土地探し
翌朝。
「ヴィオラさん、これをお願いします」
僕は、昨夜取り分けておいた金羽キジの極みを渡した。王都にいる魔道具職人さんへのお土産だ。
「凍らせればいいのね。先に言っておくけど、私の氷魔法は戦闘用よ」
「王都まで、速い馬車でも三日です。その間、もたせられますか?」
「毎晩凍らせ直せばね。腐らせないだけよ。味までは保証しないわ」
ヴィオラさんが包みへ手を向ける。
パキィン!
金羽キジの極みが、包みごと分厚い氷に閉じ込められた。
「凍らせすぎでは?」
「だから荒いって言ったでしょう」
グレンさんが氷の塊を持ち上げる。
「これで王宮を三度断った職人も落とせる!」
「途中で解凍して食べたら許さないわよ」
「食わん!」
「担いで連れて帰ってくるなよ」
ギルドマスターが念を押した。
「説得するだけだ!」
「お前の説得は信用できん」
グレンさんとヴィオラさんを見送ったあと、僕たちは新しい店を建てる土地を探すことになった。昨日の祭りで麦羽鶏を使い切ったため、今日は店も午前休みだ。
「厨房と客席。大きな保存庫に、解体する場所も必要です」
「荷車が入れる裏口もいるな」
レンジャーの《天眼》レオンさんが言った。
「《暁の牙》の第二拠点と訓練場も必要だ」
「清潔な水を確保できる場所がいいですね」
盾騎士の《不落》ドーガさんと、治癒術師の《白耀》セシルさんまで条件を加える。
「あの……鳥を育てる場所も欲しいです」
「鳥?」
ギルドマスターが僕を見た。
「金羽キジを育てたいんです。これから別の鳥型魔物を扱うことも増えると思うので、広い場所があれば……」
「……あの時の話か」
「はい」
以前、金羽キジを育てたいと相談した時、ギルドマスターは言った。
店を持て。金を作れ。人を増やせ。
「店を持てとは言ったが……」
ギルドマスターがレオンさんたちを見る。
「まさか《暁の牙》を丸ごと連れてくるとは思わなかったぞ」
町の中に、すべての条件を満たす土地はなかった。
僕たちは町の外れまで歩き、街道沿いの広い土地へ向かった。
「ここなら荷車も入れる」
レオンさんが周囲を見渡す。
「地面も固い。大きな建物でも問題ないだろう」
ドーガさんが足元を踏んだ。
「裏に小川があります。水も使えそうですね」
「すごくいい場所じゃないですか」
店も、第二拠点も、鳥を育てる場所も作れそうだ。
「どうして、こんな土地が空いてるんですか?」
「持ち主は、ここに住み着いた魔物を討伐できるなら、安く譲ると言っている」
ギルドマスターが荒れ地の奥を見た。
「魔物?」
クケエエエエエッ!
耳を刺すような鳴き声が響いた。
崩れかけた納屋の屋根に、巨大な鳥型魔物が立っている。牛ほどもある体に、岩のような鶏冠。その足元には、石になった狼が転がっていた。
「岩冠コカトリスだ」
レオンさんが弓を構える。
「目を見るな。石化するぞ」
ドーガさんが大盾を前へ出した。
岩冠コカトリスが翼を広げる。
その瞬間、分かった。
翼の付け根。首の右側にある、白い羽の下。
「……急所が見えます」
「見えるのか?」
レオンさんが僕を見た。
「はい。翼の付け根を射れば落とせます。とどめは、首の右側です」
前なら、こんなことは分からなかった。
雷鳴ホロホロ鳥を捌いたことで、僕の【フライドチキン】は成長していたんだ。
「分かった」
レオンさんは迷わず矢を放った。
矢が翼の付け根を貫き、岩冠コカトリスの巨体が納屋の屋根から落ちる。
「ドーガ!」
「任せろ!」
ドーガさんが踏み込み、頭ごと大盾で地面へ押さえつけた。
「テオ!」
「はい!」
僕は駆け寄り、白い羽の下へ刃を突き立てる。
岩冠コカトリスの体から力が抜けた。
「仕留めました」
レオンさんが傷口を確認する。
「正確だ。肉もほとんど傷ついていない」
「僕も、こんなことができるなんて知りませんでした」
「持ち主との話は俺がつける」
ギルドマスターが倒れた岩冠コカトリスを見る。
「これで、この土地が第一候補だ」
「ドーガさん。これ、店まで運べますか?」
「任せろ」
「お前、土地より先に食うことを考えてないか?」
「だって、鳥型魔物ですよ?」
ギルドマスターが頭を抱えた。




