《極み》と香草焼き
僕たちは雷鳴ホロホロ鳥を野営地まで運んだ。
血抜きから羽むしり、解体まで、すべて僕一人で進める。
「手伝わなくていいのか?」
ドーガさんが尋ねた。
「今回は、仕留めてから料理まで僕がやります。どこまで力が乗るのか確かめたいので」
「分かった。周囲は任せろ」
五人は野営地の周囲へ散り、警戒を続けてくれた。
僕は解体した肉を二つに分ける。片方には下味と衣をつけ、油で揚げる。もう片方には塩と香草を擦り込み、焚き火でじっくり焼くことにした。
「全部揚げないのか?」
見張りを続けながら、グレンさんが声を潜める。
「半分は香草焼きにします」
「なぜだ?」
「昨日の角兎にも、少しだけ力が乗ったかもしれません。同じ鳥を違う方法で料理すれば、比べられます」
「なるほど。両方食えるということだな」
「そこだけ理解が早いですね」
油の中で衣が色づき、香草焼きからも肉汁が落ちる。
香りにつられて魔物が寄ってくる可能性もあるため、料理が完成しても五人は持ち場を離れなかった。
僕が一人ずつ料理を運ぶ。
「前とは違う反応が出るかもしれません。最初は少しずつ食べてください」
「ああ」
まずは《極み》のフライドチキン。
衣を噛んだ瞬間、微かな刺激とともに、熱い肉汁があふれ出す。香ばしさのあとから雷鳴ホロホロ鳥の濃いうま味が押し寄せた。
次に香草焼き。
皮は香ばしく、肉は驚くほど柔らかい。香草の香りに負けない濃厚な味が、噛むたびに広がっていく。
「……っ!」
グレンさんが叫びかけ、慌てて口を押さえた。
「うっま……! やっぱり《極み》は別格だ……!」
続けて香草焼きを食べ、もう一度目を見開く。
「こっちも、ばかみたいにうまいぞ……! だが、《極み》には届かんな」
「同感だ」
レオンさんは森から視線を外さず、小声で答えた。
「香草焼きにも明らかに力が乗っている。だが、フライドチキンにしたときの方が強い」
「料理法との相性があるのでしょうね」
セシルさんの言葉に、僕は二つの料理を食べ比べた。
香草焼きも、普通に作っただけではありえないほどおいしい。
それでも《極み》を口にすると、はっきり差が分かった。
「揚げていない料理にも、【フライドチキン】の力は乗る。でも、一番力を引き出せるのは、やっぱりフライドチキンみたいです」
「名前どおりというわけね」
ヴィオラさんが小さく笑う。
「ただ、香草焼きまでこの味なら、試せる料理はまだ多そうだわ」
「はい。ほかの調理法も試してみます」
「テオ」
グレンさんが森を警戒したまま、空になった皿を差し出した。
「《極み》をもう一つくれ」
「香草焼きは?」
「そっちもくれ」
「結局、両方ですか」




