雷鳴ホロホロ鳥を捕まえろ
翌朝、簡単な朝食を済ませた僕たちは、昨夜の雷鳴が聞こえた山へ向かった。
「近い」
先頭を進むレオンさんが、地面に落ちていた青白い羽根を拾う。
「まだ新しい。この先に群れがいる」
「よし、捕まえるぞ!」
グレンさんが声を弾ませた。
「目的は神鳥の調査ですよね?」
「分かっている! その途中で捕まえるだけだ!」
「声を抑えなさい。逃げられるわよ」
ヴィオラさんに注意され、グレンさんが口を閉じる。
斜面を登ると、木々の向こうから低い雷鳴が聞こえてきた。
青白い羽を持つ雷鳴ホロホロ鳥が、十羽ほど集まっている。
「一羽だけ群れから離す」
レオンさんが小声で告げた。
「テオとセシルはここで待機。俺が追い立てる」
「任せろ」
グレンさんとドーガさんが左右へ分かれ、ヴィオラさんも杖を構える。
レオンさんが三本の矢を続けて放った。
矢は群れの周囲へ突き刺さり、雷鳴ホロホロ鳥たちが一斉に飛び上がる。
その中の一羽だけが、グレンさんたちのいる方角へ追い込まれた。
残りの群れは雷鳴を響かせながら、山の奥へ飛び去っていく。
「来るぞ!」
孤立した雷鳴ホロホロ鳥が翼を広げた。
青白い羽根の間を雷が走る。
次の瞬間、激しい雷撃が放たれた。
ドゴオオオンッ!
ドーガさんが大盾で受け止める。
衝撃で足元の土がえぐれたが、ドーガさんは一歩も退かなかった。
「今よ」
ヴィオラさんが杖を向ける。
「眠りなさい」
雷鳴ホロホロ鳥の動きが鈍る。
しかし倒れない。眠気を振り払うように頭を振り、再び翼へ雷を集め始めた。
「さすがに一度では効かないわね」
「なら、飛ばせなければいい!」
グレンさんが駆け込み、剣を振るった。
翼の前を刃が走り、雷鳴ホロホロ鳥が反射的に身を引く。
そこへドーガさんが盾ごと突進した。
巨体が地面へ押し倒される。
ドーガさんは大盾で胴体を押さえ込み、グレンさんが剣を首元へ突きつけた。
「ヴィオラ!」
「分かっているわ」
二度目の魔法が重なる。
雷鳴ホロホロ鳥の体から力が抜け、羽根の間を走っていた雷も弱まった。
「テオ、今だ!」
「はい!」
セシルさんと一緒に近づく。
目の前には、僕よりもはるかに大きな鳥型魔物がいる。
動きを封じられていても、近づくだけで足が震えた。
「大丈夫です」
隣のセシルさんが静かに言う。
「皆さんが押さえています」
「はい」
僕が雷鳴ホロホロ鳥へ手を伸ばすと、【フライドチキン】が反応した。
青白い羽根と厚い筋肉の奥に、肉をほとんど傷つけず仕留められる一点が浮かび上がる。
「見つけました」
刃を構え、狙った場所へ一気に突き入れた。
雷鳴ホロホロ鳥の体が大きく震える。
やがて全身から力が抜け、残っていた雷も消えた。
「終わりました」
ドーガさんが盾を外し、グレンさんも剣を収める。
「初めてにしては悪くなかった」
レオンさんが周囲を確認しながら言った。
「勝手に飛び出さず、合図を待った」
「待っている間、ずっと緊張していました」
「それでいいわ」
ヴィオラさんが杖を下ろす。
「怖くなくなったら、余計なことを始めるもの」
「誰のことだ?」
グレンさんが首をかしげた。
「あなたよ」
セシルさんは倒れた雷鳴ホロホロ鳥の羽根や足を調べた。
「依頼で預かった金色の羽根と似た魔力はありません。この個体は、神鳥とは関係なさそうです」
「そうですか」
「まあ、こいつは最初から食うために捕まえたからな!」
グレンさんはまったく残念そうではなかった。
「俺たちの目的の一つは達成だ!」
「依頼の目的ではありませんよ」
「《暁の牙》の目的だ!」
僕は笑いながら、血抜きの準備を始めた。
「今度は、仕留めるところから料理まで、全部僕がやります」
「ということは……」
グレンさんの目が輝く。
「《極み》か!」




