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ハズレスキル【フライドチキン】で脳汁無双 〜追放された治癒師、揚げた鳥がうますぎて冒険者ギルドに囲われる〜  作者: あゆと


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法則と現時点最強

 一週間で、法則は二つに絞れた。


 法則①【鳥の格】

 いい鳥ほど、味の土台は強い。


 法則②【テオの関与】

 僕が早い段階から関わるほど、祝福が濃く乗る。


 処理済みの高級鳥は、たしかにうまかった。

 肉はきれいで、脂もいい。焼いてもうまい。揚げてもうまい。

 でも、それは高い鳥のうまさだった。


 僕が関わったのは調理からだ。

 とどめも刺していない。血抜きもしていない。羽の処理もしていない。

 だから、祝福の乗り方は浅かった。


 最初のツノコッコは逆だった。


 低級の鳥魔物。

 硬い肉。

 買い取り不可。


 素材としては高くない。

 でも、僕が倒した。僕の炎魔法で火が入った。

 だから、あれだけ跳ねた。


 ツノコッコが最強だったわけではない。

 僕がどこから関わったかで、味が変わる。


 それが分かった。


 最高条件【格の高い鳥を、僕が自分で倒して調理する】


 たぶん、これが一番上だ。

 でも、今は無理だ。


 格の高い鳥は高い。

 生け捕りなんて買えない。

 自分で狩りに行く力も、まだない。


 だから、現時点の答えはこっちだ。


 現時点最強【普通の生け捕り鳥】


 普通の鳥を買う。

 僕がとどめを刺す。

 僕が血抜きをする。

 僕が羽を処理する。

 僕が部位を分ける。

 僕が塩をなじませる。

 僕が衣をつける。

 僕が油で揚げる。

 最後に、炎魔法で香りを立てる。


 素材は普通。

 でも、僕の関与は深い。


 宿の厨房で仕上げた皿を、僕は自室へ持ち帰った。


 窓は開けた。

 扉の隙間には布を詰めた。

 それでも、匂いは消えない。


 皿の上には、揚げたての鳥肉がある。


 衣は薄め。

 油は重すぎない温度。

 最後に炎魔法を軽く当てた。


 焦がしてはいない。

 香りだけを立てた。


 見た目は、ただの揚げ鳥だ。


 ただの揚げ鳥のはずだ。

 なのに、匂いがもう違う。


「……いくか」


 一切れ持ち上げる。


 衣が軽い。

 指先で、かさ、と鳴る。


 口に入れた。


 ざくっ。


 熱い脂が舌に落ちた。


 衣は軽いのに、香ばしさが強い。

 肉は普通の鳥のはずなのに、噛むたびに味が出る。

 塩が奥まで入っている。

 最後に立てた炎の香りが、あとから戻ってくる。


 飲み込んだ。


 すぐ、次の一切れを見た。


「うっま!!!!」


 声が出た。

 部屋で一人なのに、かなり大きかった。


「やばい。これは、やばすぎる」


 もう一口。


 ざくっ。


「うっま……!」


 止まらない。

 これは止まらない。


 処理済みの高級鳥より、近い。

 味が、こっちに来る。

 手を伸ばせと言ってくる。


 素材だけなら、高級鳥に負けている。

 でも、僕が命を止めるところから関わった。


 血抜きも、羽処理も、衣も、油も、仕上げも、全部やった。

 だから、普通の鳥がここまで来た。


「……これが、現時点最強」


 言ってから、笑った。


 現時点。

 いい言葉だ。

 まだ終わっていない。


 これは、今の僕が作れる一番だ。

 でも、世界で一番ではない。


 普通の鳥で、これだ。


 なら、格の高い鳥なら?


 処理済みの高級鳥を買うのではなく。

 高級鳥の生け捕りを買うのでもなく。


 僕が自分で倒して。

 僕がさばいて。

 僕が衣をつけて。

 僕が揚げたら。


 最高級の鳥を、最初から最後まで僕が扱えたら。


「……」


 ぞくっとした。


 怖いのとは違う。

 寒いのとも違う。


 まだ上がある。


 見えてしまった。


 普通の生け捕り鳥で、ここまで来た。

 なら、もっと格の高い鳥ならどうなる。


 肉そのものが強い。

 脂がいい。

 香りがある。

 そこに、僕の祝福が最初から最後まで乗る。


「……楽しい」


 言ってから、また笑った。


 追放された時には、外れスキルだと思った。

 でも違う。


 これは、力だ。


 僕はもう一切れに手を伸ばした。


 その時だった。


 こんこんこん!


 扉が鳴った。


 手が止まる。


 こんこんこん!


 今度は少し強い。


「テオさん! リリカです!」


 聞き覚えがありすぎる、明るい声だった。


「このいい匂いはなんですか!?」


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