初めての野営料理
日が沈む前に、僕たちは川沿いで野営の準備を始めた。
レオンさんとドーガさんが薪を集め、ヴィオラさんは飲み水を冷やす。グレンさんは地図を確認し、セシルさんは周囲を見回っていた。
僕は自分で仕留めた角兎の血抜きを済ませ、解体へ取りかかる。
鳥型魔物ではないため、【フライドチキン】は何の反応も示さなかった。
肉は少し硬い。小さく切り、豆や乾燥野菜と一緒に煮込むことにした。
「今日は揚げないのか?」
鍋をのぞき込んだグレンさんが、残念そうに尋ねる。
「角兎ですからね。それに、三日間ずっと揚げ物を食べるつもりですか?」
「駄目なのか?」
「駄目です」
「即答だな……」
肉が柔らかくなったところで、塩と香草を加える。
湯気と一緒に香りが広がると、薪を運び終えたドーガさんが足を止めた。
「もう食えるか?」
「あと少しです」
「そうか」
そう答えながら、ドーガさんは鍋の前から動かなかった。
完成した煮込みを六人分の器へよそう。
グレンさんが最初の一口を食べ、目を見開いた。
「うまい! 角兎って、こんなにうまかったか?」
「ずいぶん味が濃いわね」
ヴィオラさんも、不思議そうに肉を確かめている。
「仕留めてすぐ処理しましたし、時間をかけて煮込みましたから」
そう答えて、僕も一口食べた。
柔らかくなった肉から、予想していた以上のうま味があふれる。臭みもほとんどなく、煮汁まで深い味になっていた。
「普通に作っただけにしては、少し出来がよすぎるような……」
「【フライドチキン】の効果か?」
グレンさんがすぐに食いついた。
「分かりません。角兎ですし、揚げてもいませんから」
「ですが、テオさんが仕留め、処理し、料理までしています」
セシルさんが静かに言った。
「ほんの少しだけ、スキルの影響が出た可能性はありますね」
「まだ断定はできません」
明確な発動の感覚はなかった。
それでも、僕が最初から最後まで関わったことが、味に何かを加えたのかもしれない。
「なら、これからも確かめればいい」
レオンさんが空になった器を差し出す。
「そのための遠征でもある。おかわりを頼む」
「俺もだ」
ドーガさんの器も、すでに空だった。
「俺たちが捕らえ、お前が料理する。鳥以外でも何か起きるなら面白いな!」
グレンさんが豪快に笑う。
「ただし、毎回こんなにうまい物が食えるなら、もう干し肉だけの遠征には戻れん!」
「戻るつもりだったんですか?」
「ない!」
食事を終えると、見張りは二人一組で交代することになった。僕はセシルさんと組み、夜中を担当する。
最初の見張りを残し、僕たちは焚き火のそばに敷いた毛布へ入った。
目を閉じて間もなく、雲一つない夜空から低い音が響く。
ゴロゴロゴロ……。
グレンさんが勢いよく起き上がった。
「雷鳴ホロホロ鳥だ!」
「今から行くのは駄目ですよ」
「まだ何も言っていないぞ?」
「顔を見れば分かります」
グレンさんは北の山を見つめ、楽しそうに笑った。
「明日の朝が楽しみだな」




