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第三章「破滅と奇蹟」~②~

しゅ、主人公が実は凄い奴だったんよぉ!? な、ナンダッテーという回になりました。ですが、基本的にヲタクゲーマーは凄くないので寄ってくるのはどちらかというと目が$になっている女学生とか……ハーレムものだからいいよね!! では、次回。

~②~


 二限目の休み時間。


 校内放送で全生徒の下校が告げられるとクラスはお祭り騒ぎとなった。


 しかし、真っ先に遊ぼうと誘われた本人は残念そうにしながらも用事があると言い置いて千四の腕を掴み玄関へ。


 最後にどういう関係なんですかと問われた時。


 秘密ですと人差し指を唇の前に立てた仕草に絶望と血の涙を流す男子が多数。


 女生徒にしても趣味悪いよイケメン紹介してあげるから乗り換えようと真面目に忠告する者多数。


 だが、微笑で返した豊はサッサと登校にもしようしていたらしい黒のスクーターで千四と共に学校から脱出した。


 市街地に入ると緩々走り始めた上司に彼がポツリと尋ねる。


「どうして学校に?」


「……驚いちゃった?」


「はい。とても」


「本当は昨日通達が出たんだけど、伊藤さんが驚かせてあげましょうって」


 微笑み半分に言う豊の顔は明るい。


 だが、伊藤の差し金という事に若干の思考。


 何かあるなという勘を秘めながら、千四は別の事を訊ねる。


「それで三日前の相手に付いては何か分かりましたか?」


「ちょっとだけ、なんだけど。いいかな?」


 豊がまず絶対ではないと前置きして説明を始めた。


「あの状況を生み出せる使いは日本国内に限ってはたぶん二十人くらいいる」


「二十人……」


「でも、その内の十人はウチの団体に入ってて犯人じゃないって確認が取れたって」


「残りの十人についてはつまり他の団体の使いだと?」


「うん。でも、幾つかの条件に照らすと三人まで絞り込めて……でも、彼らが実際にやったとしてもこっちから他の団体に抗議するのは無駄だって結論になったの」


「そうですか」


「怒らないの?  命狙われたのに……」


「推測ですが……相手が推定した人物である確証を手に入れるか、相手を現行犯で確保する。または身体だけでもいいから、みたいな事を言われてたりしてませんか?」


「千四君の力って予知的なものだったっけ?」


 真顔で切り返されて、千四がポリポリと頬を掻く。


「非合法組織のやり取りを想像しただけで。普通です」


「それって普通じゃないと思う……でも、凄いね。そんな風に最初から考えられるなんて」


「単に想像力が無駄に豊かなだけだと」


 豊が瞳を伏せる。


「伊藤さんからはまずどっちが狙われたのか。あるいはあたし達二人が狙われた理由の解明が先だって言われてる。確かに侵入者を炙り出そうとはしてたけど、あんな直接的に殺害しようとするなんて、使いの世界でも考えられない。組織間の事もあるし、不用意に先手を打てば誰が何をしたのかってすぐバレちゃうから」


「確かに……」


 初手必殺でないならば、能力を調べられて逆襲され、確保されてしまうというパターンも考えられるだろう。


「とりあえずね。いつ襲われるか分からないから、二人一緒に行動して貰って、それを実働部隊の幾つかが常に監視する方向で伊藤さんは事態を進めるみたい。これで周囲に犯人の姿があれば、映像なり写真なり撮って、相手側の組織に突き付けるって」


「今も監視を?」


「あたし達からは見えないようにではあるけど、ね」


「ちなみに相手の団体の名は聞いても?」


「あたし達【紅蓮朋友会】が形式的に【旧式派ステレオタイプ】って呼んでる人達の一部」


「ステレオタイプ?」


「昔から使いはそれなりの人口がある国にはそれなりの人数いたの。ただ、彼らは基本的には組織化されたりする事が稀だった。でも、誰かが管理しないとって考える人達も結構いて、少数の使いが色んな社会的な組織の下で株組織化されてたって言われてる。そういう組織が幾らか四年前の大異変以降にも生き残ってるんだって。彼らを組織の上の人達は昔ながらの頑固もの。ステレオタイプって名付けた」


「なるほど。今の話で一つ気になった事が」


「何かな?」


「【紅蓮朋友会】は新興の組織という事でいいのかと」


「うん。四年前に神様を倒した【三頭神トリグラフ】って呼ばれてる人達の一人があたし達の総代。つまり、一番偉い人なんだ」


「神を倒す?」


 いきなり何の話をされているのかと、千四が胡乱な視線になる。


「……分からない? じゃあ、最初から話すけど、いいかな?」


「どうぞ……」


「まず、四年前に何か神様って感じのものが現れて。極点の消失現象を招いたって使いの世界では言われてるの」


「ちょ、ちょっと待ってください?! つまり、その神何某がまさか四年前の……」


「うん。団体の使いになった子なら話は誰でも知ってると思う。四年前の極点消失はその神様の仕業だとか」


 思いがけず重要な情報を手に入れた千四は伊藤の顔を思い浮かべた。


 もしかしたら、本来は早めに渡されているはずの情報だったのかもしれないと。


「それでね。その神様を止めた三人の使い。それが【三頭神トリグラフ】。今、国連の外殻団体として機能してる三つの使いの団体。【紅蓮朋友会フレア・フレンズ】【黄昏領ヴェスペラード】【愛国者組合パトリオット・クラブ】を創った人達なの」


「つまり、使いのトップ?」


「うん。三人が三人とも使いの中では一番上の力を持ってて。其々が自分の生まれた地域を受け持つ団体を作って、四年前から混乱した世界でも使いが生きられるよう活動してる」


(四年前の真実……神様? 馬鹿げてるとは、言えないか)


 今の自分の状況が昔見たライトノベルにも劣らないものになってしまっている事は千四が一番よく自覚している。


「それまで基本的に表舞台に出てこなかった使い達が各国で自発的に自らを統治する事で不要な混乱を避けたから、国もそれに対して利害。この場合はお金とか権利とか。そういうのを保障してるの。って言っても【紅蓮朋友会】は他の団体と違って国からの補助金もあんまり貰ってないし、使いを表側の分野で利用したりするのを嫌がってるから、台所事情はあんまり良くないんだけど」


「表側……軍事分野ですか?」


「そう。他の団体が管理する場所だと色々研究されてるとか」


「………」


「あの、千四君」


「はい。何ですか?」


「もしかして、伊藤さんから少しも聞かされてなかった?」


「ええ、まったく」


「……ごめんなさい」


「蘆夜さんが謝るような事じゃありません」


「でも、四年前の真実を聞かされたって納得出来ない子は一杯いるから。神様って何とか。どうして極点が消えたのかとか。そう食って掛かる子も多いし……」


「別に四年前の真実がどうこう言う気はありません。そもそもそんな事を知ったからって何がどう変わるわけでもない。起きた事は変えられない。死者も甦らない。なら、そんな真実よりは今必要な事実を求めるのが妥当。僕は少なくともそう思います」


「……うん」


 何処か沈んだ様子でスクーターの速度が落とされる。


 千四が前を向くともうビルが見えてきていた。


「今日これから蘆夜さんは?」


「千四君を伊藤さんのところに連れて行って詳しい事情を説明してもらってから、訓練に付き合う事になってるよ」


「訓練……」


「伊藤さんが君の使いとしての力を少しでも上げておけば、もしもの時も役立つはずだって」


「分かりました」


 スクーターが停止し、ようやく地面に降り立った千四はそこから伊藤のいる執務室まで行き、詳しい事情を説明され、ついでに訓練をするように言われて地下へと向かった。


 これでほぼ十分。


 施設の使用や内部構造に詳しくなってきた為に移動に手間取るような事も無くなっていた。


 結局、伊藤の説明の大半は最もで頷けるものばかり。


 諸々、団体の事情を一々説明していなかった事についてもゴタゴタ続きで忙しかったと言われてしまっては責められるものでもなく。


 千四は大人しく訓練を指導される事となった。


 扉を潜れば、其処はもうコンクリート壁に囲まれただだっ広い訓練場。


「お、また来たね……どうも、監察官」


 微妙に表情を固くした後。


 豊に頭が下げられる。


「佐上さん」


「年上にさん付けで呼ばれるのはちょっと」


 苦笑したのは扉の先。


 数日前と同じように屯していた三人組の一人。


 貝塚佐上だった。


 他の二人は何処か緊張した面持ちで壁際に腰掛けており、黙りこくっている。


「蘆夜豊と言います。貴方が此処のDクラスの?」


「ええ、貝塚佐上。仲間達からは佐上と呼ばれています。どうぞお見知りおきを」


「いえ、構いません。今日は千四君の訓練に来ただけで、あたしの訓練じゃありませんから」


「そうですか。じゃあ、僕が教える事はなさそうだ。千四君頑張って」


 佐上がスゴスゴと壁際の二人の元へと帰っていく。


 その様子に千四は豊を見つめた。


「どうかしたのかな?」


「いや、何だか前に来た時とは違って全員緊張しているみたいだったので」


「あぁ、それはきっとあたしのせい。ハイクラスの使いになると使い同士で気配みたいなのが直接的に感じられたり、位置まで分かっちゃったりするから」


「じゃあ、あの襲撃は……」


「うん。気配さえ分かれば付いて来るかなって誘い出してたの。ごめんね。危険な目に合わせちゃって」


「いえ」


「じゃあ、さっそく訓練の話なんだけど。何処まで訓練したか聞いていい?」


「何処までというか。前に一度佐上さんとした時は……」


 その時の状況を詳しく話した千四に豊がふむふむと頷く。


「じゃあ、まずは出来る事の最大値を測ろっか。他の人達と一緒に一番遠い壁まで避難してるから、合図したら思いっ切り風を吹かせてみて」


「分かりました」


 佐上達のところまで戻ると豊が何事かを話し、遥か後方の壁際へと退避していく。


 そうして片手が上げられた。


 合図を受けて。


 千四が前回は出来なかった風が何処まで強くなるか試してみようと人差し指をツイッと虚空に滑らせる。


 するとすぐに風が吹き始めた。


 轟々と唸りを上げて空調の音を掻き消していく風はやがて暴風となり、壁際へと波濤となって押し寄せていく。


 風速30m40m50m―――。


 明らかに台風程度では済まない風がコンクリート壁に当たりながら散らされ、巨大な訓練場内部を対流し始め、背後の壁際で見ている四人は早くも息苦しさを覚えていた。


 前回とは違って終わり無く風速が上がっていく。


 しかし、途中でポンポンと千四の肩が叩かれ、途端風が止んだ。


 だが、止んだ後も周囲の動いていた空気の流れまでは止まらなかったか。


 未だ内部には暴風に近い対流が生まれている。


「千四君。大丈夫?」


「あ、はい。どうでしたか?」


「うん。まだ、君にも分かってない事が幾つか分かったから、ちょっとあっちでお話しよう」


「分かりました」


 素直に頷いた千四が能力使用中バタバタとはためいていた制服の乱れを少し直して三人のいる反対側の壁際へと歩いていく。


 その背中を佐上達三人が三人とも驚いた視線で見ていた。


「ね、ねぇ。佐上……あれ、もしかして【制約値レストリクション】上限が皆無の階梯レベル?」


 智紗がヒソヒソと訊ねる。


「どうだろう? 今まで嵐使いみたいな人は確認されてるらしいけど、【外力排除能力ボーギョリョク】は普通だったとか。もし、同じような系統で大型の使いになると……大きく見積もってもBクラス。だけど、【制約値レストリクション】の上限無し。【外力排除能力ボーギョリョク】が優秀で自己能力の影響を受けない【履歴否定効果ノン・ヒステリシス】込みのタイプだと直接戦闘にしても戦略級B+。もし、これで【並列起動限界(MTL)】が優秀なら……」


「バケモンじゃねぇかよ……あの新人ルーキー


 蒼雲が呟く。


「で、でも、おかしくない? おかしくない? 全然、そんな気配しないんですけど」


「確かにそれが疑問だ。でも、それよりも気になるのは」


「暗さか?」


「ああ」


「な、何、二人で分かった顔してるのよ?!」


 佐上が声を潜めた。


「周囲がやたら暗くなかったか?」


「え? あ、そう言えば……」


 智紗は先程の光景を思い出していた。


 暴風が吹き荒れ、周辺が暗くなって、今にも世界が終わりますとか、これから死ぬかもとか。


 そんな不安感が未だ内心に残留している。


「此処の光源はファイバーを通して内壁から放出されてる。曇りの時は光を内部の電源で生み出して供給する仕組みになってるから、停電時や夜も使用が可能なわけだが……さっきは暗かった」


「単なる風を起こす能力みたいなものじゃないって事か?」


 蒼雲に佐上が頷く。


「監察官は風を起こせと言った。でも、風が起きると同時に暗くなった。何が使えるのか定かじゃないが、少なくとも風よりは含有する意味が大きい“何か”を使ってると見るべきだ。単一能力に含まれる自由度は何を使うかによって変わる。順当に行けば大気使い。それに近い大型の気象系統や現象の語彙にあの能力の本質があるような気がする」


「お得意の推測か?」


 蒼雲の言葉に佐上が頷いた。


「これでも此処の教育係りだからな」


「じゃ、じゃあさ!! もし、今の内にソッコー落したら、玉の輿じゃね?!」


 智紗が目をキラキラさせた。


 二人の男性陣が肩を竦める。


 瞳に$が映っているような女に対する正当な対応だろう。


「お前、あんな目付き悪りぃのがいいのか?」


「顔と身体は別物。財力と顔も別物。そゆこと」


「うぜぇ。あの監察官くらい清楚になったら、頷いてやるよ」


「最初、『カリンちゃん!?』とかキモい事言ってたのは後でフイチョーして回る」


「ちょ、お前ぇ!?」


 二人のやり取りに呆れながら佐上がは瞳を細めた。


 遠方の壁際で豊と千四が何やら話し込んでいる。


 どうやら結論を得たようで。


 また別の動作で訓練を始めるのも真直だろう。


(さて、どうなるか。見物だな)


 再びの測定では能力を同時にどれだけ発現出来るのかを見るらしい。


 金に目が眩んだ智紗の言葉では無かったが、確かに将来を見据えてパイプを作っておくのは悪くないと佐上は思い始めていた。


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