表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ハズレスキル【フライドチキン】で胃袋無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
65/87

育てた金羽キジ

 最初の雛が孵った二日後、もう一つの卵からも雛が生まれた。


 残る一つは最後まで変化がなかった。


「原因は分かりません。最初から孵らない卵だったのか、運ぶ途中だったのか、私たちの温め方が悪かったのか」


 エルナさんは失敗も帳面へ残した。


 二羽の雛は、虫を混ぜた餌をよく食べた。木の実だけだった頃より体重が増え、日に日に脚も太くなっていく。


 成長に合わせて餌の量を変え、飼育箱を広げた。暑がれば温度を下げ、床をつつき続ければ土の場所を増やす。


「また広げるの?」

「狭そうなんです」

「じゃあ広げよ!」

「まずわしに相談せい!」


 エルナさんが問題を見つけるたび、キアラさんとオルドさんが飼育箱を直した。


 僕も朝の仕込み前と閉店後に、餌やりや掃除を手伝った。


 どこまで関われば【フライドチキン】が育てたと認めるのかは分からない。それでも、餌を与えた日も、掃除をした日も、すべて帳面へ記録してもらった。


 雛が育つ一方で、成鳥の飼育はなかなか進まなかった。


 人が近くにいれば餌を食べず、物音に驚けば壁へ向かって走る。けれど、目隠しを増やし、世話をする時間を揃えると、少しずつエルナさんの前では動くようになった。


 やがて、その成鳥が一つの卵を産んだ。


「孵るんですか?」

「無精卵かもしれません。捕まる前に雄と交尾していたなら可能性はありますけど、これだけでは分かりません」


 温めてみたものの、卵に変化はなかった。


「やっぱり雄が必要ですね」

「ロイドさんに相談しましょう」


 話を聞いたロイドさんは、少し考えてから頷いた。


「雄か雌か、捕まえる前に確実に見分けるのは難しいぞ」

「それでもお願いします」

「分かった。今度は一羽捕まえて終わりじゃなく、しばらく探してみる」


 十日後、ロイドさんは雄と思われる金羽キジを連れてきた。


「気合い入れすぎましたね、ロイドさん」

「前に卵まで見つけた俺に、今さら言うのか?」


 雄は雌以上に暴れた。


 同じ場所へすぐ入れるのは危険だったため、飼育場を仕切り、互いの姿だけが見える状態から始めた。


 近づけば威嚇する。

 離せば落ち着く。

 仕切りを外せば追い回す。


「駄目です! また分けてください!」


 最初の顔合わせは数分で終わった。


 それでも日を置いて何度か試すうちに、二羽は同じ場所で餌を食べるようになった。


 さらにしばらくして、雌が再び卵を産んだ。


 一つ目は孵らなかった。

 二つ目も変化がなかった。


「雄と一緒にしたからって、すぐ全部が有精卵になるわけじゃないんですね」

「そもそも相性が悪い可能性もあります。でも、まだ決めつけるには早いです」


 三つ目の卵に、初めて中の影が見えた。


 そして人の作った飼育場で産まれた卵から、一羽の雛が孵った。


「孵りましたね」

「孵りました」


 エルナさんは喜びながらも、すぐ帳面を開いた。


「これで一度は成功しました。でも、安定して増やせるかは別です」

「次も試しましょう」

「もちろんです」


 それから数か月。


 孵らない卵もあった。

 生まれても餌を食べず、弱ってしまった雛もいた。

 餌を変えた翌日に糞の状態が悪くなり、慌てて元へ戻したこともある。


 そのたびにエルナさんが記録し、原因を考え、次の育て方を変えた。


 飼育場は一つ増えた。

 雛用の箱も三つになった。

 世話をする人も、エルナさんを中心に二人雇った。


 最初は万年Dランクと呼ばれていたエルナさんが、今では誰よりも金羽キジの変化に早く気づく。


「この一羽、昨日より餌を食べてません」

「僕には同じに見えます」

「朝から歩く回数も少ないです。少し分けて様子を見ます」


 翌日、その一羽は糞の状態も悪くなった。


 早く分けたおかげで他の雛には広がらず、数日後には元気を取り戻した。


「すごいですね、エルナさん」

「毎日見てるから分かっただけです」


 そう言いながら、少し得意そうだった。


 最初に孵った二羽も、いつの間にか成鳥と変わらない大きさになっていた。


 金色の羽は野生の成鳥より少し淡い。

 肉付きは十分で、体重の増加もここ数日は止まっている。


 エルナさんが二羽を確認し、帳面を閉じた。


「テオさん。最初に孵った方は、もう十分育っています」

「食べられる大きさですか?」

「はい。これ以上育てても、餌の量ほど体重は増えないと思います」


 ついに、その日が来た。


「では、明日にしましょう」

「分かりました。今日の夜から餌を調整します」


 エルナさんは迷わず答えたあと、成長した金羽キジを見た。


「育て方も、食べた餌も、テオさんが世話をした日も、全部記録してあります」

「ありがとうございます」

「私は育てるところまでです。あとはテオさんが、どう料理になるのか確かめてください」


 僕は頷いた。


 明日、人の手で育てた金羽キジを初めて料理する。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ