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ハズレスキル【フライドチキン】で胃袋無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


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修行遠征

 低温保存庫を広げてから数日後。


 営業を終えて第二拠点へ戻ると、《暁の牙》のみんなが食堂に集まっていた。


 夕食を並べて、僕も席につく。

 しばらく普通に食べていたグレンさんが、ふと思い出したように顔を上げた。


「そういやテオ。店、一か月くらい空けられるようになったんだよな?」

「準備すれば、ですけどね」

「よし。じゃあ修行するぞ」

「……誰のですか?」

「お前の」

「僕!?」


 いきなりだった。


「ちょっと待ってください。修行って何するんですか?」

「遠征だ。一か月くらい」

「話が早すぎません?」


 グレンさんは気にせず肉を頬張る。


「前に六人で出たの、三日だけだったろ?」

「そうですけど」

「あのあと店が忙しくなって、まともに長い遠征なんかできてねえじゃねえか」

「それは……そうですね」


 初めて六人で出た遠征から、ずいぶんいろいろあった。


 新しい店を開いて、店員を増やして、魔物の持ち込みを始めた。

 冷凍設備を作って、金羽キジまで育て始めた。


 冒険者として長く町を離れる時間なんて、ほとんどなかった。


「だから今度は、そっちに時間使おうぜ」


 グレンさんが言う。


「テオはまだCランクだった頃の経験がほとんどだろ?」

「はい」

「俺たちと同じことやれなんて言わねえよ。できるわけねえし」

「そこまではっきり言います?」

「当たり前だろ。こっちは何年Sランクやってると思ってんだ」


 レオンさんも頷いた。


「三日一緒に動いた程度で俺たちと同じように動けたら、その方がおかしい」

「……それはそうですね」

「だから経験を積む。それだけだ」


 その言い方なら、僕にも分かった。


「修行って聞いたから、朝から剣を振らされるのかと思いました」

「振りたいなら付き合うぞ!」

「遠慮します」

「即答か!」


 ドーガさんが笑った。


「剣振るだけが冒険者じゃねえからな。長く外に出りゃ嫌でも覚えることはある」

「一か月ずっと野営ですか?」

「町にも寄る」


 レオンさんが答える。


「いくつか地域を回るつもりだ。途中で依頼も受ける。森を歩くこともあれば、山にも入る。魔物が出れば戦うし、何も出なければ歩くだけの日もある」

「普通の遠征をするんですね」

「そう。今回はそれが修行」


 ヴィオラさんが短く言った。


「テオ、経験少ないから」

「分かってますけど、ヴィオラさんに言われると刺さりますね」

「事実だから」

「もう少しこう……」

「頑張って」

「急に優しくなった」


 ヴィオラさんは満足そうに肉を食べている。


「戦闘も、今までよりテオにやってもらうぞ」


 グレンさんが続けた。


「もちろん相手は選ぶ。危ねえ奴に一人で突っ込ませる気はねえ」

「それはお願いします」

「でも、毎回俺たちが全部押さえて最後だけお前、じゃ修行にならねえからな」

「なるほど」


「魔物を探すところからやってもらう」


 レオンさんが言った。


「僕もですか?」

「ああ。痕跡を見たり、鳴き声を聞いたり、どこにいそうか考えたりな。分からなければ教える」

「追いかけるところも?」

「当然」


 そこで、ふと気になった。


「……それ、鳥型魔物でもやりますよね?」

「そりゃいるならな」


 グレンさんが答える。


「どうした?」

「いや……もしかしたら、〖フライドチキン〗にもいいのかなって」


 みんなの視線が集まった。


「金羽キジのことで分かってきたんですけど、僕の祝福って、早い段階から関わって、その関わりが途中で切れずに最後まで続いた方が強く出るみたいなんです」

「うん」


 セシルさんが頷く。


「それで今、飼育の段階から関わった場合も調べようとしてるんだよね」

「はい」


 僕は少し考えながら続けた。


「今までは、狩ったあとのことばかり見てました。でも、探すところから僕も関わって、そのまま狩りに参加して、仕留めて、料理まで関わり続けたら……そこも祝福に影響するかもしれません」

「なるほどな!」


 グレンさんが嬉しそうに身を乗り出す。


「じゃあちょうどいいじゃねえか! お前も鍛えられるし、祝福も試せる!」

「まだ変わるか分かりませんよ」

「分からねえから試すんだろ!」


 それはそうだった。


「治癒も使っていいからね」


 セシルさんが言う。


「もちろん、僕がいるときに無理して治癒師をやる必要はない。でもテオは使えるんだから、必要な場面があれば手伝ってもらう」

「はい。それはやりたいです」


「料理は?」

「毎日お願いします」

「そこは修行じゃなくても僕なんですね」

「当たり前だろ!」


 グレンさんが即答する。


「一か月もテオの飯食えるとか最高じゃねえか!」

「僕の修行ですよね?」

「修行だ! 飯も食う!」

「そこは別にしてくださいよ」


 笑いながら言ったけれど、だんだん実感が湧いてきた。


 一か月。


 そんなに長く店を離れたことはない。

 少し不安はある。


 でも、行ってみたい気持ちの方が強かった。


「いつ出るんですか?」

「おっ」


 グレンさんが笑う。


「行く気になったか?」

「最初から嫌とは言ってませんよ」

「なら決まりだ! 一週間後に出るぞ!」

「一週間後!?」


「店の準備いるんだろ?」

「いりますけど……」

「じゃあちょうどいいじゃねえか!」


 グレンさんが楽しそうに笑った。


「一か月、みっちり修行するぞ!」

「……お手柔らかにお願いします」

「それは無理だな!」

「やっぱり不安になってきました!」

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