三日間の初遠征
二日後の早朝、僕は《暁の牙》の五人と新本店の前に集まった。
「本店は任せてください!」
見送りに出てきたリリカさんが、力強く胸を張る。
「三日で戻ります」
「必ずですよ。四日目になったら捜しに行きますからね!」
「そのときは店にいてください」
僕の背負い袋には、包丁や調味料、保存食、治療道具が入っている。大鍋や油は、ほかの荷物と一緒に六人で分担した。
「期限は三日だ」
町を出ると、グレンさんが全員を見回した。
「金色の羽根が見つかった場所までの道を確認し、周辺を調べる。三日目の日没までに帰還するぞ」
「神鳥らしき痕跡を見つけても深追いはしない」
レオンさんが続ける。
「今回は本格調査ではなく、六人で問題なく動けるか確かめる遠征だ」
「分かりました」
「途中で雷鳴ホロホロ鳥の生息地にも寄るぞ!」
急にグレンさんの声が弾んだ。
「そちらが本当の目的になっていませんか?」
「神鳥の調査が最優先だ!」
少し間を置いて、グレンさんが付け足す。
「雷鳴ホロホロ鳥も、かなり重要だ」
「食べたいだけでしょう」
ヴィオラさんが呆れたように息を吐いた。
グレンさんとドーガさんが前を歩き、レオンさんが少し先で周囲を探る。僕はヴィオラさんとセシルさんの間に入った。
五人はほとんど言葉を交わさない。それでもレオンさんが手を上げれば全員が止まり、グレンさんが進路を変えれば、すぐに隊列が動く。
僕だけが、毎回一歩遅れていた。
「焦らなくていいわ」
ヴィオラさんが僕を見る。
「今日は私たちの動きを覚えなさい」
「はい」
昼を過ぎた頃、先頭のレオンさんが足を止めた。
「前方に角兎が一体いる」
茂みの奥で、額に一本の角を持つ兎型の魔物が草を食べていた。
「今夜の飯にするか」
グレンさんの言葉に、レオンさんが弓を構える。
矢は角兎の足元へ突き刺さった。驚いた角兎が逃げた先を、ドーガさんの盾が塞ぐ。
「ふんっ!」
進路を失った角兎を、グレンさんが剣の柄で打った。
角兎はその場に倒れ、動かなくなる。
「死んではいない。テオ、確認してくれ」
「はい」
僕は角兎のそばへしゃがみ込んだ。
鳥型魔物ではないため、【フライドチキン】は反応しない。それでも呼吸や体の状態を確認し、食用にできると判断した。
「問題ありません。今夜の料理に使えます」
「よし!」
グレンさんの顔が一気に明るくなる。
「六人での初遠征、最初の獲物だ!」
「捕まえたのは、ほとんど皆さんですけどね」
「俺たちが捕まえ、お前が料理する。それで六人の仕事になる」
グレンさんの言葉に、僕は角兎を見下ろした。
「では、今夜はこいつを料理します」




