まずは工房から
翌朝、ギルドマスターが店へやってきた。
「テオ。土地の持ち主と話がついた。岩冠コカトリスがいた場所を使えるぞ」
「本当ですか!」
新しい店と、《暁の牙》の第二拠点を建てる土地が、ようやく決まった。
「昼には大工も連れてくる。建てたい物を、現地で全部伝えてくれ」
「ならば、すぐ見に行くぞ」
オルドさんが立ち上がると、キアラさんも工具箱を持ち上げた。
ガチャガチャッ!
「新工房、どこに建てよっか!」
「まだ工房を建てるとは決まっておらん!」
「工房なしで、どこで冷凍倉庫を試作するの?」
「むう……」
昼前、僕たちは大工の親方と一緒に、町外れの土地へ向かった。《暁の牙》の五人も全員同行している。
ガラガラガラッ!
馬車を降りると、街道沿いに広い土地が続いていた。奥には崩れかけた納屋があり、その向こうには小川が流れている。
「ここに新しい店が建つんですね」
僕は、まだ何もない土地を見渡した。
街道側には、今より広い客席。持ち帰りのお客さんと、店内で食べるお客さんの列を分ける。
「厨房も広くしたいですね」
コレットが土地の中央を見た。
「大きな鍋を並べても、人が後ろを通れるくらい欲しいです。岩冠コカトリスを解体できる作業場も必要です」
「客席は今より増やしたいです」
リリカが街道側を指す。
「せっかく新しく建てるなら、お客さんを外で待たせない店にしましょう!」
グレンさんは土地の奥へ進んだ。
「《暁の牙》の第二拠点は、この辺りがいいな。全員が泊まれる部屋と装備置き場、それに作戦を話せる部屋もいる」
「訓練場は、その隣だな」
ドーガさんが大股で距離を確かめる。
さらに、鳥型魔物を育てる場所も必要だ。
「で、ここが工房!」
キアラさんが地面へ杭を打ち込んだ。
カンカンッ!
「急速凍結室の試作装置を置いて、大型魔物用の実験もできる広さ! 壁は厚くして、爆発しても店まで届かないようにしよ!」
「爆発させる前提で建てるでない!」
オルドさんは、その隣へ冷凍設備の場所を取った。
「解体場のすぐ近くに急速凍結室。その隣に、一か月分の肉を入れる冷凍倉庫じゃ」
「まだ《極み》を戻す魔道具もあるよ!」
「それは追加研究じゃ!」
大工の親方は、全員の話を聞きながら土地を歩いた。
ザザザッ!
地面へ線を引き終えると、僕たちへ向き直る。
「店、厨房、客席、解体場、冷凍倉庫、工房、第二拠点、訓練場、鳥を育てる場所。広さは足りますが、全部を一度には建てられません」
「えっ、こんなに広いのに!?」
キアラさんが驚くと、親方は崩れた納屋を指した。
「人手も材木も足りません。それに、冷凍倉庫の大きさが決まらなければ、厨房や解体場の位置も決められませんよ」
「そのとおりじゃ」
オルドさんも認めた。
「まず試作せねば、急速凍結室に必要な広さも分からん」
僕は早く新しい店を建てたい。
グレンさんたちの第二拠点も必要だ。
けれど、冷凍設備の大きさが決まらなければ、どちらの配置も決められない。
「では、最初に工房を建てましょう」
「店より先にですか?」
リリカへ、僕はうなずいた。
「工房で急速凍結室を試作して、冷凍倉庫の大きさを決めます。そのあとで、店と第二拠点を建てたいです」
「それなら、あとから建て直さずに済みますね!」
グレンさんも笑った。
「俺たちの拠点は急がない。まずは、テオが安心して遠征へ出られる店を作ろう」
「決まりじゃな」
オルドさんが親方へ向き直る。
「工房から頼むぞ」
「どのくらいの大きさにします?」
キアラさんが地面の上を走った。
ダダダダッ!
今の店ほどの大きな四角を描き、両手を広げる。
「とりあえず、これくらい!」
「工房だけで、今の店と同じ大きさですか!?」
「実物大の急速凍結室を作るなら、これでも小さいかも!」
オルドさんが四角の外側を杖でなぞる。
ザザザザッ!
「大型鳥型魔物を入れるなら、もう少し広げねばならんのう」
「さらに大きくするんですか!?」
親方が、広げられた線と僕を交互に見た。
「最初に建つ工房が、今の店より大きくなりますな」
「最高じゃん!」
「新しい店を建てる話でしたよね!?」




