、自分達がいる間は出来る限り血生臭い事をしないと前日の話し合いで約束させていた事も手伝ってか。
死人は一人も出なかったとワンは彼に教えた。
仲間達からの労いと一杯の水で一息付いた少年はぜぇぜぇと息を切らしながら、これからの【仕事】が思いやられると床に座り込んだのは当然だろう。
ようやく辿り着いた場所をまとめて吹き飛ばされるところだったのだから。
そんな彼と仲間達を見るワンの目が変わり始めた事を少年は気付かなかった。
そうして、翌日。
少年の本当の目的地への旅行が始まった。
白い小さな帯同者も伴って………。
第一章「大陸という地」了




