本店と支店
工房が完成してから、二か月が過ぎた。
その間も、オルドさんとキアラさんは冷凍設備の試作を続けていた。
ゴオオオオッ!
パキパキパキッ!
「外側は凍った! でも、中はまだ柔らかい!」
「冷気が片寄っておる! 肉の並べ方から直すぞ!」
急速凍結室も冷凍倉庫も、まだ完成していない。
《暁の牙》は何度も依頼へ出た。僕は店を営業しながら、グレンさんたちが持ち帰った鳥型魔物へとどめを刺した。
その二か月で、工房とは別に建てていた物が完成した。
「テオ! 店と拠点ができたぞ!」
依頼から戻ったグレンさんに呼ばれ、僕たちは町外れの土地へ向かった。
ガラガラガラッ!
馬車を降りると、街道沿いに大きな建物が立っていた。
「わあっ! 本当にできています!」
リリカさんが真っ先に店へ駆け込む。
バンッ!
「客席が広いです! 持ち帰りのお客さんの列も、きちんと分けられますよ!」
コレットは厨房へ走った。
「テオさん! 鍋を何個並べても、後ろを通れます!」
厨房の奥には、荷車が入れる大きな裏口がある。その先には、岩冠コカトリスを寝かせても余裕のある解体場まで作られていた。
「これなら、大型の鳥型魔物を店の裏へ転がさずに済みますね」
「もう絶対にマルタさんへ怒られません!」
リリカさんが力強く言った。
店の隣には、《暁の牙》の第二拠点も完成している。
グレンさんが大きな扉を開けた。
バンッ!
「全員分の部屋に、装備置き場、作戦を話す部屋もある。依頼から戻ったら、獲物を解体場へ運んで、そのまま休めるぞ!」
「店と拠点が、つながったんですね」
僕は広い厨房を見回した。
ここなら《極み》を作りながら、大型の鳥型魔物も扱える。
「開店の準備を始めましょう!」
「はい!」
「忙しくなりますよー!」
リリカさんの声が、新しい店いっぱいに響いた。
その日の夕方、僕たちは今の店へ戻り、必要な鍋や食器を確認していた。
そこへマルタさんがやってくる。
「テオ。新しい店ができたんだってね」
「はい。今よりずっと広い店になりました」
「そりゃよかったよ。それで、新しい店へ移ったら、ここはどうするんだい?」
僕の手が止まった。
「ここを、ですか?」
新しい店を作ることばかり考えていて、今の店をどうするか決めていなかった。
「町外れの店まで、毎日来られないお客さんもいます!」
リリカさんが、勢いよく僕の隣へ来た。
「ここも残しましょう! 新しい店を本店にして、こちらを町中の支店にするんです!」
「二つとも店にするんですか?」
「はい! 《極み》や大型の鳥型魔物は本店で扱います! こちらでは、今までどおり《定番》と《特製》を売ればいいんです!」
今の店には、毎日のように来てくれるお客さんがいる。
新しい店ができたからといって、その人たちに町外れまで歩いてもらう必要はない。
「マルタさん。この店を、これからも使わせてもらえませんか?」
「家賃を払ってくれるなら、あたしは構わないよ」
マルタさんは僕を指さした。
「ただし、もう店の裏へ岩冠コカトリスを転がすんじゃないよ!」
「新しい店の解体場へ運びます!」
「羽も散らかすんじゃないよ!」
「それも気をつけます!」
リリカさんが手を叩いた。
パンッ!
「では、決まりですね! 町外れの新しい店が本店! こちらが町中支店です!」
「店が二つになるんですね!」
コレットもうれしそうに笑った。
僕も、二つの店でお客さんがフライドチキンを食べる姿を想像した。
「ですが、テオさん!」
リリカさんが、僕とコレットを交互に指した。
「店は二つになったのに、働く人は増えていません!」




