店員募集
「ですが、テオさん! 店は二つになったのに、働く人は増えていません!」
リリカさんに言われ、僕はコレットと顔を見合わせた。
本店は販売だけでなく、冒険者が生け捕りにした鳥型魔物の持ち込みにも対応する。町中支店と合わせれば、今の三人だけでは回せない。
「新しい人を雇うしかありませんね」
「テオさん。町中支店を、私に任せてもらえませんか?」
「コレットが、支店を?」
「はい! 解体も調理も、前よりできるようになりました。今度は私が、新しく入る人たちに教えたいです」
コレットなら、《特製》の味つけも揚げ方も任せられる。岩冠コカトリスの解体も、僕がつきっきりで教えなくても続けられた。
「分かりました。町中支店をお願いします」
「はい! 任せてください!」
コレットが笑うと、リリカさんが勢いよく手を叩いた。
パンッ!
「では、町中支店はコレットさんと、新しく雇う二人! 本店はテオさんと私、それに六人を増やしましょう!」
「一度に八人も雇うんですか?」
「店が二つあるんですよ! 本店には接客、厨房、洗い場、荷運び、解体の補助まで必要です! 六人でも多すぎません!」
鳥型魔物の持ち込みを受け付けるのは、本店だけだ。町中支店へ生きた魔物を運ばれたら、またマルタさんの店の裏が大変なことになる。
「待ってください!」
募集札を用意しかけたリリカさんが叫んだ。
「二店舗分の売り上げと仕入れ、本店での魔物の買い取り、それに八人分のお給料まで、誰が計算するんですか?」
「リリカさんでは?」
「接客と仕入れをしながら、全部の帳簿までつけたら倒れます! 経理係も一人雇いましょう!」
「では、募集するのは九人ですね」
「はい! 経理係だけは、計算や帳簿の経験がある方にします!」
コレットが、募集札へ条件を書いていく。
【テオ・フライドチキン 店員募集】
【本店 六名】
【町中支店 二名】
【経理係 一名 計算・帳簿の経験者】
【店舗スタッフは経験不問】
【本店は鳥型魔物の持ち込み対応あり】
「ほかに書くことはありますか?」
働く人にも、自分たちが売る料理の味を知っておいてほしい。
「まかないを出しましょう」
「まかないですか?」
「はい。店員にも、フライドチキンを食べてもらいたいです」
リリカさんの目が輝いた。
「それです! 絶対に書きましょう!」
「一番下でいいですか?」
「もっと大きくお願いします!」
ザザザザッ!
【まかないあり!】
まかないの文字だけが、ほかの倍ほど大きくなった。
「大きすぎませんか?」
「これくらい目立たせないと、人は集まりません!」
「まかない目当ての人ばかり来ませんか?」
「まず来てもらわなければ、選ぶこともできません!」
募集札は、町中支店と冒険者ギルドへ貼り出した。
◇
そして翌朝。
ドドドドドドッ!
「何の音ですか!?」
僕が店の扉を開けると、通りが人で埋まっていた。若い人、料理人らしい服の人、荷運びの男、町の奥さん、引退した冒険者まで並んでいる。
列は店の前から伸び、通りの角を曲がっても終わっていなかった。
「まかないで《極み》が食べられるって本当か!?」
「誰がそんな話を広めたんですか!?」
「毎日《特製》でもいいぞ!」
「商品の種類は約束していません!」
応募者たちが一斉に店へ近づいてきた。
「押さないでください!」
僕は慌てて扉を閉めた。
バタンッ!
リリカさんは窓から長い列を見て、両手を上げた。
「大成功です! これだけいれば、いい人が見つかりますよ!」
「リリカさん。この人たち、全員と話すんですか?」
「もちろんです! コレットさんと一緒に働く人も、経理を任せる人も、きちんと選びます!」
「募集するのは九人ですよね?」
僕が尋ねると、リリカさんは角の先まで続く列をもう一度見た。
「何人くらい並んでいますか?」
「百人はいると思います」
ドンドンドンッ!
「面接はまだかー!」
応募者たちが扉を叩く。リリカさんが慌てて扉を押さえた。
「テオさん! 今日の営業、始められません!」




